レベル500 ──新任務、男の娘混入の無理ゲー開始
ギルド内の騒動がようやく落ち着き、俺たちは次の任務を確認することになった。
「ふむふむ、次の依頼はこれね」
リリスが掲示板から一枚抜き取り、読み上げる。
「《王都地下遺跡・魔物掃討任務》。危険度はB級、でも、あなたのせいでどうせ難易度爆上がりよ」
「ひでぇ前提だけど否定できねぇ……」
その横で、男の娘シオンが嬉しそうに手を振る。
「うふふ、楽しみ〜。あなたの運−∞、どれくらい面白いのか期待してるわ」
「お前、好奇心で命張るなよ……」
ミルとエリスも不安げな顔で頷く。
「地下遺跡、暗いし怖いけど……頑張るよ!」
「どうせ事故で魔物が倒れる流れね……」
◇ ◇ ◇
地下遺跡内部。
そこは、石造りの古代通路、苔と湿気の匂いが漂う、いかにも冒険者が嫌がる場所。
「暗いし狭いし、もうヤダこれ……」
「諦めなさい、まだマシな方よ」
そんな会話の最中、運−∞がさっそく発動。
足元の石板が崩れ、俺はシオンとクラリス、ミル、エリスを巻き込んで転倒。
四重ラッキースケベ同時発動。
「きゃっ!?///」
「や、やだぁ……///」
「これが運命……」
「んんっ、ちょっとカズトさん、またですか!?///」
そして、男の娘シオンはというと――
「ふふ、ラッキースケベ体質発動おめでとう。どう、私の柔らかさは?」
「お前はちょっと複雑な気持ちになるからやめろ!!!」
しかし、騒いでる隙に、壁が崩れ、奥から魔物の群れが現れる。
「またかよ!!!」
魔物は巨大なゴーレム系、通常なら詰む。
だが――事故連鎖がまた発動。
崩れた瓦礫がゴーレムの関節に刺さり、バランス崩壊。
ミルの尾っぽが暴発し、偶然エリスの弓が発射。
さらに、シオンの仕掛けた罠が暴走し、全ての敵を巻き込む。
ズガガガガァァン!!!
大爆発。
「え、もう終わった?」
「事故だけで敵全滅……」
「あなた、ほんとバケモノね」
こうして、またもや俺の運−∞と地獄のハーレム、男の娘混入の新任務は、無駄に事故成功した。
任務を終え、ようやく王都の広場へと戻ってきた俺たち。
だが、平穏なんて俺の人生には存在しない。
「うわ、また人だかり……」
中央広場には群衆が集まり、興奮した声が響く。
「見ろよ、あれが異世界の勇者だ!」
「王国の希望らしいぞ、超イケメンだし、強いし!」
「また異世界人か……」
リリスが呆れ顔で呟く。
そして、その視線の先――
金髪、爽やかな笑顔、完璧な美形。
王国の騎士団の鎧を身にまとい、堂々と立つ青年がいた。
「マジかよ、あれ、勇者枠?」
「うふふ、いいじゃない、ライバル登場って感じ」
男の娘シオンが楽しそうに言う。
そして、当然のように、その勇者が俺を見つけて歩み寄ってくる。
「君が、カミヤ・カズトだね?」
「うわ、名前バレてるのかよ」
「もちろん、君の噂は王都中に広がってる。“不幸連鎖の歩く地雷”として」
「ひでぇ扱い!!!」
青年は微笑む。
「俺はレオン・グランハルト。王国に召喚された正規の勇者さ」
「正規って、じゃあ俺は……」
「……神の操作ミス産物ね」
リリスの冷酷な補足が刺さる。
周囲がざわつく中、レオンは一歩前へ。
「君、事故でドラゴン倒したらしいけど、実力、どれほどか試させてもらうよ」
「また戦闘フラグかよ!!!」
その瞬間、運−∞が発動。
後ろの屋台が倒れ、バケツの水が俺にぶちまけられる。
服が透け、ミルとエリスが赤面、クラリスは当然のように近づき、シオンは微笑む。
「事故のフルコースね」
レオンはそれを見て苦笑い。
「……なるほど、確かに厄介な存在だ」
