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MOBA〜集団戦〜

下流ボットの守護樹に殴りかからんとする『スナイパーライフル』と『太陽の石盤』の2人。

奴らの行動はマップで逐一監視していた。

2人共まっすぐに俺たちの守護樹を目指していた。寄り道をしていない、俺たちの森に『松明』を設置していない。


あるとすればさっきの【ドラゴン】討伐で巣の周囲にばら撒かれている分だろう。

ならば、置かれる場所はある程度想像できる。

俺はそのコースを避け、彼らの近くの草むらに身を潜める。


金城を相手にし続けて、こちらもいい加減ストレスが溜まっていた。


目の前では『スナイパーライフル』が守護樹に弾丸を叩き込み、守護樹の足元では『太陽の石盤』が幹を殴りつけている。守護樹の周りには敵の【ミニオン】だらけ。


金城が中流ミッドにかかりきりのこのタイミングは絶妙だった。


「後輩!来れるか?」

「任せてくださいよ!」


後輩君のヒーロースキルが発動した


【テレポート】だ。飛んだ場所は敵陣に蜂巣が設置していた『松明』。敵の退路を断つ位置だった。


「おい!後ろから来るぞ!」

「任せろ!」


『石盤』が急いで後ろの敵に備える位置に移動した。

後輩がVCを開いた。


「そっちに放り込みますから」

「ああ、期待してるぞ」


光が森の中に降り注ぎ、後輩が敵の森の中から現れた。

小型の『フラスコ』を爆弾のように投げながら、後輩が突っ込んでくる。


「オラァ!」


だが、その攻撃は『太陽の石盤』で弾かれてしまう。その間にも『スナイパーライフル』の攻撃が後輩に突き刺さる。ダメージを一方的に受けている後輩だが、その表情には余裕があった。


『石盤』の防御はいつまでも続かない。

太陽の石盤にヒビが入る。それが、石盤の防御限界だ。


【ポイズンフォッグLv.5】がフィールドに敷き詰められた。


最大レベルまで達した【ポイズンフォッグ】はみるみるうちに敵の体力を削っていく。

頃合いだ。俺は草むらから飛び出した。狙いは脆い『スナイパーライフル』


「おっと・・・やっぱ来たか!」


『スナイパーライフル』はそれを待ち構えていたとばかりに、逃げを切った。奴は俺の通り道に【トラップ】を仕掛け、【スライド】を発動した。

【ポイズンフォッグ】の効果範囲から抜け、体力の少ない後輩に肉薄するためだ。


「甘いね・・・」


後輩はそう呟いた。既に【スライド】の出演場所に霧が発生していた。


「はっ?」


【ケミカルミストLv.3】の爆発が『スナイパーライフル』を担いだ身体を吹き飛ばした。

再び【ポイズンミスト】の範囲に叩き込まれる。ヒーロースキルを完全に無駄撃ちさせた。

そこは既に俺の射程距離だ。


「させねぇよ!」


俺の前に『太陽の石盤』持ちが割り込む。俺の目の前に構えられた『太陽の石盤』が光り輝いた。Ultの予備動作だ。ここで『太陽の石盤』のUltを受けるわけにはいかない。


俺はそいつら越しに後輩を睨みつける。

既に後輩は『そんな睨まないでくださいよ』という表情が迎えてくれた。


「くらえぇ!」


石盤から放たれる太陽光線。奴のUlt【コロナ】をまともに受ければその光で手足が焼けて動けなくなる。

だが、俺はその光の中から無傷で飛び出した。


「なにっ!」


飛び出した俺の衣装は変化していた。白いフード付きの外套を纏い、俺は『太陽の石盤』の脇をすり抜けた。『フラスコ』のスキル【ホワイトケープLv.1】が俺への行動阻害を無効化してくれる。

目指す先は『スナイパーライフル』の無防備な背中だ。


散々、ストレスが溜まってるんだ。いい加減発散させてくれ。


「カァエエエエエエエエヤアアアア」


処刑エクセキューションLv.2】で体力を削る。反転して放たれた弾丸を【受け流し(パリィ)Lv.1】で打ち返す。俺はそのまま二の太刀を叩き込む。【ポイズンミスト】のダメージも嵩んでいく。


