お守します
それは、なげた。
ぶぉん、ぶぉん!
たまねぎは、はやく、つおぃ。
カレーをひだりがわするよ。あまくちの。
おてつだい、ごはんおちた。
「いただきます!」
ママのごはん、おいしい。
きょうは、とてもすてきだった。
おかわり!
◇
……息子の日記には、とても癒されている。
「ぐぅー」
息子は夢の中。日記帳をめぐりながら今日のことを思い返した。
……そうね、お手伝いに玉ねぎを放り込んでかき混ぜたり、カレーをよそってくれたりした。左側にルーを入れる癖があるのが分かって楽しかったな。
こういう日記を見られるから、洗い物で出来たアカギレの痛みに耐えられる。息子がお代わりした事も、今日を素敵だと書いていることも……。
シングルマザーで辛く泣きたいことも有るけれど、この文字を見ただけで、すべてが報われる。最初は離乳食の作り方も知らなかった頼りない私でも、息子は毎日を楽しそうに過ごしてくれているのだ。その事実に、涙までこみ上げてくる。
「明日もがんばろ……ん?」
続きがあるみたい。
日記帳のページをめくると、落書きとともに何らかの文字列があった。
「どれどれ……何を書いてるのじゃ〜♪」
半分ふざけて期待する気持ちを抑えた。どうせ息子の記した文章は癒しに決まってる。受け取って心臓が破裂しないようにしなければいけないから。
◇
カレーはさみしい。
なかまをつくるようにした。
スプンー、らきょう、ぼく。
カレーはつよくなった。
ぼくもつよくなった。
ママはふたりになった。
カレーはさみしくなりませんでしたとさ。
めでたしめでたし!
◇
……カレーはさみしい。
なんて素敵な感性なの! 息子は将来詩人になるかもしれないわ!!!
スプーンとらっきょう、持ちながら目がキラキラしていたのはこういうことを考えていたからなのね!
私ふたりに増えた!?
どういうことがわからないけれど、カレーハッピーエンドで良かったわ!
めでたしめでたし!
「────ママ?」
おっと、私の荒い息で息子が起きてしまったようね。まだ寝ぼけているみたい。目が半開き。猫のようなポーズでこちらを眺めている。
(可愛すぎる〜)
「またカレー食べようね!」
「……うん!」
言葉を聴いているかいないのか分からないけど、相槌を打って目をこする息子。ペンギンのような口元をツンと突くと、反射的に小さなクシャミをした。
(うあー可愛すぎかぁああああ!)
思わず抱きしめる。
息子は「へへ」と笑う。
……決意した。この子のためなら、私。何でもできるわ。この子の、笑顔とぬくもりをまもる。命を懸けて。将来どんな子になっても、受け入れる。
「ゆうと、すくすく育ってね」
息子の笑顔を、ぬくもりを、穏やかな時間を。必ずまもる。
了
最後まで読んでくれてありがとうございます!
(らっきょうは3歳頃から食べさせるといいらしいです…!)←後で知った^^;




