レベル50 ポンコツ最強スペックと、代償という地獄
「おいカズト、そのステータス……冗談、よね?」
王都へ向かう道中、歩きながらリリスが何度目かの確認をしてくる。
俺は苦笑いしながら、空中に浮かぶステータスウィンドウを再表示。
【名前】カミヤ・カズト
【職業】転生者
【レベル】∞(固定・成長不可)
【体力】250,000(常時MAX・自動回復)
【魔力】25(初級魔法発動最低必要値:30)
【力】300
【防御】400
【運】−∞(世界規模の不幸連鎖発動中)
【特性】
・《ラッキースケベ体質》……確率を超越し、異性との事故的接触を頻繁に引き起こす。
・《ハーレム体質》……気づけば女性との遭遇率、好感度上昇率が異常。
・《伝説級魔法習得済》……ただし、全て発動に必要な魔力量=数万単位。
【スキル】
・《時間停止(必要魔力:100,000)》
・《完全復活(必要魔力:500,000)》
・《絶対防御結界(必要魔力:50,000)》
・《世界再構築(必要魔力:∞)》
※補足:魔力量25
「……ねぇ、なんでこんな無駄にすごい魔法だけ持ってて、魔力25なの?」
「神様が……操作ミスった……」
「操作ミスでここまで雑な設計になる!?」
リリスが額を押さえたくなる気持ち、よく分かる。
俺自身、このバグステータスを眺めるたびに脱力するんだから。
「つーか、ハーレム体質ってなんだよ……」
「……その説明いる?」
「いや、なんとなく察したわ」
そして。
その直後、運−∞とラッキースケベ体質が早速、同時に発動する。
「わ、わぁっ!?きゃっ!」
森の茂みから、二人の女性が転がり出てきて、俺の上に見事に落下した。
「いってぇ……え?」
一人は、獣耳が可愛らしい少女。
もう一人は、透き通るような白髪のエルフ風美少女。
二人とも、なぜか服が半分ずり落ちていて、俺の体に密着。
「な、な、なんでこんなことに!?///」
「ちょ、おま……いやいや、待て、俺が説明欲しいわ!!!」
リリスが無言で魔法の杖を構えた。
「ま、待てリリスさん!?これは完全に事故だ!不可抗力だ!!」
「……事故率、高すぎるのよあなた」
「運−∞だからな!!」
そして、周囲の木々がぐらりと揺れる。
見ると、さっきの不幸連鎖が続き、巨大な倒木がこっちに向かって倒れてくる。
「ぎゃあああああああ!!」
巨大な倒木がこっちに倒れてくる中、俺は獣耳少女とエルフ美少女を抱えたまま、全力で転がった。
ドゴォォォォン!!
地面が揺れ、轟音が響く。倒木が寸前で地面に突き刺さり、砂埃が舞い上がる。
「せ、せふ……」
「……うぅ、痛いよ……」
「んっ……ど、どこ触ってるのよ……」
気づけば、俺の手は完全にアウトな位置。
獣耳少女の柔らかい耳と、エルフ美少女の絶対領域(太もも)を同時に掴んでいた。
「いや、違うんだこれは不可抗力だ!!」
「変態!!」
エルフ美少女の平手打ちが飛ぶ――が、俺の防御400が発動し、全く効かない。
「無駄だ、この肉体……いや、こんな形で役立たなくていいんだけどな……」
リリスがため息をつきながら、二人に歩み寄る。
「ちょっと、大丈夫?あなたたち」
「う、うん……助けてくれて、ありがとう」
獣耳少女が目を潤ませ、ふにゃっと笑う。
その耳と尻尾がふさふさで、控えめに言ってヤバい破壊力。
「私はミル。森の近くの獣人の村から来たの。迷子になってたら、木が倒れてきて……その、あなたが助けてくれた」
「いや、俺が助けたというか、事故というか……」
「……助けてくれた人の悪口言わないの」
エルフ美少女が冷静にツッコミを入れつつ、自分の服を整えた。
「私はエリス。エルフ族の里から来たけど、旅の途中で巻き込まれた感じね」
