お呼び出し
おお、神よ、なぜ彼女は私の眠りを妨げるのですか?
俺は現在進行形で必死に布団に身を包んで・・・もがいている。
「起きてください!起きてください!朝ですよ!ギルドマスターが今すぐに呼んで来いって煩いですから早く起きてください!」
朝から美人さんに起こされるのは男の夢と言うが、実際にこんな状況になってみて思うことがある。もうこんなシュツエーションは御免だ。さっきから「起きてください!起きてください」と受付の美人さんが、ひたすら俺の背中を叩いてくる。いや、殴ってくる。いつの間にか手がグーになってたのだ。地味に痛い。
「起きろー!起きろー!起きなさい!」
こっちは朝早くから起こされて眠くって眠くって仕方ないと言うのに・・・はぁ、これがギルドマスターからの呼び出しとかでなく、受付の美人さんが朝から俺を訪ねてきたとかいう理由だったならば眠気を我慢して喜んで起きていたのに・・・
「ギルドマスターが呼んでいるんですって!早く来てもらわないと困るんです!」
ギルドマスターからの呼び出しとかメンドクセーやる気でねーこっちは眠いんだよ!しかし、いい加減同じとこ殴られていると、いくらチートといっても腰が痛い、なぜか殴る力が信じられないくらい強い。腰痛とか絶対に嫌だ。こっ腰が、うう、仕方ない起きるか!
「わかった!わかりました!起きるよ!だから殴るのは止めてくれ!」
「私は別に殴っていませんし、殴っていたとしても初めから素直に起きていればよかったんです。それに私は、わざわざ、あなたの泊まっている部屋を探し出して、ちょっと部屋の鍵を拝借しただけですし」
「いや!殴ってたし!それに不法侵入じゃねえか!何で素直に起きなければならないんだ!こっちは被害者だ!」
「なっ!こっちこそ本当の被害者です!あなたがハイ・オークを倒してしまったのが悪いんです!Gランクで、しかもたった一日であの依頼をこなしてしまったあなたが悪いんです!」
別にいいじゃないか!依頼は早く終わらせる方がいいだろ!何が悪いんだ!
「そもそも!何で受付のあなたがここに来ているんだ!」
「それがですね、あなたの事を良く覚えている人が不思議な事に私以外にいなかったんですよ。みんな、なんとなくは覚えているんですけど、どうしてでしょうか?」
それは俺の影が薄いからだ・・・それ以上言わないでくれ、ちょっと傷ついているんだ・・・
「そういえば、あなたの名前は何て言うんですか?」
「俺の名前は綾川葵だ。いや、アオイ・アヤカワになるのかな?まあ、気軽にアオイと呼んでくれ。それで、あんたの名前は?」
そういえば、俺も名乗らなかったし、彼女の名前もまだ聞いてなかったな
「アオイさんですか、私の名前はアリア・フィエルドです。アリアと呼んでください」
「アリアか、それじゃあアリア、さっさとギルドマスターのところに行きますか」
「はい!よろしくお願いします!アオイさん!」
俺はアリアと一緒にギルドに行った。途中から周りからの視線が痛かった・・・なぜこういう時だけスキルの効果があまり効かないんだ!
「アオイさん、こっちです。付いて来て下さい」
俺はアリアの後ろに付いて行き、一番奥の部屋に入る。
「ギルドマスター!例の人を連れてきましたよー!」
部屋の中は広かったが、ソファーと棚と机しかなく、寂しい部屋だった。ギルドマスターは優しそうな顔をしながら何とも言えない貫禄を出していたが、身長が低くハゲていたので、その、違和感ありまくりだった。
「おお!あんたが例のアリアが騒いでおったGランクの者か!ん~聞いてはおったが・・・普通じゃな」
普通で悪うございました!
「わしの名前はバナード・ロダンという。ここのギルドマスターをやっている。お主の名前は?」
「俺の名前はアオイ・アヤカワです。それで俺に何の用があるんですか?」
「お主が本当にハイ・オークを倒したんじゃな」
「ええ、俺が依頼を受けて倒しました」
「すまんがの、ちょっと、ステータスを確認させてくれんかの?」
ん~やっぱりか、どうするべきだろう?素直に見せておいた方がいいか、・・・たぶん、この爺さんなら大丈夫だろう。信用できそうだし。俺はポケットの中からギルドカードを取り出し爺さんに渡す。
「ほっほ~たいしたステータスじゃ」
爺さんはそう言って俺にギルドカードを返してくる。そんなに問題になるほど高い能力値じゃなかったのかな、そんなことないと思うんだけどな~
「それでの、お前さんに折り入って、お願いがあるんじゃが引き受けてはくれんかの?ちなみに断ればギルドマスターの権限でギルドカード取り上げるからの」
お願いじゃねーー!!!横暴だ!責任者出せ!・・・あ、この爺さんが責任者だ。めんどくせー何を押し付けられるのやら
「実は、サイモンという冒険者をコテンパンにして欲しいんじゃ。かなりの実力を持っているAランクの冒険者なのじゃが、自分の力に酔っていて困っておるんじゃ。残念な事に、そいつをどうにかしようにも、そいつがいなくなるとギルドの損失がかなり出てしまうので何も出来んままでの。どうか、そいつの根性を叩きなおして欲しいんじゃ。・・・それに女癖が悪くてアリアにまで手を出そうとしておるんじゃ。本当に困った男でのぉ」
うっわ、メンドクセーの来たーーーーー!!!!
