28話 緊急事態
ベルンに到着し、俺はさっそく武器屋に入った。
「修理を頼む」
「この剣……もしかしてお前さん、あんときのガキか?」
「覚えているのか?」
「あんなガキがいっちょ前にいいもん買ってったからな。よう覚えとるわ」
お前が奨めてきたんだろと言いたくなったが、グッと堪えた。
「それで代金はどれくらいだ?」
「あ~無理じゃ無理。そいつは俺には修理できねぇ」
「あんたがマグラスじゃないのか?」
刀身には製作者の名前が刻まれている。だから俺はてっきりこの男がマグラスだと思っていた。
「そいつはヴォルクス帝国から流れてきた品だ。修理してぇなら向こうで探してくるんだな」
どうやら無駄足になってしまった。仕方ない、すぐに引き返すか。
食料などを買い込み、俺はそのままベルンを後にした。
街や村などを経由しそのまま真っ直ぐアゼリア領まで向かったのだが、アゼリア領に入って最初の街の様子がおかしいことに気付く。
ギルドに寄って話を聞いてみると、どうやら帝国が攻めてきているらしい。
帝国までの道は一本。アリストア大森林の中を突っ切るって手もあるが……。
少し悩んだが、とりあえずは国境の関所まで様子を見に行くことにした。
護衛という名目で商人の馬車に同行させてもらい、御者に話を聞かせてもらった。
どうやら帝国の奇襲を受け、関所の砦は既に占領されているらしい。
今は近くにあるいくつかの小さな砦の周りに陣地を築き、膠着状態にあるということだった。
こんな状態だと戦争が終わるまでは通れない。終わったとしても帝国の関所を通る事ができない。
これは本格的に大森林を突っ切るしかないのかなと考えていると、遠くから歩いてくる一人の男が目に入った。
警戒して様子を窺っていると、その男の周囲を光が照らした。
警戒を強めていると、今度は黒い何かが男の上空で一つの形になっていった。
(まずい、あれは……悪魔だ)
(悪魔……?)
(そうだ。初めて目にするが、古より伝えられている姿そのもの。放置しておくと取り返しが付かなくなる)
「おっちゃん! 今すぐ援軍を呼んできてくれ!」
「あんたはどうするんだ?」
「俺はここで食い止める! だから早く行ってくれ!」
「分かった。死ぬんじゃないぞ」
フラグにも聞こえる会話だったが、さて、どうするか。
(作戦は?)
(前回と一緒だ)
(了解。他に何かあったら言ってくれ)
(いや、恐らく今回は長期戦になる。魔力の消耗は抑えてくれ)
意識の表層をジェリカに明け渡す。
そうして"俺達"は空を駆けた――。