「お、おう……まあ、なんか色々すまん」
「いいのよ、助かったから」
ミルとエリスが微笑む。
――ここでハーレム体質が全力で発動。
二人の好感度、異常な速度で上昇中。
「で、その……あなた、旅してるんだよね?良かったら、一緒に行ってもいいかな」
ミルがふにゃっと上目遣い。
「え、いや、それは……」
「私も興味あるわ。あなた、ただ者じゃないでしょ?」
エリスもジッと俺を見つめる。
「……いや、ただ者じゃねぇのは事実だけど……」
隣でリリスがため息。
「もう、こうなったら好きにしなさい。あなたのせいでどうせ平穏は無理よ」
「なんか色々ひどくね?」
こうして、俺の仲間に、獣耳少女ミルと、エルフ美少女エリスが加わった。
「ハーレム体質、マジで働いてんな……」
だが、もちろん代償も忘れちゃいけない。
上空を見上げると――
隕石、接近中。
「おい、神様!!!代償デカすぎんだろ!!!」
「おいおいおいおい、隕石て……ふざけんなよ運−∞!!」
俺の頭上、空を裂くように火球が落ちてくる。
獣耳少女のミルは耳をピンと立てて、
「え、なになに、あれ何!? でっかい火の玉……?」
エルフ美少女のエリスも冷静な顔を保ちながら、わずかに青ざめている。
「……あの規模、王都も巻き込まれるわよ」
「いや、そういう問題じゃなくね!?ここが直撃コースだろこれ!!」
リリスはすでに杖を構え、魔法陣を展開。
「このままだと、確実に全滅……っ」
俺も慌ててステータスを見る。
【スキル】
・《時間停止》 必要魔力:100,000
・《完全復活》 必要魔力:500,000
・《絶対防御結界》 必要魔力:50,000
・《世界再構築》 必要魔力:∞
現在魔力:25
「スキル、全滅!!!!」
「てめぇ何のために転生してきたんだよ!!」
リリスの正論が突き刺さる。
その時だった。
ゴゴゴゴ……と大地が揺れ、近くの崖が崩れる。
そこから巨大な石が転がり出し、まるでピタゴラススイッチのように木を弾き、岩を跳ね、最後に俺の背中に直撃。
「ぐわっ!?……って、あれ?」
俺は弾き飛ばされ、気づけば隕石の落下コース上空へ。
「え、ちょ、まさか俺が……」
不幸連鎖、止まらない。
だが、ここで奇跡(という名のラッキースケベ体質)が発動。
隕石と空中でニアミスした瞬間、強烈な風圧で服がはだけ、再びミルとエリスの視線を一身に浴びる。
「きゃっ!?///」
「ちょ、また……またそのタイミングで……」
だが、俺の肉体は体力25万・防御400のゴリゴリ仕様。
隕石にぶつかっても、なぜか生きてる。
「……これ、ワンチャンいけんじゃね?」
そう思った次の瞬間。
ズドォォォォォン!!!
俺ごと隕石、地面に激突。
大地が揺れ、爆煙が上がる。
ミルとエリス、リリスが必死で駆け寄ると――
「ゲホッ……いてぇ……けど、生きてる……」
俺は、隕石のクレーターの中心で、全身ボロボロになりながらも無事だった。
そして、隕石の破片が偶然にも周囲の魔物の巣やトラップを全て破壊。
周囲の魔物たちはパニックで逃げ去り、道が開ける。
「こ、これが……運−∞の暴走……」
リリスが呆然と呟く。
ミルとエリスは、顔を真っ赤にして俺を見る。
「また……また見られた……///」
「変態……///」
違うんだ、全部、不幸とスケベと運−∞のせいだ。
こうして俺たちは、地獄のカオス連鎖を乗り越え、なんとか王都への道を切り開いたのだった。
「……やっと着いた……」
長すぎる道のりを経て、ついに俺たちは王都の門前に立った。
巨大な石造りの城壁、その上に掲げられた旗、行き交う馬車と冒険者たち――
THE・異世界ファンタジーな景色が広がっている。
「ふぅ……さすが王都。相変わらず賑やかね」
リリスが肩を軽く回しながら呟く。
