40話 大森林横断
アンジェと共に帝国に潜入することになった。
私たちの都合にフレッドという少年を巻き込む事になるのには躊躇われたが、どうやら彼にものっぴきならない事情があった。
今はアリストア大森林の中を東に向かって進んでいる。
「そろそろ休憩にしよう」
私は魔法陣を描き、その上に魔力を込めた小さな魔力石を置いた。
「それは?」
「今から隠ぺい魔法を使う。モンスターはおろか、人でさえもこの場所を見付けることはできなくなる」
「へぇ」
少年の事情は理解した。それは恐らくラミレス家によるファンブル王国に対する工作で、それに巻き込まれてしまったという事だ。
他にも様々な策略で国力を削ろうと企てていたのであろう。
直接的に民衆を狙うその行いは、もはや暴挙と言わざるを得ない。やはり帝国は世界にとって害悪だ。もう皇帝だけの問題ではない。
「今の内に腹を満たしておこう」
「火を使っても大丈夫なのか?」
「問題ない。この中での出来事は認識すらできなくなる」
そして私たちの目的は帝国の暴挙を止めること。
その手段はまだ模索中ではあるが、クリスティアが描いた魔法陣を理解することで、私の見識は大いに広がることだろう。
「どれくらいで帝国に着くんだ?」
「急げば二日ほどだろうが、あまり体力を浪費するべきではない」
何が起こるか分からないのだ。
騎士団長階級の者と相対すれば、こちらも無傷では済まない。
特に第一騎士団長ファラン・フォルトナーと遭遇すれば、私たちに成す術はないだろう。
各状況を設定し、事前に取り決めておく必要がある。
休憩の度に議論を繰り返し、何度も確認することが肝要である。
最悪の場合、目的を果たす前に逃走することも視野に入れるべきであろう。
「そろそろ行こう」
「少し待て」
私は新たな魔法陣を描き、魔法を発動させる。
「それは?」
「これは広域探知魔法だ。安全な道筋を選ぶときの指標になってくれる」
探知魔法の広域化だ。森の深い場所では変異種の出現率が高くなる。それを避けるための最良な手段である。
尤も、魂の形を認識できる私にだけ許された事なのかもしれない。
「では行こう」
出発の準備を整え、私たちは帝国への道のりを進んだ。