「俺もそう思うわ!!!」
そして、周囲が見守る中、俺と勇者レオンの、バチバチの雰囲気が広がっていく。
「次会う時は、実力を見せてもらう」
そう言い残し、レオンは去っていった。
勇者レオンとバチバチの雰囲気で別れた数時間後。
俺たちは王都ギルド前の広場で、ひと休みしていた。
「やっと静かに……」
「いや、あなたがいる限り平和は無理よ」
リリスの冷たいツッコミを受けながら、俺は空を見上げた。
その瞬間――空が、裂けた。
「……え?」
赤黒い光が溢れ出し、空間に亀裂が走る。
そこから現れたのは、漆黒の鎧を纏い、禍々しい気配を放つ人物。
「……嘘でしょ、魔王軍の幹部……」
リリスの顔色が変わる。
その男は、狂ったような笑みを浮かべて言った。
「ククク……王都の愚民どもよ、滅びの宴を楽しめ」
「いや、いきなり物騒すぎだろ!!!」
ミルとエリスが怯え、クラリスは剣を構え、シオンはニヤリと笑う。
「面白くなってきたわ」
だが、運−∞がここでも全力発動。
俺が立ち上がろうとした瞬間、足元の石につまずき――
「うわぁぁぁ!!!」
勢いよく前に転倒、目の前にいたリリス、ミル、エリス、クラリス、シオン全員を巻き込み、五重ラッキースケベ事故発生。
「きゃっ!?///」
「やだ、また……///」
「運命ってこういうことよね……」
「いや、状況考えろ俺!!!」
騒ぐ俺たちの上空から、再び声が響く。
「ふむ、面白い連中が揃ってるな。せいぜい楽しませてくれ」
魔王幹部、名は《バルド・ザルディア》。
破壊と混沌を司る魔族のエリートらしい。
「戦うしかねぇのか……」
俺のステータスを見る。
【スキル】
・《時間停止》 必要魔力:100,000
・《完全復活》 必要魔力:500,000
・《絶対防御結界》 必要魔力:50,000
・《世界再構築》 必要魔力:∞
現在魔力:25
「スキル、全滅!!!」
「ですよねー!!!」
「ククク……虫けらどもが、俺に勝てるとでも?」
魔王幹部は、雷と闇をまといながらゆっくりと浮かび上がる。
周囲の冒険者たちは一斉に後退、広場は緊張に包まれた。
「無理だろこれ……」
俺は速攻で現実逃避したくなったが、逃げられるはずもない。
「安心して、あなたは事故で勝てる」
「言い方ぁ!!!」
リリスが杖を構え、ミルとエリスは武器を手に、クラリスは氷の剣、シオンは爆弾片手にニヤニヤ。
「んじゃ、派手にいくよー」
戦闘、開始。
バルドの雷撃が炸裂、地面が割れる。
「うおおおおお!!!」
咄嗟に避けようとした瞬間、運−∞が発動。
足元の瓦礫に引っかかり、俺は転倒、ミルとエリス、クラリス、シオンを巻き込む。
五重ラッキースケベ事故発動。
「きゃっ!?///」
「どこ触ってんのよカズトさんっ!!」
「またかよおおお!!!」
だが、その転倒が偶然、崩れた瓦礫を跳ね上げ、バルドの頭部にクリーンヒット。
「ぐっ……虫けらが……!」
バルドがバランスを崩し、その隙を狙ってリリスの雷撃、ミルの突撃、エリスの矢、クラリスの氷魔法が次々と炸裂。
「いや、普通に連携取れてる!?」
「事故連鎖だけどね」
さらに、シオンの爆弾が暴発、広場全体を吹き飛ばす。
ドゴォォォォォン!!!
煙の中、バルドはボロボロになりながら睨みつけてくる。
「まだ、終わらんぞ……」
「こっちもまだ終わってねぇ!!!」
またもや運−∞が暴走。
俺の転倒で地面が崩れ、偶然にもバルドの足元の魔法陣を直撃。
「いや、そこ弱点だったのかよ!!!」
魔法陣が暴発、バルドの体が硬直し――
「とどめよ」
クラリスの氷剣が突き刺さる。
ザシュッ!!!