隣では獣耳少女ミルが目を輝かせ、エルフのエリスは警戒心を緩めず周囲を見ている。
「いやー、長かったな。というかトラブルしかなかったな」
「全部、あなたのせいだけどね」
リリスの冷たい視線が刺さるが、反論できない。
俺のステータスのせいだ、間違いなく。
そんなこんなで、いざ入城――と、門番が声をかけてきた。
「そこのお前ら、入城手続きを……って、な、なんだそのステータス!!?」
門番の顔が引きつる。
俺の《レベル∞》《運−∞》《体力25万》というバグスペックを見て、即座に騒ぎになる。
「おい、責任者呼べ!なんかヤベェ奴来たぞ!!」
「ちょ、待て、誤解だ!これは神様の……」
言いかけた瞬間、後方でまた不幸連鎖が発動。
遠くで転んだ商人の荷物が転がり、偶然にも俺の背後を直撃。
その勢いで俺がバランスを崩し、前方にいたミルとエリスを抱きかかえる形で倒れ込む。
「わぷっ!?///」
「ちょ、またそのポジション……///」
再び、俺の手がふわふわな耳と絶対領域を鷲掴み。
「てめぇ、なにしてんだ!!!」
門番、完全に誤解MAX。
リリスは無言で顔を覆う。
「もう、あんた色々と終わってるわね」
その後、何とか事情を説明しつつ、王都内部へと滑り込んだ。
結果――
「王都のギルドで登録、情報収集、それと宿探し。いい?トラブル起こさないでよ」
「いや、俺の意思で起こしてねぇからな」
「言い訳禁止」
こうして俺たちは、またもや波乱の匂いしかしない王都での生活をスタートさせた。
王都の中心街、石畳の広場を抜けて、俺たちは冒険者ギルドの前に到着した。
「おお……デカっ」
木と石造りの重厚な建物、看板には剣と盾のマーク。
中からは怒声や笑い声が響き、いかにも荒くれ者の集まりって感じだ。
「ここが王都ギルド。情報収集も依頼もここが拠点になるわ」
リリスが事務的に説明し、俺とミルとエリスを引き連れて中に入る。
案の定、入った瞬間、視線が一斉にこっちへ。
「あ? なんだあの女連れの奴」
「獣人にエルフに魔法使いの美女って……リア充爆発しろ」
「うらやま……いや、殺意湧くな」
ギルド内の視線が痛い。
「えっと……俺、目立ってる?」
「当然でしょ。あなたのラッキースケベ&ハーレム体質のせいよ」
「いや、そんなつもりは……」
「無意識でやってるのが一番タチ悪いの」
リリスの冷たいツッコミが刺さる中、カウンターに近づく。
そこには、眼鏡をかけた無愛想な受付嬢がいた。
「……登録か?」
「はい、お願いします」
俺が差し出したステータスウィンドウを見た受付嬢の表情が、凍りつく。
【名前】カミヤ・カズト
【職業】転生者
【レベル】∞
【運】−∞
【体力】25万
【魔力】25
【スキル】クソ強いけど使えない山盛り
「……はい、異常ステータス、確認。えぇ……本当に神様のミス?」
「うん、マジで」
受付嬢がため息をつきながら、書類を用意する。
「とりあえず仮登録ね。あなたみたいなバグ持ちは正式審査必要」
「いや、俺バグ扱いなの……」
「当然でしょ」
その瞬間、また不幸連鎖が発動。
背後のテーブルが突然崩れ、酒がぶちまけられる。
その酒が偶然俺の服にかかり、透ける。
「わ、ちょ、やだ……///」
「またその体勢で……///」
ミルとエリスの顔が真っ赤に。
「いや、これも不可抗力だからな!?てか、俺が一番被害者だろ!!」
ギルド内の冒険者たちがざわつき、またもや修羅場の気配。
「登録だけでこの騒ぎ……やっぱり、あなた最悪ね」
リリスのため息が止まらない。
だが――
「おい、騒ぎはやめろ」
低く響く声がギルド内を制した。
現れたのは、黒髪で冷たい瞳を持つ、強そうな剣士風の男。
「お前が、神の落とし物か。面白いな」
