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必要な優しさだけ

作者: P4rn0s
掲載日:2026/01/13

夜中に目が覚めないように、寝る前に御手洗へ行く。

大した理由じゃない。

ただ、起きてしまうと、そのまま眠れなくなるのを知っているから。


布団に戻る前、机の上のペットボトルを手に取る。

全部は飲まない。

少しだけ残す。

朝の自分が、喉の乾きに慌てなくてすむように。

未来の自分に向けた、最低限の配慮。


部屋を見渡す。

散らかったままの床、読みかけの本、充電中のスマホ。

全部、今すぐどうにかしなくてもいいものばかりだ。

今日はもう、頑張らない日。


眠るために、立ち上がって明かりを消しに行く。

スイッチに伸ばした指が、一瞬だけ迷う。

暗くなったら、考え事が始まるのを分かっているから。


それでも消す。

夜を受け入れるしかない。


布団に潜り込みながら思う。

誰かを救えるような優しさは持っていない。

世界を変えるほどの言葉も、慰める才能もない。

あるのは、夜中に起きなくてすむようにする工夫と、

朝の自分が少し楽になるための水だけだ。


でも、たぶん、それでいい。

少なくとも、自分を壊さないための優しさではある。


何もできなかった日でも、

何も成し遂げられなかった夜でも、

こうして自分を次の時間帯へ送り出すことはできる。


これくらいの優しさしか持ち合わせていない。

けれど、これくらいの優しさがなければ、

今日を終えることすらできなかった気がする。


明かりの消えた部屋で、

残された水と、静かな呼吸だけが未来に残る。

それでいい。

今日はそれで、十分だ。

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