とある兄弟の事情
とある村に、それはそれは仲の良い兄妹が居た。
七つ離れた妹は両親だけでなく、兄にもとても可愛がられ育てられた。
少女はいつも兄の後を追い、兄はそれを邪険にすることも無かった。
兄の夢は村を出て冒険者になること。少女も兄の真似をして冒険者になると豪語していた。
どんな我が儘でも許してくれる兄もそれだけは賛同できず、いつも諭すように説得を試みていた。
しかし可愛がられて育てられたためか、少女は少し強情な性格に育ってしまったようで納得することは無かった。
そんなに危ないのなら兄が護ってくれればいい。そして自分は後ろから援護すればいい。兄を信用していた少女はそう訴える。
兄は許されて、自分は許されないのが納得できなかった。
そんな少女は弓と魔法の練習に励むことにした。自分の力と、本気だという想いを示すために。
どこで作り方を覚えたのか、自作の弓で練習をする日々。それを見た両親は少女に弓を買い与えることにした。
少女はとても喜び、より一層練習に打ち込んだ。
少女には才能があった。弓の腕は自力でどんどん伸びていき、魔法は村に住む元冒険者のおばあさんに教えてもらっていた。
これでは本当に付いてくるのではないかと兄は頭を抱えた。少女はまだ幼い。さすがに連れて行くわけにはいかなかった。
苦悩の末、兄は少女に黙って村を出た。少女が十一の頃だった。
自身の生活が安定し、少女が大きくなった頃に迎えに行けばいいと。
暫くの間、少女は荒れた。しかし、兄の想いも理解できる。そこまで子供でもなかった少女はすぐに立ち直り、このモヤモヤした気持ちを弓に込めることで紛らわせた。
少女が十六の頃、兄が仲間を連れて村にやってきた。兄と同じ歳のオリクト。少女の一つ上のネリア。成人する頃に迎えに来てくれたのだ。
兄も十六で村を出たかっただろうに、二年間も引き留めていた。その事に引け目を感じたりもするが、感情はそう簡単に割り切れるものではない。
積もり積もった鬱憤を一晩中言葉にし、それで少女の鬱憤は解消された。
暫くは村に滞在するようで、色々と話をする機会が得られた。
少女は二人とすぐに打ち解けた。活発で人見知りをしない少女は誰とでもすぐに仲良くなれるようだ。
三日が経ち、少女は彼らと共にディーグの街へと赴くことになった。
両親に別れを告げ、期待に胸を膨らませた少女は元気いっぱいに村を出る。
憧れだった冒険者生活。どんな困難が待ち受けていようと、少女は乗り越えていくのだろう。
そしてこれより二年後、心に光と闇を抱えた一人の少年と出逢うことになる。
ふたつの転生はここまでとなります。これまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
良ければ新作の『底無し魔力の召喚士』もよろしくお願いします。




