第3部 交差の魔導士 ep.2 再会
『再会』
騒乱に揺れる隔絶の地。その騒乱による燃え盛る炎、魔力の異変は、遥か陰の国でも確認できるほどであった。
状況調査に陰の国の筆頭魔導士インフィニスがやってくる。
インフィニスは、弱まりつつある魔力壁を通り抜け、隔絶の地へと入った。
反乱軍と鎮圧軍の戦いを観察するインフィニスに、戦うアンの姿が目に入る。
「……まさか……ソラ?」
インフィニスは身を乗り出して、アンにも視認できる位置まで駆け寄る。
「ソラ? 君なのか――。」
その声に、アンの身体が揺れた。
次の瞬間、意識の底から何かが堰を切ったようにあふれ出す。
――虚の力。陰の力。そして、真の力。
かつてこの最果ての地に辿り着き、魔力壁を超えようとしたその日。
自らの使命のために足を踏み入れたこの地で、彼女は瀕死の重傷を負っていた。
そこを衛兵に捕まり、他の国民と同様、記憶の一部を書き換えられるソラ。
だが彼女はそれと同時に、ソラは魔力の感覚すら失っていたのであった。
「思い出した……。わたしは、ソラ。何かを求めて旅をしていた……。」
インフィニスは小さくうなずく。
一方、西の魔力壁付近――
ネイピアを背に乗せたスカイドラゴンの前に、巨大な魔力壁が立ちはだかっている。
「あそこに窪みが」
レイが通過したと思わしき場所を見つけたネイピアは指を指す。
スカイドラゴンはその魔力壁の窪みの突破を試みる。
スカイドラゴンとネイピアは魔力壁を突き抜けたが、その代償としてスカイドラゴンは深い傷を負い、その場から動けなくなってしまった。
スカイドラゴンはネイピアを振り返り、低く告げる。
「我に構うな、先を急げ」
ネイピアは短くうなずき、駆け出した。
やがて、彼女はレイとの合流を果たした。
ネイピアは切迫した表情で、レイに告げた。
「時空の結晶が異常を起こしている。……もうすぐ、臨界に達するわ」
その言葉に、ヴァルタスが静かに口を開いた。
「……女王シルトは、私と同じく外の世界からこの地へ来た者だ。
彼女が来た理由は、その“結晶の異変”と深く関係している。
あのとき、東の魔力壁が未完成だった――彼女と私は、ほぼ同じ時期にこの地に来た。」
その名を聞いたインフィニスの表情が一変する。
「……まさか……」
過去に繋がる因縁が、今、再び動き始めようとしていた――。
『決戦』
レイとソラ、そして義勇軍の仲間たちは、ついに女王シルトとの決戦に臨んだ。
戦場は、王都へと続く山岳の要衝。ここを突破すれば、隔絶の地の中枢――王都へと至る。
崖の上に立つ女王シルトを見てインフィニスは驚愕する。
「……まさか、そんな……」
その姿は、かつて陰の国の筆頭魔導士にして、陰の王エレオスの后であった――シルトだった。
数十年前、国家転覆の動乱が発生したおり、エレオスを裏切り、国家を転覆させた首謀者の一人とされていた。
「……かつて、エレオスに背いたあなたが、なぜこんな場所に……。」
「……久しぶりね、インフィニス。でも、私はもうあの頃の私ではない。」
戦いが始まった。
複雑に交錯する魔力の応酬が繰り広げられる。
乱戦の中、レイとシルトとの対決。
徐々に傷が癒えきたレイはかつての力を取り戻しつつあり、シルトを圧倒。
だが、その力のあまりの強さに、地面が大きく裂け、シルトとソラとインフィニスが揃ってその深い亀裂の中へと落ちてしまった。
「ソラ、インフィニス!」
レイが叫び、駆け寄ろうとするが、亀裂は崩れる土砂で埋められてしまう。
『亀裂の底』
暗い闇の底。空気は重く、魔力の流れはほとんど止まっていた。
インフィニスは倒れて土砂に挟まれ動けないソラを見つけ、駆け寄る。
「……大丈夫だ、すぐに助け出す。」
インフィニスはソラを助け出し、さらに奥に進むと、瓦礫の下にシルトの姿があった。
シルトは負傷し、もう戦える状態ではなかった。
インフィニスは一瞬の躊躇いの後、シルトを助けることに決めた。
瓦礫を取り除き、シルトを助けるインフィニス。
負傷し、ゆっくりと視線を上げるシルト。
「……あなたは優しいままなのね。インフィニス。」
「あの優しかったあなたがなぜ……。」
シルトは微笑んだ。どこか哀しみに滲むその微笑み。
「話せば、長くなるわね……。だけど……もう話すべきね。私がなぜこの地に降り立ち、女王となったのか――」
そして彼女は語り出す。
数十年前、
陰の王、"交差の魔導士" エレオスが、この世界に突如として現れた "時空の支配者" と戦った物語を――
その中で、彼女は何を見て、何を選んだのか――




