47話 言葉を尽くすということ
フレッドは今、ギルドに併設された酒場でセレスを待っている。ここに居ればその内会えるからだ。
――本心を伝えればいい。
私は、自分には未だできないでいる助言をしてしまったが、フレッドはしっかりと伝えるつもりのようだ。
(よし、行って来る)
セレス達が戻ってきたのを見ると、フレッドはすぐに席を立った。
「セレス。話がある」
「お前何しに――」
「はいはい、エルドはこっちね」
声を荒げて掴みかかろうとするエルドを、ネリアとオリクトがギルドの奥へと引きずって行く。
「急に来てすまない」
「……うん」
「ここじゃなんだし、ちょっと移動するけどいいか?」
コクリと頷くセレス。
エルドがまだ騒いでいるので、フレッドは宿へと移動することにしたようだ。
「座って」
宿に戻ると椅子に座るよう促し、フレッドはベッドに腰掛けた。
「手紙……読ませてもらった。今まですまなかった。どこから話せばいいのか……」
フレッドは語り始めた。村が襲われたこと。その黒幕が帝国に居たこと。そして、私のことも。
セレスはそれを黙って聞いていた。
「だから俺は……怖かったんだと思う。目の前で大切な人の命が奪われるのが」
暫くの沈黙の後、先に口を開いたのはセレスであった。
「そう……なんだね。話してくれてありがとう。でも、命を投げ出すようなことしちゃダメだよ」
「投げ出す?」
「そうだよ。お父さんもお母さんも、フレッドに生きていて欲しかったんだよ。妹さんを守れなかったからといって、誰もフレッドを恨んだりしないよ」
そう、フレッドが悪い訳ではない。懸命に妹を守ろうとしたのだ。
その想いを、誰が咎められるというのか。
「でも、俺は……」
「ジェリカさん……だっけ? 今までフレッドを守ってくれてありがとね」
「セレス……?」
「折角ジェリカさんに助けてもらったんだから、フレッドは幸せになるべきだよ。みんな、フレッドが不幸になるのなんて、望んでないんだよ」
目の前の少女は、私のことも許そうとしているように見えた。
私にも罪はないのだと――そう言っていた。
そうしてセレスはベッドに腰掛け、フレッドの肩に頭を乗せた。
「独りで悩んでるから、そうやって悪く考えちゃうんだよ。全部、独りで抱え込まなくてもいいんだよ。独りじゃどうしようもない時は、周りを頼らなきゃ」
「そう……なのか」
「そうだよ」
それ以上、二人の間に会話はなかった。
私もフレッドには生きていて欲しかった。そう、強く願ったのだ。
特別な言葉など不要であった。
思いの丈をぶつける少女の姿を見て、そう思わされた。
私は言葉を選びすぎるきらいがある。そのせいで言葉に詰まる。
私も変わらなければならない。この少女のように――。




