21話 停滞
「これが討伐証明です」
「はい、確認させていただきます」
俺は変わり映えのしない日々の中を過ごしていた。
毎日足しげくギルドに通い、討伐依頼を中心に熟している。金が無ければ生活が成り立たない。だから金を稼ぐ手段として、王国北東部に位置するアゼリア領ディーグの街で冒険者生活をしている。
「お待たせしました。報酬は持ち帰られますか?」
「いえ、預かっておいてください」
「かしこまりました」
ギルドは銀行のような役割も果たしてくれる。預けたギルドでしか引き出せない決まりだが、それでも盗難の心配もなく貯金ができるのはありがたい。
「おっ、フレッドじゃーん。今日はなんの依頼してたの?」
今しがた館内に入ってきた集団のうちの一人に声を掛けられた。
とりわけ仲が良いという訳ではないが、見かけるとちょくちょく声を掛けてくる。
「キラーマンティスの討伐」
「危ないやつじゃん! そんなの一人でやっちゃダメなんだぞー」
この世界の生物は魔力を宿して産まれてくる。
その中で稀に、魔力異常を起こした"変異種"と呼ばれる個体が現れることがあるが、それは通常個体よりも強くて凶暴だ。キラーマンティスもそのひとつ。
自身の魔力に耐え切れずに死ぬため、寿命は極めて短い。
なので放置しても問題ないことが多いが、俺はできるだけ狩るようにしている。
「おーい、セレス。早く始めようぜ」
「はーい、今いくー。それじゃフレッド、またね」
ギルド内に併設された酒場にいる仲間に呼ばれ、セレスは走って行った。
「あんなの、ほっときゃいいだろ」
「あー! あんなのとか言っちゃダメなんだよー!」
どうやら酒盛りを始めるらしいが、まあ俺には関係ない。
ギルドを出ていつもの宿屋に戻り、剣の手入れを始めた。
この剣を買ってからもう六年になるが、毎日欠かさず手入れをしている。おかげで新品のような綺麗な状態を維持できていた。
「……」
(フレッド)
「ん?」
(あぁ、ジェリカか。どうした?)
俺は心の中でジェリカと会話ができるようになっていた。戦闘では魔法でサポートしてくれるので、会話ができると連携が取り易くて便利だ。
(いや……)
言い淀むジェリカの次の言葉を待つ。これはたまにある事だからもう慣れている。
(少し、素っ気ないのではないかと思っただけだ)
(そうか?)
俺は剣の手入れを終わらせベッドに横になった。
「それにしてもキラーマンティス。あれは強かったな」
独り言のように呟く。
俺の腕ではまだまだ倒せそうにない。
とにかく硬い。身体強化して、剣の強化もして、その上で相手の攻撃を避けながらってなると、どうしても全部を上手く熟せない。
(ジェリカにサポートしてもらって、やっとだもんなあ)
(フレッドは充分育ってきている。何も心配することはない)
(そうだといいんだけど……)
その言葉を最後に、俺はいつの間にか寝入ってしまっていた。
(本当にこのままでいいのだろうか……。私には――)




