キラーマンティス討伐
討伐依頼を眺めていると、端の方にキラーマンティスの討伐依頼があった。見た目は完全にカマキリ。その変異種で超強い奴である。
なぜこんな危険な奴が目立たない場所に、しかも報酬が低く設定されているのか。
勿論、ちゃんとした理由がある。
昆虫の変異種ってのは結構な頻度で産まれている、らしい。でも実際に見ることも出会うことも稀だ。
まずは産まれる数が多い。その分変異種の確率が上がる。
次に行動範囲が狭い。その理由は二つ。動物に比べて極端に寿命が短いのと、奴らは共食いをするからだ。
周りが同種に食われていようが危機感を覚えることはないので、そのまま次々と食われていく。
基本的には異常繁殖した時に産まれるが、周りの同種を食い尽くす頃にはほとんどが寿命を迎えることになる。
つまり討伐行ったら既に死んでましたが普通に起こる。
たまにそれを利用して死んだキラーマンティスから討伐証明部位だけ持ち帰る輩も居るらしい。
勿論調べられるとバレるらしいが時間も手間も掛かるらしく、危険度の割りに被害が軽微なのも相まって報酬は低い。
手間が掛かるのに調べられるのは「でもお前キラーマンティスより弱いじゃん」って人だけだ。
キラーマンティスを倒せるような強い人は、わざわざこんな依頼を請けないので調べるまでもない。
そんな無駄足を惜しまず請けようかなと思っているのは比較的近場だからだ。
この辺は人の往来も多いので、今回ばかりは被害が出る可能性がある。
後はそうだな。今の自分の力を試してみたいってのはある。
(ジェリカ。今の俺でもキラーマンティスって倒せると思う?)
一応ね? 絶対無理とか言われたらちょっと考え直すかもしれない。でもいざとなったらジェリカにやってもらえばいいから楽な仕事ですよ。
(少し厳しいかもしれないな。私が補助すれば問題はないだろうが)
(やっぱり一人じゃ無理か)
(試してみたいのか?)
(ちょっとだけやってみたくはある)
(ならば試してみるといい。私が危険だと判断すれば手助けしよう)
おっ! ひと狩り、行ってきますか!
(それともう一つ。掠り傷一つでも負おうものならすぐに交代することが条件だ)
(分かった)
なんともまあ過保護な条件だが、それくらい危険な相手ってことだろう。
受付で手続きを済ませ、すぐに出発した。
走ること十分ほど。目撃された場所でまだ何かを食っていた。
体長八十センチほどだろうか。産まれてからずっと何かを食い続けるらしいのでカマキリの癖にデカい。イナゴの異常繁殖とかでもかなりデカくなるらしいし、あり得ない話ではないか。
急いで来たので息を整える。そしてゆっくりと後ろから近づいて行くと……首だけがグルンと回ってこっちを向いた。軽くホラーである。
キラーマンティスは昆虫みたいな何かをムシャムシャしながら威嚇してくる。戦ってみたいとは言ったけど、これはなんか違う。初手から精神攻撃を食らいテンション駄々下がりである。こいつ……強いっ!?
まずは相手の間合いと速さを確かめるべく何度か突いてみるが、鎌で軽くいなされる。ムシャムシャしながら。
もっとちゃんとした攻撃をしないと意味がないらしい。ならこいつでどうだ?
「【コンバッション】」
視界を炎で遮り、一歩踏み込んで袈裟斬りにする。突然視界に現れた炎にビックリして固まった所を切り裂く――予定だった。
予想通りに驚いたキラーマンティスは、俺の思惑とは違って反射的に後ろへと跳んだらしい。俺の攻撃は見事に空気を切り裂いた。素振りをしに来たんじゃねえ。
思ったよりも速い。と言うより反応が速いって感じか。
昆虫と違って人間には知恵があるんだ。頭を使っていこう。
まずは途中で拾った石を……投げる! 魔力で強化した俺の肩は誰も打ち返せないほどの剛速球を見せる。奴はそれを――真っ二つにした。
何と言う切れ味でしょう。打ち返すどころか石を斬るとは思わないじゃん? 魔力の強化って凄い。いやそれだけで出来るのかあれ?
こっちは一発も食らったらいけないっていうハンデ背負ってるんだ。おふざけはこのくらいにして、ここからは真剣にいこう。
いつものように相手の攻撃を受け流して隙を晒した所を反撃。ジェリカはこれが超巧い。まさに流れる水の如し! かく言う今の俺はといえば……。
「あ、ちょっと待って! 武器二本はずるい!」
激しく振るわれる二本の鎌に防戦一方だった。隙なんてどこにあるの!?
怒涛の攻めを食らって思考が追い付かない。剣の強化を疎かにするのだけはまずい。これだけはしっかりと意識しなければ!
(【エアインパクト】)
キラーマンティスが吹き飛ぶ。
どうやら先に隙を晒したのは俺の方だったらしい。
(フレッド。剣の強化は私に任せてそれ以外に集中するといい)
(……分かった。すまない)
どうやらここまでのようだ。
仕方がないのでその分を身体強化に回す。割といい感じに反撃できるようになった。
でもこいつがかなり硬くて切断まではできない。
(フレッド。節を狙うといい)
なるほど。そこが弱点なのか。
そうして関節部分の節を狙うも、動きが速いせいでなかなか当てられない。悪戦苦闘していると……。
(【エアインパクト】)
はい、二度目の隙を晒しました!
(フレッド。剣の強化を高める。落ち着いて戦うといい)
どうやら俺の強化と同程度にまで加減していたらしい。
そこから先は早かった。
左の鎌を受け流した後、相手の右側に回り込みながら左足の節の近くを切断。体勢を崩したキラーマンティスの左鎌を斬り飛ばせば後は勝ったも同然である。
自分の足りない部分も見えてきて実りのある討伐依頼になった。
本日、新作を投稿しました。そちらもよろしくお願いします。




