30話 描かれた魔法陣の行方は
解析は完了した。
後はどうやって解除するかだが、魔法陣の力がないと難しい。
魔法とは想像力の産物である。
より強く、よりはっきりと細部までイメージすることで魔法の効果が増大する。
そして、それを大きく補助してくれるものが魔法陣なのだ。
魔力を込めながら時間をかけて描いた魔法陣は、とても大きな手助けとなってくれる。
しかし、今の私には魔法陣を描くための身体がない。
ならばどうするか。私はまた、とんでもないことを考えている。
想像という魔法の力で、魔法陣を描こうという結論に至った。
初めての試みであった。だが、やってみる価値はある。
複雑な構成の魔法陣を想像で描くのだ。それにはどれ程の集中力を要するのか。
ほんの一瞬でも集中を乱せば、魔法陣は即座に瓦解するであろう。
それでも私は試してみたかった。魔法という深淵を覗いてみたくなった。
私は深淵を覗き見ることに没頭した。
魔法陣が完成し、発動させる。
虚空に描かれた魔法陣は、リョウヤの魅了を完全に取り払った。
私は自身の理論の成果に大変満足していた。リョウヤの異変に気付いたのはその時だ。
リョウヤから漏れ出た何かが上空で一つの形を作る。
二本の角。紫の肌。黒い瘴気に包まれた、人の形をした人ではないもの。
私はそれを知っていた。
人の負の感情を糧にしてこの世に顕現する悪魔と呼ばれるもの。莫大な魔力が必要とされるため、出現することは滅多にないはずだった。
私の魔力に反応したのか……。
今のリョウヤは正気ではない。悪魔の囁きによって、負の感情を増大させられている。
悪魔を狩れば正気に戻るだろうが、今の私は魔力を消耗しすぎていた。
あれを放置しておくには危険すぎる。そう思っていた時――。
まるで空を走るようにして駆けていく少年の姿があった。
アンジェ以外にもあんな芸当ができる人物が居たのか。そう思い、彼をよく観察すると……。
この私が見紛うはずがない。あの魂の姿はアンジェリカそのものではないか。
やっと巡り合えた。こんな形になってしまったが、ようやく私は彼女を見付けたのだ。
勇敢に戦うその気高き魂。私の唯一、愛する女性。それが目の前に居る。
「殺す殺すころす殺すコロスコロス殺す」
リョウヤが走り出す。アンジェから遠ざかっていく。
(アンジェリカ――)
今の私にはなんと遠い。
すぐそこに居るはずなのに、私にはどうすることもできないのか。
やがて全ての魔力を使い果たしたリョウヤは、アリストア大森林の中で気絶した。
そして私の意識が表層に浮かんだ事で魂が完全に繋がり、身体の主導権を手に入れたのだが……。
「もうこれ以上は動けん」
身体も魔力も極度に消耗して一歩も動けなくなっていた。