だが、まだ足りない。


俺は軽く飛び上がり、地面にデュエルソードを叩きつけた。


「コロッセオォォォォォ!」


『スナイパーライフル』を相手に【闘技場コロッセオ】が発動する。


逃げる背中がローマの闘技場を背景に立ち止まった。


「クビィィイイイイ!キルよこせぇぇぇぇえええええ」


その首筋に向けて俺はデュエルソードを叩きつけた。


【味方チームが敵ヒーローを倒しました】


俺はすぐさま反転。崩れ去っていく壁の向こうに佇む『太陽の石盤』を振り返る。


「お前もクビ置いてけぇえええええええ!」


忘れるなかれ。ここは自陣守護樹のお膝元なのだ。


『太陽の石盤』は守護樹と闘技場に挟まれて身動きが取れていなかった。

守護樹の足元にいた【ミニオン】達は既に【ポイズンミスト】で毒殺されれいる。

『太陽の石盤』を守る盾は存在しない。


「オラァラァァアアアァァアアアアア!」


逃げようとする敵を【突進チャージLv.5】で守護樹の幹へと叩きつけた。

後輩の【ポイズンミスト】は今もこの場に満ちている。俺は敵に刃を突き立て続けた。


【味方チームが敵ヒーローを倒しました】


「ふぅぅ・・・・・」


俺は敵の居なくなった守護樹の下でデュエルソードを地面突き立てた。

心の底からため息が出ていた。金城というチート持ちのプロ候補と相対していた時の緊張感が吹き出ていた。


「先輩!こっちは押し込んでおきますからさっさとスタート返って体力戻してください!」

「お前・・・・可愛くねぇな」

「こんな状況で一瞬でも気を抜ける先輩の方がおかしいと思いますよ。千代先輩がかかってるんですから!」

「わかってるよ。わかってるさ」


これはゲームであり、ゲームではない。

少し苛立った感情をなんとか飲み込む。こんな時に軽口で仲間割れなどバカらしすぎる。


俺はそのまま自陣の森へと入り込んだ。ここに来る途中で目をつけていたゴブリンとスライスを切り捨て、経験値と資金をゲット。


そして、俺はスタート地点へとワープした。


アイテムを買い揃える。普段に比べてアイテムの揃いが悪い。

このままでは最後の勝負に間に合うか、ギリギリと言ったところだ。

少なくとも、もう何回か敵の首を落とす必要がありそうだった。


狙うなら・・・


【味方チームの守護樹が燃え尽きました】


金城が中流ミッドの2本目を焼き切った。

金城1人だけが突出している。


「搔き切るのはちょいと難しいかな・・・・」


上流トップ)は猿と蜂巣が守りに入って守護樹を一本も焼かせない構えだ。下流ボットは後輩がしっかり前線を押し込んで前に出てくれている。


「・・・さぁて・・・」


俺はスタート地点を出て城壁へと向かう。

剥き出しになった城壁に【ミニオン】が集まってきていた。金城の姿は見えない。

守護樹を焼いて手に入れた金で買い物に戻ったのだろうか。


俺は【ミニオン】を切り捨てて様子を見る。

決して前に出ず、押し返さない。【ミニオン】を倒しては近くの森でモンスターを狩る。

城壁にまた【ミニオン】が集まりだしたらそれを狙う。


「先輩方、下流ボットは押し込みました。準備はいいですよ」


後輩がそう言いながらスタート地点に戻って来る。

俺はVCをオンにした。


中流ミッド集合。全員で押し返す」


俺の呼びかけに3人は素早く反応した。

俺の後ろに仲間達が集まったくる。


さて・・・ここからだ・・・


俺達は迫り来る【ミニオン】を4人がかりで素早く片付けて前線を押し返す。

城壁周辺まで迫ってきていた【ミニオン】を倒し、川まで進撃を開始する。

蜂巣は途中で離れ、森の中に『松明』を配置して横からの襲撃に備えていた。


川を渡り、敵の森に入り込む。


そんな俺たちの前に敵が現れる。金城だった。


「Ultまであと40秒」


俺はチームVCでそう言った。


金城は守護樹の下で守りに入るつもりらしい。

敵の仲間はまだいない。


「・・・Ultを使わせる前に叩き潰すしかない」

「けどまぁ、そんな簡単にはいかんわな」


敵のチームの『スナイパーライフル』の雷を帯びた弾丸がはるか後方から飛んできた。

さすがにこの距離なら見てから回避が可能だった。


蜂巣が森から戻ってくる。敵の『太陽の石盤』が合流した。

お互い距離を取りながら牽制する。『スナイパーライフル』の弾が飛び、猿が『ミニガン』をばら撒く。

後輩君が【ケミカルフォッグ】で分断しようとするが回避される。金城の【死霊の腕】を蜂巣のフォローを受けた俺が弾き返した。


「あと、20秒!」


このタイミングで【死への誘い】で即死させられたら最悪だ。後輩のUlt【ミストキャッスル】はまだクールタイムが終わっていない。俺のUlt【闘技場】もまだ使えない。

