リョウヤの強さの秘密
「人は誰しもが魔力を内包しているのだ。それを認識するためには魔力の源とされる魂を知覚することから始めるのだ」
リョウヤは今、初歩的な講義を受けている。
教鞭を執る男には見覚えがあった。昔からうだつの上がらない男で、それは今も変わらないらしい。そんな男にリョウヤを任せるのには不安が残る。
なぜならリョウヤは魔力がどういったものなのかを知らないらしい。つまりそれは、赤子同然であるということ。
これでは私の目的を果たすどころか、リョウヤ自身も危険な状態にある。
彼に死なれては困るので、私はリョウヤの手助けをすることにした。
リョウヤの魂に触れる。ここにあるのだと主張する。
「この辺がなんかムズムズするけど、これが魂なのか?」
みぞおちの辺りを親指で叩く。どうやら気付いたらしい。
「どうやら素質はあるようなのだな。次は全身に意識を向けるのだ」
全身の魔力を刺激し掻き回す。それは魔力の奔流となってリョウヤの身体を駆け巡った。
「なんか凄い勢いで流れてる感じ? なんだこれは?」
「ほほう? 興味深い答えなのだ。しかし魔力を理解できているようなので、これなら次に行けそうなのだ」
――待て。
魔力を認識しただけで理解したと言うつもりなのか。正気の沙汰ではない。
どれほど理解を深めようとも、決して底に辿り着くことはできないだろう。それ程までに魔力、魔法とは奥が深いものだ。
やはりこの男では力不足だ。本人の実力だけではない。教え導く者としての認識の甘さが問題なのだ。
どうしたものかと思案している間にも講義は続く。
「次は魔力で剣を強化するのだ。リョウヤにとって強い剣とはなんなのだ? それを意識しながら魔力を剣に込めるのだ」
ふむ。ここは真面なのだな。しかしそれも基礎が出来ていなければ意味を成さない。基礎は私が何とかして導くとしよう。
「これはちょっと分からないな。どうやるんだ?」
リョウヤには悪いが、ここから先の手助けはまだできない。基礎を疎かにしたまま先へ進もうとしすぎている。
魔力を体外へ放出するには魔力の流れを上手く操作できなければ成らない。ならばこの訓練で魔力の理解を深めることも可能なのだ。暫くはここで躓いてもらう必要がある。
「リョウヤは身体強化が得意なようなのだ。ならば昼からは戦闘訓練を始めるのだ」
――早計だ。
この男は何を焦っているのだろうか。一日で本人の資質を見極められるわけがない。
いや、待て。
私が手助けをすることでこの男を早々に倒し、別の人間に代わるよう仕向ければ良いのではないか。
この男であればそう時間が掛かることでもないだろう。気付かれないよう少しずつ強化の度合いを高めていけばいい。
さすがにこの男より酷い者など居ないであろう。
すまない、リョウヤ。
ダルカス・フォルマンなる者に容赦なく打ちのめされることになってしまった。




