セレスたちの護衛依頼
「それじゃフレッド、またね」
そう言ってフレッドと別れたセレス達はアゼリア領を南下する。
森林地帯の東側を通って次の目的地へと向かっていると、ガラの悪い連中と遭遇した。
「ヘヘッ、荷物全部置いていきな。そうしたら命だけは助けてやるよ」
前に三人、後ろにも三人の計六人の盗賊団であった。
「報告通りだな」
そう呟き臨戦態勢を整える。
前にエルド、後ろには他三名が位置に着く。
それを見た盗賊団の一人が口を開く。
「やっちゃっていいっすよねぇ、お頭ぁ」
お頭と呼ばれた体躯の良いスキンヘッドの男。
人数差を見て勝ちを確信したのか、間髪入れずに答える。
「適当に痛めつけてやれ」
「いやっほぅ、そうこなくちゃなぁ!」
「たったの四人で勝てると思うなよ?」
最初に動いたのはセレスであった。
セレスは御者台に登るとお頭と呼ばれた男に向けて弓を放つ。
「おらぁ!」
男は剣で弓を弾くと少しだけ笑みをこぼす。
「活きが良いのが居るじゃねえか。おめぇら、あいつは傷つけるんじゃねえぞ」
「お頭ぁ!? 俺もあいつがいいっすよぉ」
「てめぇは最後だ。また女壊すだろ」
「そんなぁ」
盗賊たちの会話を他所に、セレスは二射目を構える。
「ただの矢が俺に当たると思うなよ?」
その言葉を聞き流し、呟く。
「【ウインドアロー】」
「だから無駄だっての!」
放たれた矢を弾こうと剣を振るが、その矢は途中で加速して男の左肩を貫く。
「いってえぇぇぇ! てめぇ、何しやがった!?」
「お頭ぁ!!」
「あれ? 当たらないんじゃなかった?」
「クソッ! てめぇ、生きて帰れると思うなよ!?」
三射目を構えるセレス。
「【ウインドアロー】」
今度は凄まじい速度で右肩を貫いた。
「ぐあぁぁぁ」
「お頭ぁ!?」
セレスは魔法陣を編み込んだ手袋をはめている。それには魔法の発動を遅延させる効果が付与できる仕組みになっていた。
これにより矢の速度を任意のタイミングで加速させる事ができるのだ。
「おめぇら! こっちの方が人数は上だ! さっさとやっちまえ!」
その言葉で一斉に襲い掛かろうとした盗賊たちだったが、目の前の状況を見て動きが止まる。
それぞれの馬車を引いていた三人の御者が、それぞれ得物を手にして立ち塞がっていたからだ。
「どっちの人数が上かな?」
「数えられないんでしょ、盗賊に落ちるくらいだから」
「……お前、容赦ねぇな」
ネリアの毒舌に思わず失笑しそうになるが、何とか堪えて槍を構えるオリクト。
「一人も逃がさねぇからな?」
規模の大きな商会は自前の護衛団を抱えている事がある。
彼らがそれに該当し、盗賊団を捕まえるための罠を張っていたのだ。
冒険者を雇った商人を装うことで、盗賊たちは相手の人数を見誤った。しかし気付いた所で後の祭りである。
「ひっ捕らえろー!」
「お、お頭ぁ!」
「情けねえ声出してんじゃねえ! さっさと応戦しろ!」
「へぃ! お頭ぁ!」
抵抗虚しくあっさりと捕らえられた盗賊団は、そのまま連行され憲兵に突き出される事になったのであった。




