35話 ハロルド・アゼリア
俺は今、ちょっと豪華な屋敷の、これまたちょっと豪華な部屋に居る。どうしてこうなった。
「失礼するよ」
ノックの後、どこからどう見ても貴族です! と言わんばかりの豪華な服を着飾った人が入ってきた。なぜこんな事になってしまったのか。
「私はハロルド・アゼリア。侯爵位を賜っている」
「あ、フレッドです」
「あぁ、緊張しなくていい。楽にしてくれたまえ」
名前を告げて会釈するので精一杯だった。挨拶の仕方なんて知らないぞ。
促されるまま席に着く。侯爵の後ろには軍師っぽい付き人。いや、秘書官か? わからん。
「聞いたよ」
え? なになに? 俺、そんなまずいことした?
「大活躍だったそうじゃないか」
「はぁ」
……え? あ、そうか。俺は悪魔を退治したって事になってたんだ。なんだ、それなら先に言ってくれよ。実感ないから何事かと思った。
「悪魔というのはね、人の恐怖や絶望を糧にして成長する。だから生まれたらすぐに滅ぼす必要があるんだ。君の活躍無くしては成し得なかっただろうね」
「はぁ」
どうやら褒められているようだ。
どうやって倒したとか訊かれても俺は答えられないぞ。君の力を確かめたいとか言い出さないよね?
俺の心配をよそに、上機嫌なアゼリア侯爵は続ける。
「君には褒美を与えなければ侯爵家の名が廃るというもの。何か希望はあるかい?」
「褒美……ですか」
急に言われてもなあ。すぐに思い付くのはお金くらいか。師匠的な人を紹介してもらうのも一つの手か?
……いや、これはチャンスかも知れない。
侯爵家の人脈ならもしかすると……。
「それなら優秀な鍛冶屋を紹介してもらいたいです」
「ふむ。君に合った優秀な武器が欲しいと言うことかい?」
「いえ……。武器を修理して欲しいんです」
「なるほどね。見せてくれるかい?」
「はい。あ、兵士の人が……」
「すまない、そうだったね」
アゼリア侯爵が合図を出すと、預けていた剣を兵士が持ってきた。
「悪魔との戦いは相当に激しいものだったようだね」
「いえ、それは……」
悪魔と戦った時の剣は折れてたから宿屋に置いてきました、それは別件です。
「では、私が知る限りの優れた人物を紹介しよう」
「鍛冶屋の人が言うには、創った人にしか直せないだろうって……」
これを修理となれば作り変える、つまりは別の剣になるって事らしい。
「勘違いしてはいけないよ。私が紹介するのは鍛冶師ではなく、修理屋だよ」




