31話 魂の形
私は幼少の頃、病気がちな兄を看取った。
その時、兄の身体から何かが大気中に霧散していくのが見えた。そのことを母に伝えても小首をかしげるばかり。
この世のすべての生物には魂がある。
私は産まれた時からそれが見えるのが普通だと思っていた。
しかし、そうではなかった。
他の人には見ることのできない魂の姿が、私には見えているのだと気付く。
私は自分にしか見えないものに興味を抱いた。
よくよく観察してみると、人の魂はそれぞれで形が異なっていた。
身体の成長と共に変化していき、それは大きくなるほど緩やかになっていく。
しかし私自身の魂は他と違い、なぜか初めから強く輝いているように見えた。
ある時、変異種と呼ばれるモンスターと遭遇した。同じ種族と比べても、その魂は大きく異なっていた。
私の魂と同じように――。
そうして気付く。私は人の変異種なのだと。産まれた時から魂が見えるのもそのせいであった。そして、私には時間が残されていないことにも。
十八の時、私は宮廷魔導士の末席に加えられた。
任命式の日、私は初めて皇帝陛下を目にした。そして、初めて見るその魂の姿に戦慄した。
どす黒く、大きな塊。それはまるで深淵を覗いているかのようであった。
式典の途中、私の中に何かが入ってきた。陛下の持つ、黒い魂の一部が――。
私は呪われた。この黒い塊の姿だけは、どうしても見通す事ができなかった。
国に仕えて暫くすると、私と同じように呪われた者が複数人散見された。
どうやら能力の高い者ほど呪われる傾向にあるようだ。皇太子も例外ではない。
そして陛下が崩御された時、その黒い魂も例にもれず霧散した。しかし、今度は皇太子殿下の魂が、陛下と同じようなものに変異したのだ。
私は理解した。これは印を付けた相手を乗っ取ることができるのだと。
その証拠に、殿下はその日を境に変わってしまわれた。
私はより一層、魔法の修練に励んだ。
変異種である私は、これまでも必死にやってきたつもりであった。
そのおかげで私を蝕む病の進行もある程度は緩和されていたようだが、より一層励むことで完全に停止した。
そして二十五の時、私は一つの仮説を立てた。
呪われた者が死ぬと、魂と一緒に黒い塊も霧散する。
ならば魂だけを霧散しないよう保護すれば、黒い塊だけを霧散させる事ができるのではないだろうか。
そして新たな器に入り、その魂と交わることで転生を果たせば開放されるのだと。
私は愛するアンジェリカを伴い姿を消した。
なぜなら彼女もまた、呪われているのだから――。




