49話 それから先の物語
「完成したぞ!」
宿屋でまったりしていると、息を切らしたエリクトルが入ってきた。
「今度の転生魔法は完璧だ。これで問題なく目的を果たせるだろう」
そう、彼らにとっては念願だ。それが遂に完成したのだ。
「じゃあ、行くとするか」
エリクトルは平屋を間借りしている。
そして勝手に地下室を作り、そこで研究をしている。
「相変わらずジメジメしてるよなあ」
俺は風魔法で空気の入れ替えをした。
(フレッドは器用だよな)
「そうか? 気圧を変えて空気の流れを作るだけだぞ?」
(俺はそういう細かいことは苦手みたいだ)
これはリョウヤの心の声だ。この部屋の中なら念話ができる仕組みになっている。
なんでも四つの壁面に描かれた魔法陣が、それを可能にしているんだとか。魔法ってすげえよな。理論とかは俺にはさっぱりだったけど。
「それはそうと、お前の身体なんだからリョウヤが動かせよ」
「そう……だな。そうする」
(ところでエリク、もう発動しているとは言いませんよね)
(今度こそ大丈夫だ)
一体何をやらかしたんだ。
「フレッド。俺は元の世界に帰ることにした。この転生魔法ならそれが可能だ」
「そうか。寂しくなるな」
元の世界の話は色々したけど、この世界で一緒に行動したとかはあんまり無かったんだよな。リョウヤはエリクトルの研究に付き合ってずっと引き籠ってたわけだし。
話してるとたまに『気が散る』ってエリクトルが怒り出してたな。
「この世界は俺にはあまり良い想い出がないからな。お前はどうなんだ?」
「俺は……まあ辛い事もあったけど、元の世界のことはリョウヤほど覚えてないしな。それに……」
「それに?」
「子供が産まれるんだ」
「そうか。それなら戻れないな」
俺はこの世界で生きていくと決めていた。だから今日でみんなとはお別れだ。
「ジェリカ。今まで助けてくれてありがとう。感謝してもし足りない」
(気にしなくていい。私は私のやりたいようにしただけだ)
「それでも感謝だ。今まで支えてくれてありがとう。アンジェリカ」
なんだか気恥ずかしくて今まで呼べなかった。でも、俺はちゃんと前を向いて歩いて行けると伝えたくなった。
(私のアンジェに色目を使うとはいい度胸だな)
「嫉妬しているのか?」
(そこまでにしよう。エリク、早く説明を)
(……そうだな)
魔法陣の上に移動し、置かれた魔法石に魔力を込める。それだけだった。
(後はこちらで処理する。フレッドは戻りたくないなら魔力を込めないように)
「分かった。今度こそ目的が果たせるといいな」
(なに。私たちにはいくらでも時間がある。――永遠の時間が)
(次もエリクが私を見付けてくれる。何も心配することはない)
お熱いことで。
「それじゃフレッド、元気でな」
「お前もな、リョウヤ」
(ではそろそろ行くとしよう)
魔法陣が光を放つ。それに呼応するように魔法石にも光が灯る。とても幻想的な光景に思えた。みんな、さよならだ。
(次は失敗しないでくださいね、エリク――)
最後までご拝読くださり、ありがとうございました。本編はここまでとなりますが、番外編を予定しております。詳細は活動報告にてご確認いただけると助かります。
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