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吉凶は夢に萌す  作者: 邑 紫貴
必ず奪還しますから!
5/55

情報を収集してみたものの・・


彼の後姿も見えなくなったというのに、その場に立ち尽くしたまま。

視線を落として手の平を見つめ、ぎゅっと握りしめる。それを胸元に近づけて目を閉じた。


安易な涙を流したのを一翔に晒して情けない。

私の役目、吉凶を萌して不吉を告げる。


『本当に返して欲しいのか?』


一翔は夢の内容を知っている。

それはやはり……


取り返さなければならない。一刻も早く。

夢は不吉な未来を萌したのだから。


“彼”に告げなければ。

会いたい。きっと、それが最後の接点になるだろうから。



「ね、そんなにあいつが好きだったの?」


急な声に心臓が跳ね、目を見開いて声の主から咄嗟に避ける。


明らかに不機嫌な表情を見せ、開いた距離を詰め寄って睨む。

大鷹おおたか 紋葉いさは。彼もアヤカシの一人。


「大鷹くん。一体、いつから見ていたの?」


後退して詰められた距離を広げ、手で静止を促す。

何を考えているのか読めず、近づかれるのが怖い。


「ん?おかしなことを言うね。俺の目は常にお前を見ていると言うのに。」


……ストーカーみたいなセリフ。


「目が良いんだね。」


その目がアヤカシを見分けるのだろうか。

見知らぬ大鷹くんが話しかけてきたときは驚いたけど、今日ほどではないかな。


「で?」


でって何かな。

あぁ、あいつが好きなのかって……それは、どっちなの?


彼の問いに黙っていると、大鷹くんは大きなため息を吐いた。


「あいつ、基本的には地上タイプだよ。やめとけ、俺がいる。」


…………は?

一瞬、何を言っているのか分からず思考停止。


そんな私の背後から、白い手が伸びて抱き寄せられてしまった。

背の低さで、後ろに倒れそうになる。


紋葉いさは、告美はあかんよ。いくらあんたが好きじゃって言うても、あげんけんな。」


光莉なの?

足を曲げて体勢を維持して、顔を後ろに向けて声を確認する。


「うっせ。黙れ、日本語を喋れ。」


大鷹くんと知り合いなのかな。

それにしては、方言も違うし険悪な雰囲気。


「阿波弁は日本語やけん、黙らんわ。」


光莉は珍しく表情を露わに、声も普段より大きくて思わず笑ってしまう。


「光莉、ちょっとこの体勢は辛いから離してくれないかな。」


光莉はキョトンとした顔を見せ、手を離す。


「しんどかった?ごめんなぁ。……紋葉が悪いんじょ、謝んな。」


私に謝って心配したかと思えば、怒りの矛先を大鷹くんに向けて睨む。


「何で、俺が謝るんだよ。」


視線を逸らして知らん顔の大鷹くんに、光は詰め寄って行く。


「はがいたらしい。」


「はぁ?歯が痛いらしいって、何だよソレ。」


滅多に見られない怒った光莉も可愛い。


「光莉、大鷹くんと知り合いなの?」


私の質問に、大鷹くんと光莉は顔を合わせてから同時で私に視線を向けた。


「ちゃう。ほんな事より、告美は副会長を好きなん?」


副会長?

……好き……え、一翔って生徒会の人なの?


「光莉、二人の雰囲気は只事ではなかったからな。訊き出せ。」


「命令すんな、ぼけぇ。」




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