37話 暗中模索
私は今、アゼリアブルグという街の図書館に来ている。理由は帝国について調べるためだ。
初めて目にした悪魔の魂は、皇帝陛下と同じであった。ならば陛下も悪魔なのではないのか。それを確かめるのも目的の一つだ。
なぜ人と同じ姿をしているのか、なぜ人を乗っ取ることができるのか。それらはまだ解らないが、悪魔に支配され続けている国で調べるのは得策ではない。
ならばこの大陸で最も広大な領土を誇るファンブル王国へと赴くのは当然の結果である。
悪魔の記述については王国の方が詳細に記されていたが、有益な情報は得られなかった。帝国のものと比べても、それほどの違いは見受けられなかったからだ。
しかし、帝国の歴史については差異が見られた。
覇権主義を唱える帝国の過程についてはそれほどの差はない。しかし、国の興りが全く異なっていた。
五百年ほど前、一体の悪魔が大陸で暴虐の限りを尽くした。それを討伐した三英雄の一人"フィル"という少年が、当時の帝国から爵位と領地を授かる。そして領民を巻き込んで反旗を翻し、帝国を乗っ取ったのが始まりであった。
様々な資料に目を通した結果、ここまでは調べることができた。
そのフィルという少年が悪魔に呪われたのだろうか。しかし、悪魔に呪われたという事例は発見できなかった。
それまでの帝国は周辺国と友好的な関係を築いていたが、フィルという少年が皇帝に成り代わると断絶した。
あくまで予想ではあるが、国として大陸を我が物にしようと企んでいるのではないか。私にはそうとしか思えなかった。
他の街や国の資料と比較したくはあるが、私にはアンジェを探すという使命もある。
まだこの地で調べることはあるので、アンジェを探しながらゆっくりと調べるつもりだ。
そう、アンジェは近くに居る。焦る必要はない。
(リョウヤ)
そしてもう一つの懸念がリョウヤである。
悪魔が滅んだことは確かだ。それにより増幅された悪感情は消失したものと思われる。しかしリョウヤはあれから反応を示さなくなった。
リョウヤを縛る枷を取り除くことには成功した。しかしそれがどの様な結果を招くのか、私には予想することができなかった。
いや、違うな。
私は自身の理論が正しいと証明したい一心で、その先の思考を放棄したのだ。
私はまた失敗してしまったという事である。
心とは難しいものだ。
魂の形がそれぞれで異なるように、心もまた百人百様である。
私にリョウヤの心を推し量ることなどできはしないであろう。しかし私が犯した過ちは、私自身の手で払拭しなければならない。
私はリョウヤの心を取り戻す術を模索していた――




