44話 ハロルド・アゼリア再び
俺は今、かなり豪華な屋敷の、これまたかなり豪華な部屋に居る。本当にどうしてこうなった。
「失礼するよ」
ノックの後、やっぱり貴族です! と言わんばかりのアゼリア侯爵が入ってきた。本当になぜこんな事になってしまったのか。
「また呼び付けてしまって悪いね」
「いえ……大丈夫です」
「楽にしてくれて構わないよ」
今度こそ本当に心当たりないんだけど。
帝国に潜入したこと? でもそれで咎められる謂れはないよね?
促されるまま席に着く。床に正座した方がいい? 土下座しなくて大丈夫?
「知っているかい?」
え? なになに? 俺、何もやってないよね?
「王国北東の一部地域で猛吹雪があったそうじゃないか」
「はぁ」
……え? あ、そうか。あの時のフロストドラゴンか。もしかして俺ってバレてるの? なんで?
「大きなドラゴンが飛行している姿も目撃されていてね。その場所にフロストドラゴンの死骸と一緒に、こんな物が落ちていたんだ」
「はぁ」
アゼリア侯爵が合図を出すと、見覚えのある鞄を兵士が持ってきた。
いや、どう見ても俺のじゃん。なんで俺のだってバレてるの?
「君の物で間違いないね? あぁ、例の商人ならこちらで処罰しておいたから安心してくれたまえ」
安心ってなんだ? 怖いんだけど。
「俺の……だと思います」
「君には二度も助けられたようだね。前回と合わせて褒美を与えなきゃと思ってね、こんな物を用意したんだ。受け取ってもらえるかな?」
アゼリア侯爵が合図を出すと、預けていない剣を持ってきた。
「名匠シャルマーニによる一品。名をジョワユーズという」
俺の使っている剣と似た形状で少しだけ長いのかな、といった具合。鍔の部分には宝石が埋め込まれていた。
「それには魔法石が埋め込まれていてね。使用者の魔力を増幅してくれる魔法陣が組み込まれているんだ」
「これは……凄いですね」
これが手に馴染むという感覚なのか。
魔法石のおかげなのか、込めた魔力以上の強化がされているだけではなく、その流れもスムーズで扱いやすい。
(フレッド、これほどの品は私も初めて見る)
(だよな、ヤバいよな)
俺の語彙力じゃ説明しきれない。マジヤバい。貰ってしまっても?
「気に入ってくれたようで何よりだよ」
「ありがとうございます」
「なに、心ばかりの礼だよ。気にすることはない」
凄い剣を貰ってしまった。しかも見返りを要求してこない。
実はこの人、いい人だったりする?




