38話 自己研鑽
フレッドはあれから毎日図書館に通っている。
様々な書物を読み漁り、宿に戻ると瞑想する繰り返しの日々。
あまり根を詰めないようにして欲しいものだが、彼にも思う所があるのだろう。
必死に努力する彼に、水を差すような事はできなかった。
それにこれほどの書物があれば、フレッドに合うものが見付かるはずだ。
(イエティモンキーの生態は関係ないのではないか)
(そうだよな、これは違うよな)
あらぬ方向へと進みそうな彼を窘める程度に留めた。
ファンブル王国の所蔵量には目を見張るものがある。これほど大量の書物が一般公開されていることに、私は驚きを隠せない。
帝国では知識の大半を貴族が独占していた。庶民が手にする書物など、この半分にも満たない。
戦争に明け暮れる帝国は知識を得る機会を民衆から遠ざけ、支配をより強固にする狙いがあったのだろう。王国で暮らすと、帝国の異様さがより鮮明になった。
エリクの言う通り、帝国は良からぬことを考えている。
今まで手を出さなかったファンブル王国を攻めたのは、何かしらの準備が整ったと思っていた方がいいだろう。警戒しておくに越した事はない。
エリクはこの地に転生できたのだろうか。
早く合流して考えを聞かせてもらいたくはあるが、フレッドを巻き込む事にもなってしまう。それについても相談しなければならない。
エリクならば何か解決策を示してくれるのだろうか。
たとえエリクが居なくとも、戦火に見舞われる地にフレッドを放っては置けない。
フレッドだけではなく、私自身も強くなる必要がある。
それにハロルド・アゼリアという男。彼の動向にも注意を払うべきだろう。
悪魔を滅ぼしたとなれば、それは爵位を賜ってもおかしくはない偉業だ。
褒美を与えることで自身の手柄とし、フレッドを飼い殺しにするつもりならば私は容赦しないつもりだ。
今はフレッドの希望を叶えるために私にできる事といえば、剣を教えることくらいだろう。
しかし身体も大きくなっていくフレッドに、このまま私の剣術を教えても良いのだろうか。
女である私の剣は、男性ではほとんど見られない受け身の剣。それに細剣を使うのも、身が軽い女性ならではのものだ。
身体の大きな男性であれば取れる選択肢は多い。その長所を捨ててまで私の剣術に拘る必要はないのではないか。
フレッドの身体なのだから、これは私自身にも言える。
時間が許されるのなら、剣術の指南書も探した方がいいだろう。
次回から新章に移ります。ブクマや評価、感想など頂ければ幸いです。




