1-5:理由
私は絶句したのち、一目散に店から飛び出した。後ろを振り向かずに…
ひどい…
ひどいひどい…
ひどいひどいひどい!!!
美佳はずっと友達だって…そう思ってたのに…!
私は、走った。走って、走って、美佳の家まで走った。
ピンポーン…ピンポーン…
「は〜い。」 ガチャガチャ
「!香菜子じゃん。どうしたの?」
「ハァハァハァ…。か…えして…。」
「え?何?」
「返してよ!教科書も!消しゴムも!」
「な…何言ってんの?香菜子自分で無くしたんでしょ?人のせいにしないでよね。」
「嘘つき!もう…全部知ってるんだから!」
「え…。何それ。トイレ行く振りしてずっと見てたわけ?感じわる〜…。」
「それは美佳じゃん!他の人と悪口言って…最悪だよ!」
「…香菜子だよ…。最悪なのは!」
「はぁ?何言ってんの?」
「香菜子がいつもあたしといたのに、このごろどんどん離れていっちゃうからいけないんだ!!!」
「何言ってんの?あたしが言いたいのはね…」
「だから、隠したの…。寂しかった…。それに気づいて欲しかった…。」
「美佳…。だからって…。」
「悪いって思ってた…けど…。美佳に気持ち知ってほしかったんだもん…。」
そう言うと、香菜子は泣き出した。
「美佳…。ねぇ…。なんかごめんね。美佳がそんな気持ちだなんて知らなかったから…。言ってくれればよかったのに…。」
「…言えなっ、かっ…た んだもん…。」「うん…とりあえず、教科書とか持ってきてよ…。」
「…わかった…。」
香菜子は家に入って行った。
香菜子はどんな気持ちで最近私の事を見ていたんだろうか…?
寂しいって気持ちを押し込めて…私を見ていたんだろうか…?
気づかれないように私の前では笑っていたんだろうか…?
気づいて欲しくて隠して、隠して見つけてほしかったのね…。
ガチャ…
「これ…。本当にごめん…。」
「うん…。私…私も、香菜子に対して少しこのごろ冷たかった…。だから、ごめんね。」
「ううん…。」
そして、二人は少し笑った。