いるよな~自分の力に酔っている奴。ああ~めんど~だってさぁ~そういう奴に限って、なかなか諦めが悪いんだよな~
「やり方は簡単じゃ、わしがアリアが景品ということで決闘の場を作るから、そこでサイモンを叩きのめしてくれ。それなら相手も乗ってくるじゃろう」
「はぁ~」
アリアさんを景品にね~
「ちょっと!ギルドマスター!何言ってるんですか!私を巻き込まないで下さい!それに、さすがに無理ですよ!Aランクの冒険者が相手じゃあ勝てっこないですよ!何でアオイさんに頼むんですか!」
「大丈夫じゃ、心配はいらん。それに、そこまで焦る必要も無いじゃろう。」
「全然大丈夫なんかじゃないですよ!なんで私がサイモンとアオイさんが決闘するときの景品になってるんですか!」
「仕方ないじゃろう。サイモンをおびき寄せるために必要な事じゃ。何を言おうともギルドマスターの命令じゃ」
「横暴です!人権は無視ですか!人の気持ちを何だと思ってるんですか!」
「人の気持ちのぉ~そういえば散々あの冒険者が~あの冒険者が~と、騒いでおったアリアはアオイのことが気になっておるのか?ん~?」
「なっ!///違います!そんなんじゃありません!確かに気にはなっていますけど、まだそういうのではありません!」
「ん?まだ、じゃって?若いの~若いの~」
「もうっ!だから!・・・もういいです!失礼しました!!!」
・・・・・あれ~何かアリアさんの反応が・・・なんで?どうなってるの?ついていけないんですけど、ちょっと、爺さん何でドア閉めるの?
「さて、アリアはもうこの部屋にはいないからの、これで改めて話が出来るわい」
・・・・・・・え、まだ何かあるんですか・・・さっきと雰囲気が違うな気が~あ~もうさっさと帰りたいんですけどー
「おぬしは一体何者じゃ?なぜあれほどのステータスを持っているのじゃ?」
爺さんは真剣な目つきで俺に聞いてくる。
「なぜ・・・と言われましても・・・」
神様の事とか、チート能力とか説明できないでしょう。それに絶対に信じてくれなさそうだし、俺だったら信じないと思うし。
「ふむ、話してはくれんか・・・そのステータスは危険極まりないものじゃ。例を上げるのならば一流の冒険者達の平均ステータスがランクA相当でギルド内トップレベルの平均ステータスはS~SSランク程度じゃ。皆が認めるうちの国の王国騎士団長は確か魔法耐性がEXで他がSランク以上だったかの。もうこれ以上強い者は世界で10人いるかどうかのレベルになってくるんじゃ。どうじゃ?お主のステータスの異常さがわかったかの?」
チートだとは分かっていたが、そこまでチートだったのか・・・
「だからのお主にはきちんとその力のあり方を分かっておいて欲しいんじゃ。お主がその力を悪用してしまったら一国が滅びてしまうかもしれんほどじゃからの」
爺さんは本当に俺のことを心配そうな目をして言ってきた。
「ん~一国が滅びるとか想像も出来ないし、そんな事はしないよ。俺は絶対にこの力をそんな事に使ったりなんかしない。」
この俺がそんなことに使うとでも?
「そうか、それならいいんじゃが。では明日の昼ごろにここにまた来てくれ、その時には決闘の準備が整っているはずじゃからの」
明日の昼ごろか・・・起きてるかな?
「わかった。明日の昼ごろだな」
俺はそう言って爺さんの横を通り抜け、鍵が掛かっているドアを開けてギルドを出た。
「さて、今日は何を食べようかな?」
俺の頭の中は食べ物の事でいっぱいになった。
Side 爺さん
むむむ・・・こやつのステータスはおかしい!何なんじゃ一番低い幸運の値でA++じゃと!世の中をなめておるのか!ステータスは魔術師傾向の癖に筋力がEXとか次元が違いすぎる!羨ましい!わしなんて現役時代で一番高かった筋力の値はSSじゃったというのに・・・羨ましい!羨ましすぎる!どうやってこんなステータスを手に入れたのやら・・・平凡な顔をしておるのに・・・ああ!羨ましい!あのステータスがもしも現役時代のワシにあったのならモテモテのウッハウッハじゃったのに!
ゴホンッ!・・・あ~あまりにも妬まし過ぎて心の叫び声が~まあ、わしが一番心配しておる事は利用されそうで怖い事じゃな。見た目は普通としか言いようのない奴じゃったからのぉ。そういえば、アリアはアオイのステータスの事は知っておらんかったけの?黙っていたほうがいいじゃろう。
明日の決闘はサイモンがコテンパンにやられることが決まったしのぅ。まずアオイが負けるはずがないからの。ああ!あの傲慢なサイモンの唖然とした顔が早く見たいのぅ。
―――――――なんせ、表向きはには何処からどう見ても何処にでも居る普通の冒険者に負けるのじゃから




