45話 追根究底
時は少し遡りコルディアの街にて。
エリクトルは今、帝都から持ち帰った資料を精査している。
転生魔法を使ってから約十七年。その間で魔法は随分と進化したものだと関心しきりであった。
新たな理論を理解し応用することで、自身の目的へと大きく前進することだろう。
そして魔法石という代物。
魔力で描いた魔法陣を魔力石に記憶させ、定着させることにより創りだされる魔道具だ。
エリクトルが虚空に描いてみせたものに近いが、魔力石に込める方が圧倒的に難易度は低い。描いた端から定着させていくだけだからである。
何に応用するかは追々考えるとして、まずはクリスティアが描いた魔法陣の解析から始めることにした。
一部、エリクトルが描いた転生の魔法陣を流用している。
そこに魅了と召喚の概念、そして、初めて目にする紋様が描かれている。
恐らくこの部分がリョウヤの魅了を強くしていたのだとエリクトルは推察する。
とは言えこの部分は後回しでいい。リョウヤに掛けられた魅了は既に解けているのだから。
まずは自身の転生の魔法陣と比較し、どのような因果で転生が失敗に終わったのかを理解するのが先決だ。
リョウヤやフレッドを巻き込んだまま目的を果たす事はできない。こちらの世界の都合は、こちらの人間で解決するべきである。
リョウヤがクリスティアによって召喚されたように、フレッドも恐らくエリクトルの転生魔法の影響でこちらの世界に魂だけ召喚してしまったのだと見ている。
何が間違っていたのか、それを突き止める事で解決の糸口は見えてくるだろう。
そしてエリクトルは一つ、伝えるべきなのか迷っている事があった。
それはクリスティアは死んでいないだろうという事。リョウヤが首をはねたその身体には、魂が入っていなかったのだ。
精巧に作られた人形。人と見分けがつかぬほどの出来栄えであった。エリクトルでなければ気付けなかったであろう。
あれからリョウヤは少しだけ反応を示すようになった。
人を殺めてしまった事を悔いているようであった。ならば伝えた方が良いのではないかと考えたが、また怒りを再燃させる事にもなり兼ねないと、エリクトルは判断しかねていた。
今はエリクトルが身体の主導権を得ている。しかしそれはリョウヤが主導権を放棄しているだけで、リョウヤがその気になればエリクトルに抗う術はない。
人の心は複雑だ。
殺したい程の憎い相手であっても、良心の呵責に苛まれるリョウヤの心根は優しいのだろう。そんな彼でも一時の感情に流されて過ちを犯してしまうのだ。
魔法の修練ばかりに打ち込んできたエリクトルには、この状況を打破する術を持ち合わせてはいない。
それでも一つの答えを探して思案する。
言葉を飾るのが苦手なエリクトルは、行動で示すことにした。
リョウヤに希望を見せるのだと。
呪われたエリクトルが魔法に希望を見出したように、リョウヤにもそれを示すのだと――。
フレッドがアゼリアブルグへ行くと伝えに部屋を訪ねてきた。
コルディアよりも情報が集まるアゼリアブルグならば、エリクトルの研究もより進展を見せることだろう。
フレッド達に同行してアゼリアブルグへと向かうことにした。




