33話 魔力を使いすぎると気絶するらしい
人は魔力を消耗しすぎると倒れるのである。そう、俺のように。
倦怠感から始まり運動能力の低下、最後には気絶である。俺のように。
魔力で身体能力を強化しているのに、身体が動かなくなってしまったら本末転倒だ。
でも今回の場合、倦怠感も運動能力の低下も俺には気付けなかった。身体を動かしていたのはジェリカたから。なので急に意識を失った、という結論に至った。
そして魔力の総量は成長期を過ぎると増えない。体の成長期ではなく魂の成長期だ。
ならばどうするか。魔力の理解を深めると効率が良くなり効果も上がる。……全部ジェリカの受け売りだ。
俺は武器の強化にしか魔力を使ってないのにジェリカよりも先に気絶した。これは由々しき事態である。
なので今、魔力の理解を深めるべく瞑想みたいなことをしている。
筋肉痛で動けないから暇を持て余しているわけではない。
「フレッドー、起きてるー?」
セレスである。
昨日から俺はセレスに介護されていた。
動こうと思えば動けるけど、やっぱり痛いから甘えてしまっている。今は夕食を持ってきてもらったところだ。
毎回、美味しいかどうかを訊かれ、頷くとホッとしたような、少し嬉しそうな顔をする。
これってやっぱりあれだよな。セレスが作ってるってことだよな。俺はそこまで鈍感じゃない。だから分かるんだ。
食べ終わった食器を持ってセレスが廊下に出た時、誰かと出くわしたようで話し声が聞こえてきた。
「もうあんな奴ほっとけ」
「……なんで?」
「なんでってお前――」
「今さら兄貴面したって、もう遅いですよーだ」
兄貴……だと? 確かに二人とも赤髪だ。いや、しかし……。
エルドよ。だからいつも不機嫌だったのか。さっさと妹離れしろ。そんなだから妹に邪険にされるんだ。
……もしかしたら俺は鈍感なのかも知れない。
こんな時は瞑想だな。うん、それがいい。
(ジェリカ、居るか?)
やっぱり反応はない。いつ目を覚ますのだろうか。
大森林を突っ切るにしても、まずは相談したいんだけどな。
浅い場所を通って帝国兵に見付かったら面倒くさい。かといって深い場所だと迷子になる自信しかない。詰みである。
俺がもっと強ければこんな事にはならなかった。ジェリカには助けてもらってばかりだ。
せめてジェリカの足手纏いにならないように、魔力の理解を深めないとな。
身体の中に意識を向けると、自分の魂だけでなくジェリカの魂もあるのが判る。
いつもより弱々しい光だが、それでもジェリカはここに居る。何も心配することはない。
ジェリカが戻って来るまで俺は鍛錬を続けた。