なんとかして今すぐ白兵戦へと持ち込みたい。だが、強引に仕掛けても火力を集中されるだけだ。

敵は後方に引き、完全に金城のUltまで粘る気だ。


「おい、金城!テメェ俺が気に食わねぇんじゃねぇのか!」


挑発の声は届いているのだろうが、『太陽の石盤』持ちが必死に金城を抑え込んでいた。盾のように石盤を構え、決して前に出させない位置にいる。


あの『石盤』が敵のゲームメイクをしている。


「あと10秒!」


仲間達の顔には焦りが見られるが、決してプレーが雑になることはない。

こういう時に冷静さを失ったら負けなのだ。


「・・・クールタイム終了だ」


金城が守護樹を超え、更に後方へと姿を消した。


だが、このままでは敵には誰にもアシストが入らない。また金城だけが成長する展開は向こうとしても避けたいはずだ。必ずどこかで仕掛けてくる。


「猿!後ろだ!」


後方の森の『松明』に『鉄鎧』と『蛇腹剣』が映った。

それと同時に前にいた『石盤』も前に出てくる。


前後から挟まれ、火力のある『スナイパーライフル』は守護樹下で手が出せない。しかもあと数秒で一撃死の魔法が飛んでくる。

絶対絶命って言葉がよく似合う状況だった。


俺は現実世界で唇を舐めた。


「さて、ここからだ・・・」


だが、俺たちはむしろ笑顔を浮かべていた。


俺たちのチームメイトはこの程度の逆境で凹んだりしない。

『俺の知っている知寿』はこんな状況でも易々と笑ってみせる。


「来るぞ!」


『鉄鎧』が凄まじい勢いで俺たちの中心に突進してくる。

俺達は一気に散開した。だが、逃げ切れなかった蜂巣が空中に打ち上げられる。


『鉄鎧』が接触するのに合わせて『蛇腹剣』も剣を伸ばしても肉薄してくる。


「蜂巣!」

「わかってる!」


【チェーンデスマッチLv.3】が放たれた。蜂巣の手から放たれた鎖が敵の腕に巻きついた。


「くそっ!」


『蛇腹剣』を振ろうとしていた腕が止まる。

そこに俺達の攻撃が殺到した。


俺が剣を振り、猿が銃弾を放ち、後輩の毒が回る。

何も言わずとも一瞬でフォーカスが合う感覚。長年チームを組んできた経験がここで生きていた。

俺の【処刑エクセキューションLv.3】を帯びた紅い剣が突き刺さる。


「あと3秒!」


『蛇腹剣』を倒したアナウンスをかき消すように俺は叫んだ。

俺たちの頭上に死をもたらす光が降り注がんとしていた。


俺達の周囲にいるのは『鉄鎧』と『石盤』だ。

体力が高いタンクキャラを相手にしている時間はない。


「イエェエエエエエヤアアアアアア!」


俺はデュエルソードを肩に担いで敵守護樹へと突進した。どうせ2秒で死ぬ。もはや体力などあって無いようなものだ。

そして、その考えは皆同じだった。


後輩の【ケミカルフォッグ】が守護樹の下から『スナイパーライフル』を手前に弾き出した。

その足元に猿のスキル【ブービートラップLv.1】が仕掛けられた。

トラバサミが足に噛みつく。『ミニガン』の火力が突き刺さる。


「エィリャアアアアアアア!」


あと1秒。


放たれた銃弾を下から切り上げた。弾丸を打ち返した勢いで振り上げたデュエルソードを全力で振り下ろした。


【味方チームが敵ヒーローを倒しました】

【味方ヒーローが倒されました】


「はぁぁぁ・・・・・」


石壁の中で束の間の休息を味合う。デュエルソードを杖代わりにしてへたり込んだ。


俺はスタート地点に戻されたが、敵を2人葬り去ることができた。

戦っていた残りの連中は【守護天使の羽】で復活している。だが、残り体力はせいぜい3割。あいつらは金城が前線に出てくるのに合わせて後退していく。金城達も無理はしてこない。俺が前線にいれば引っ張り出せたかもしれないが、それを言ってもしょうがない。


「・・・・・・・・知寿」


口からあいつの名前が溢れた。


「知寿・・・」


電脳世界でも目を閉じる。世界が真の暗闇に包まれる。

脳裏に浮かんだのはあいつのドヤ顔だった。


「・・・このやろ・・・」


こういう時は笑顔でも見せろってんだ。


心の中でそう言うと知寿は勿体ぶったような顔をした。頭の中のあいつはコロコロと表情を変えていつも俺を呆れさせる。だから飽きない。


だから、許せない。


あいつの自由を奪ったあいつが許せない。


俺は顔をあげた。


「・・・・・・・・・・・」


試合開始から20分を過ぎている。試合もそろそろ終盤だ。

俺は現実世界で自分の頰を叩き、電脳世界の膝に力を込めた。


「そろそろ、狙うぞ・・・」


俺の指示にVCで返事があった。

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