黒髪の剣士風男は、鋭い目つきで俺を睨んだ。
腰には重厚な剣、筋肉質な体格、明らかに強者のオーラ。
「いや、落とし物っていうか、神様のミス産物?」
「同じことだろ」
「ちょっと待て、それで処理されるの俺嫌なんだけど」
ギルド内は一気に静まり返る。
冒険者たちの視線が集中する中、男は口元を吊り上げた。
「このギルドじゃ、力が全てだ。登録するなら実力、見せてもらおうか」
「え、もう戦う流れ?しかもここで?」
「問題ない。すぐ終わる」
「えぇ……」
リリスはため息、ミルとエリスは不安そうに俺を見る。
「気をつけて、カズトさん……」
「運が悪くても、あなたなら……」
「いや、それが一番問題なんだよな」
だが逃げるわけにもいかず、俺は渋々構える。
男の名は、ガルス・ヴァン。
王都ギルドでもトップクラスのSランク冒険者らしい。
「レベル∞、面白いハッタリだな。潰す」
「ハッタリじゃねぇけど中身スカスカだよ!!!」
戦闘、開始。
ガルスの剣が唸り、突っ込んでくる。
だが、ここで運−∞が発動。
彼の足元の床板が、絶妙なタイミングで抜けた。
「ぐっ……!?」
バランスを崩したガルスの剣が、奇跡的に俺の横をかすめ、そのまま後ろのテーブルを真っ二つ。
その破片が壁に跳ね返り、天井のシャンデリアの鎖を切る。
「いやいや、嘘だろ……」
ドカァン!
落下したシャンデリアがガルスに直撃、見事に押し潰された。
「勝った……のか?」
ギルド内がざわつく。
ミルとエリスが駆け寄り、リリスは呆れ顔。
「信じられない、事故だけで……」
「これが運−∞の地獄だ……」
ガルスが瓦礫の下から這い出し、ボロボロの顔で笑う。
「面白い、認めよう……お前、最高に厄介だ」
こうして、謎の勝利をもぎ取り、俺のギルド登録は無事(?)完了した。
だが、同時に王都中に「危険人物カミヤ・カズト」の名が轟くことになるのだった。
ギルド登録も終わり、ようやく一息――つけるわけがなかった。
「次は、依頼板を見て決めるのが基本ね」
リリスが真面目に説明するが、俺の注意は別の場所に向いていた。
カラン……
ギルドの扉が開き、そこに現れたのは――
「おいおい、またかよ……」
――絵に描いたような、完璧すぎる美少女だった。
漆黒のロングヘア、透き通るような蒼い瞳、白い肌に細身で端整な顔立ち。
しかも、彼女が着ているのは、王都の貴族階級が使う純白の戦闘ドレス。
ギルド内が一瞬静まり返る。
「ま、まさか……あの人、"氷刃姫"……!」
「王国最強の魔法剣士だぞ……」
「このギルドに現れるなんて、珍しいな……」
周囲がざわつく中、美少女は一直線に――なぜか、俺の方に向かってきた。
「え、いや、ちょっと待て……」
ドン。
そのまま俺の胸に倒れ込むようにぶつかってきた。
「……あ、」
見事に、俺の手が彼女の胸元へ。
「うわ、またラッキースケベ体質全開かよ……」
慌てて手を引くが、もう遅い。
ギルド内がざわつき、ミルとエリスが真っ赤な顔で睨んでくる。
「また、またですか!?///」
「カズトさん、ほんと、ほんとに……」
リリスは冷静な目で呟く。
「完全にラッキースケベ体質の影響ね。諦めなさい」
だが、目の前の美少女は怒るどころか、じっと俺を見つめた。
「あなた……運命、感じた」
「は?」
その美少女、氷刃姫の名は、クラリス・ヴェルディア。
冷酷無比と恐れられる彼女が、なぜか俺に一目惚れという最悪のハーレム連鎖が発動した瞬間だった。
「ちょ、待て。運命とか言う前に状況整理しようぜ?」
「いいえ、あなたと私は結ばれる運命」
「いやいやいや、速攻でハーレム入りすんの!?この展開!?」
ギルド内の視線が痛い中、またもや俺の地獄の運−∞ハーレムが拡大したのだった。