バルドの体が氷結し、砕け散った。
「勝った……事故だけで……」
「あなた、マジで世界のバグね」
こうして、運−∞と地獄の事故連鎖だけで、魔王幹部を撃破したのだった。
魔王幹部バルドを事故連鎖で撃破し、王都は一時的に平和を取り戻した……はずだった。
だが。
「おい、カミヤ・カズト……」
振り返ると、そこに金髪イケメン――勇者レオン・グランハルトが立っていた。
「お、レオンじゃん」
「気軽に呼ぶな。お前、また事故で魔王幹部倒したらしいな」
「いや、事故っていうな……事実だけど」
「普通、あんな無理ゲー相手に“事故だけ”で勝てねぇんだよ」
レオンの苦々しい顔。
周囲もざわつく。
「おい、あれが例の二人か」
「正規の勇者と、神の操作ミス産物」
「もう、その呼び方定着すんのかよ……」
そんな中、またもや運−∞が暴発。
背後の屋台が崩れ、商品が飛び散り、またもやミル、エリス、クラリス、シオンが俺に倒れ込む。
四重ラッキースケベ事故発動。
「きゃっ!?///」
「いやあああ///」
「運命ってこういうことよね」
「ちょ、お前らまたかよ!!!」
レオンは冷静に呟く。
「お前、本気で世界の災厄だな」
「いや俺も被害者だからな!!!」
だが、そのままレオンが近づき、真剣な表情で俺を見る。
「……だが、面白い。次は正面から勝負しよう」
「お、おう」
「俺が、お前を超える」
イケメンのキラキラ笑顔が炸裂。
周囲の女子たちがキャーキャー騒ぐ中、俺は小声で呟く。
「いや、俺、事故だけでここまで来てるんだけど……」
「だからこそ、超えがいがある」
「どういう理屈だよ!!」
こうして、勇者レオンとのバチバチライバル関係が正式にスタートした。
地獄のハーレムと事故連鎖と運−∞に、また一人面倒な男が加わったのだった。
数日後、俺と勇者レオンは、ギルドから共同任務を言い渡された。
「えーっと、《東の遺跡探索任務》ね。危険度はA級だけど、あなたたち二人なら……まあ、事故でなんとかなるでしょ」
リリスの冷めた視線が刺さる。
「いや、俺はともかくレオンは正統派だろ」
「そうだな、俺は正規の勇者……」
だが、レオンがそこまで言いかけた瞬間、運−∞が発動。
背後で誰かが転び、桶の水がレオンにぶちまけられる。
「うおっ、冷っ!?」
水浸し、白いシャツが透け、周囲の女子たちがキャーキャー騒ぎ始める。
「……まさか」
リリスが顔を青ざめさせる。
「おい、待てよまさか……」
レオンも気づいた。
ラッキースケベ体質、伝染。
「ふざけんなあああああ!!!」
「いらっしゃい、こっち側へ」
俺とレオン、ポンコツ事故連鎖コンビ結成。
◇ ◇ ◇
東の遺跡内部。
石造りの古代の迷宮、トラップと魔物がうじゃうじゃ。
「ここ、マジでやべぇな」
「だから共同任務なんだろ……」
だが、開始早々、運−∞とラッキースケベがフル発動。
俺が転倒、レオンも転倒。
ミル、エリス、クラリス、シオンが見事に巻き込まれ、ダブルラッキースケベ事故発生。
「きゃっ!?///」
「んっ……ちょっと、レオンさん……///」
「いや違うんだ、これ不可抗力!!」
「わかる、俺も同じ立場だ!!!」
レオンが焦り、俺は絶望し、リリスはため息。
「最悪のコンビが誕生したわね……」
その後もトラップが勝手に暴発、魔物が事故で自滅、最終的に遺跡のボスも勝手に崩壊。
結果――
「終わった……全部事故で……」
「お前のせいで俺までこうなっただろ!!!」
「なぜかハーレム体質も伝染してるしな」
ギルドに戻ると、女子たちからの過剰な視線と、さらなる地獄の気配。
「次の任務、絶対ヤバい……」
「それでも、正義の勇者として逃げられん……」
事故とハーレムとラッキースケベの地獄コンビ、ここに誕生。
ギルドからの帰り道、俺とレオンは並んで歩いていた。
「おい、カズト……」
「なんだよ」
「マジでどうにかしろ、この体質……!」
レオンは真剣な顔をしていた。
ラッキースケベ体質・ハーレム体質
俺のせいで、見事にレオンにも伝染。
ギルド内でも、町中でも、モブ女子たちが次々と寄ってくる地獄仕様。
「いや、俺だって困ってんだよ……」
「見ろよ、また来た!!」
前方から、普通の村娘風の女子たちがキャッキャと駆け寄ってくる。
「レオン様、かっこいい〜!」
「ちょっと、私にも握手して!」
「きゃー!ぶつかっちゃった、ごめんなさい♡」
次の瞬間、運−∞が連鎖。
近くの屋台が崩れ、偶然にもレオンの服が破れ、腹筋と上半身が露わに。
「うわ、ちょっと待て!!」
女子たちの目がハートになり、そのままレオンを引きずり回す。
「おい、やめろぉぉぉ!!!」
レオン、モブ女子の群れに連れ去られた。
「……あー、完全に巻き込んだな」
「自業自得よ」
リリスが冷めた目で呟き、ミルとエリスは苦笑い、クラリスは淡々と寄り添い、シオンは楽しそう。
「ハーレムの味、どうだったかしらね〜」
そのままレオンは、女子たちに囲まれたまま、裏通りへ消えていった。
「勇者なのに、扱い雑すぎんだろ」
「あなたのせいよ」
こうして、レオンは事故ハーレム地獄の洗礼を受けたのだった。
俺の運−∞は、今日も順調に世界をカオスに染めていく。