26話 魂を込めるということ
「これはなかなかにいい品だな。だがこの状態の剣を修理するとなれば……創ったやつに頼むのが手っ取り早い」
ディーグに戻って武器屋を三軒回ったが、すべての店で同じようなことを言われる。この街で一番の鍛冶師の店だと聞いたのにこの有り様だ。
「ここでは無理なのか?」
「武器ってのは職人が魂を込めて創るもんだ。そしてこれは相当な鍛冶師の作品だろうよ。儂にも同じような物は創れても、それを修理するとなればまた話は変わってくる」
難しいことを色々と語られたが、要は直せないってことだ。
直すためにはベルンまで行かなければならない。ここからだと急げば一週間くらいか。
俺は予備の武器を買い、宿屋に戻った。
「はぁ――」
長い溜息をつく。
あれからディーグの街まで戻って来るのにどれだけ大変だったことか。
ここまで夜通し走って帰ってきたのだ。
ベッドに腰掛け、剣を眺める。
刃は所々が欠け、刀身は焦げ付き、剣先にはヒビまで入っている。
ジェリカが剣を突き立てた時、俺は武器に掛けていた強化を解いて全力でコンバッションを放った。それがこの有り様だ。
ジェリカが咄嗟に風魔法で炎の向きを変えてくれていなければ、俺は大火傷を負っていたところだ。
そういった理由で武器が使えないから急いで戻ってきた。
俺もジェリカも遠距離魔法は苦手だ。射出するというイメージがイマイチ掴めないんだよな。だから近付くしかない訳だけど、無手で近距離戦ってのは得策ではない。
ついでに言うと荷物が雪に埋もれて見付からなかった。だから食料もない。ない物尽くしである。
「ベルンか……」
俺は今まで心のどこかで避けていた。
王国の北方で生活しているのも、温かい気候の故郷を思い出さないようにするためだ。
忘れたくても忘れられない。思い出すと気が滅入ってしまう。
そんな時、ジェリカは声をかけてくれる。気遣ってくれる。そんなジェリカの優しさに、俺は救われていた。
こういう時は感謝のプレゼントだ! とは思ったが、それはつまり自分自身に渡すようなものなので保留にしている。
どうせ明日は色々買い直さないといけないし、何かいい物があれば買っておくか。




