39話 再会
三週間が経ち、剣を受け取った。完璧と言っていいほどの仕上がりだった。
見た目だけではなく、手に馴染む感覚がいつも通りと言えばいいのか。予備で買った剣とは違い、魔力での強化がスムーズに行える。
使い慣れた武器というのはそれだけで頼もしい存在だ。買ったばかりの武器だとこうはいかない。
剣の出来栄えに上機嫌になった俺は、そのまま図書館でも寄ろうかと向かっている途中、知らない男に声を掛けられた。
「あ……ア……」
何こいつ怖いんだけど。なんかちょっと泣いてない? 頭大丈夫?
「アンジェ……」
(フレッド、代わってくれないか)
こいつがジェリカの言ってたエリクトルってやつか。無事、同じ時代に産まれてたんだな。
「久しぶりですね、エリク」
「アンジェ……すまなかった」
「ちゃんと見付けてくれましたね」
ジェリカの様子がいつもと違うな? これが恋する乙女ってやつか。見た目は完全に……いや、やめておこう。それよりも……。
(こんな所で立ち話もなんだし、宿屋に戻るか?)
(そう……だな)
こんな場所で泣きながら抱き着かれでもしたらたまらん。いや、密室だったらいいのかと聞かれれば、それも違うけど。
宿屋でこれまでの出来事を語り合った。
転生したら俺の中に居たこと。帝国のこと。そして、リョウヤという人物のこと。
エリクトルの話を聞いていると、俺も帝国のやり口は気に食わないと思った。
そんな時、少し気になる話題になった。アリストア大森林でダイアウルフを狩ったという話。
「あのような場所にダイアウルフが居たのは、恐らくラミレス家の策略であろう」
俺はずっと引っ掛かっていた。なぜスタンピードが起こったのか。モンスターの異常繁殖程度では起こり得ないはずの規模だった。
アリストア大森林には強いモンスターは居ないと聞いている。奥地まで行くと俺には解らないが、実際、浅い場所では全く見かけない。
ダイアウルフは強い部類のモンスターだ。それが森に放たれ、それによって連鎖的にスタンピードが引き起こされたのがラミレス家の策略だと言うのなら、俺は確かめなければならない。
(フレッド)
(……大丈夫。俺は冷静だ)
まだ確定した訳じゃない。それでもだんだんと怒りが込み上げていたようだ。
まずは冷静にならないとな。
「エリクトル。アリストア大森林の中を通って帝国に行くことはできるか?」
「可能だ。私もクリスティアが描いた魔法陣は確認しておきたい」
決まりだ。
アゼリアブルグで大森林を抜けるために必要な材料を買い漁り、食料などは森から近いコルディアの街で買い揃えることになった。
コルディアで食料を買った後、セレスと出くわした。
「フレッド! いきなり居なくなるからビックリしたじゃん! 荷物が多いみたいだけど、今度はどこ行くの?」
なぜこんなに突っ掛かってくるのか。
「帝国」
どこで何しようが俺の勝手だ。
「まだ危ないよ! 戦争終わってからにしなよ」
何も知らないくせに。
「……お前に何が分かる」
お前に俺を引き留める権利はない。
「……え?」
そうだ、お前が俺の何を知っていると言うんだ。
「お前に何が分かる!!」
気付けば怒鳴り声を上げていた。
冷静になったつもりだった。感情を上手くコントロールできていると思っていた。
でもそれは冷静なフリをして、感情に蓋をしていただけだった。
「……わかんないよ」
「だったら――」
「だって!……だって、なんにも教えてくれないじゃん……」
セレスを見ると、必死に涙を堪えているように見えた。
違う、俺はこんなことが言いたかった訳じゃない。
でも、今は――
「すまない」
それだけ呟くと俺は泣き崩れるセレスを背にコルディアの街を出た。




