36話 侯爵家の領都はデカい
俺は紹介状を持ってアゼリアブルグにあるという修理屋に来ている。
コルディアを昼過ぎに出発しても夕方には到着した。それほど近かった。
アゼリアブルグは侯爵家の領都だけあって、かなり広い。
簡単な地図はもらってたんだが、迷子になったせいで一日を無駄にしたのは秘密だ。
「侯爵様の紹介なら仕方ねぇな。優先的に修理してやる。見せてみな」
「頼む」
そう言って剣を渡した。
「こいつぁひでぇな。新しいやつ買った方がはえぇだろ。まぁいい、大事な物なんだろ?」
「あぁ、頼む」
「三週間ほど時間くれや。バッチリ直してやっからよ」
どうやら直せるみたいで良かった。
なんでも他人が魔力を込めて打った物を修理するのは難しいらしく、込められた魔力の質を見極めることから始めないといけないようだ。
それを怠ったまま修理すると、使用感が変わってしまうらしい。
鍛冶師ではなく修理屋と呼ぶのも納得の職人技だ。
それにしても三週間か。
修理代は侯爵が出してくれるみたいでお金も余ったし、自己研鑽の時間に充てようかな。
(ジェリカは魔力の訓練する時どうしてるんだ?)
(魔力の感じ方は人それぞれだ。こればかりは自分で掴むしかない)
(そうなのか。なら瞑想するしかないってことか)
(それぞれではあるが、似たような感じ方の人も居る。書物を漁れば何か手掛かりになるのではないか?)
(確かに。なら図書館にでも通うか)
そうして図書館に来た訳だが……。
デカい。さすが侯爵家の領都。これ、三週間で足りる?
そして警備が厳重だ。入口では検問もあって持ち物は全部没収された。
中には閲覧規制エリアもあるみたいで、俺は入れてくれなかった。侯爵様にお願いしとけば良かった。
まあこれだけ広いんだ。いくら時間があっても足りないだろうし、見れる場所から見ていこう。
途中、迷子になりかけたが何冊かのそれっぽい本を手に取った。
『これ一冊であなたも魔法使いの仲間入り』
『イエティモンキーでも解る魔力操作!』
『決して読んではいけない究極魔法理論』
なんか俗っぽい本ばかり選んでしまった気がする。まあ堅苦しい本ばかりだと眠くなるから仕方ないよな。
自分にそう言い聞かせつつ書いてある事を試しながら読んでいると、どうやら夕方まで読み耽っていたようだ。
昼食を忘れるくらい集中するとは思わなかったな。そろそろ閉まる時間だし、腹も減ったからまた明日にしよう。
俗っぽい本も読みやすいってメリットがあるから、俺には合っているのかも知れない。
これで活字に慣れてくれば、少しくらい難しい本も読めるようになりそうだしな。
夕食は何にしようかなと考えながら図書館を出た所で溜息をつき、空に向かって呟く。
「もしかしたら俺はイエティモンキーなのかも知れない……」




