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それは、むかしむかしのことです……

作者: 雉白書屋

 はいはい、ええ、そうですね、むかしむかしのことでした。それがどれくらい昔かと言いますと、いやあ、それはもう本当に昔のことで、いつのことだか、はっきりとした年代までは覚えていないんですが、それくらい、もう随分と昔の話なんです。

 お年寄りは若い方たちと時間の感覚が違うと言いますよね? ほら、お年寄りの言う『ちょっと前』は十年くらい前のことだったりね。でも、それは本当にちょっと前のことのように思えるんですよねえ……。不思議なものですねえ、時間の感覚って。

 だからね、一週間くらい前のことを言うときは、『ちょびっと前』って、え? この話はいいですか? ああ、はいはい、戻りましょうかねえ。ええと、それで、どこまでお話しましたかねえ……ああ、そう、むかしむかしのことです。あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

 場所は、はっきりと覚えていないんですよね。何せ、ほら、昔の話ですから。しかも、むかしむかし、ですからね。それはもう何十年も前のことで、おじいさんとおばあさんも若かった頃の話なんです。でも、ここはおじいさんとおばあさんにしておきましょうか。

 それで、おじいさんとおばあさんは今はそこには住んでいないんですよ。引っ越しを確か、ええと、二回ほどしていて、最初は団地に住んでいたんですけど、お金を貯めて海のほうに家を買いましてね。海のほうと言っても、海が見えるほど近くではなくて、でも見えないほど遠くもなくて、実際は海というよりも山の中腹に家を買ったんですね。だから、海の近くの山に家を買ったということなんです。坂から海が見えたんですよ。ああ、でも山と言っても、そんなに木がぶわーっと生えているわけじゃなくて、そこは住宅地だったんですね。スーパーまで買い物に行くのは、坂を下りないといけなくて、若い頃はまだよかったんですけど、いや、若いと言っても子供がもう小学生ぐらいのときでしたかね。まあ、それはいいんですけど、その坂道が年々きつくなってきて、それで子供が独り立ちした頃に、その家を売って新しい家に引っ越したんです。まあ、新しい家と言っても新築じゃなくて中古なんですけどね。ほら、年金生活って何かと節約しないといけないでしょ。だから、少しでもお金を残しておきたいなって、おじいさんと一緒に考えてそうしたんです。

 それで、ああ、はいはい。ここからですよ。ええと、ある日、おじいさんが古道具屋で買ってきたんですよ。そう、大きくて重い、今思うと、よくまあこんなものを持ち帰れたなと。ああ、確か自転車に積んで持ち帰ってきたんでした。でも、それにしたって重かったでしょうにね。ええ、はい。そうです、電子レンジです。その電子レンジがね――


「だから! 金庫だよ、金庫! 電子レンジじゃねえ!」

「おい、静かにしろよ」


「だってよ、このババア、金庫の話まで全然たどり着かねえじゃねえかよ。おい、鍵はどこにあんだよ!」

「聞いても無駄だろ。どう見てもボケてるし寝たきりじゃねえか」

「おい、もういいから、そのババアはほっといて、金庫を運ぶのを手伝え。開けられないなら持って行くしかねえだろ」


「チッ、あいよ」

「了解ー」





「ふう……あっ、もしもし、警察ですか? 十分ほど前に三人組の強盗が家に押し入ってきました。顔は隠れていますが、声や話し方から若い男性だと思います。今、別の部屋で金庫を運び出そうとしています。はい、住所は――」

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