20話 少女の思惑
少女の魔法は不完全だった。
星屑の賢者が使用したとされる魔力石。その残存魔力を辿ることで、使用者を召喚しようと企んだ。
しかし、その目論見は外れた。
少女の唯一の間違いは、賢者の残した魔法陣を理解できていなかった事にある。
その結果、召喚されたのは相田亮哉という、星屑の賢者とは似ても似つかぬ少年であった。
少女は落胆した。そしてその腹いせに、この少年を最大限利用してやろうと考えた。
利用できるのなら良し、そうでなければ実験体として使い倒せばいい。そんな軽いものだった。
まずは戦争にでも駆り出してやればいい。魅了が掛かっているならば、どんな危険な事も進んでやり遂げるであろう。
試しに戦闘訓練を行わせた所、少年はみるみるうちに上達した。
特に魔力操作の技術は素晴らしく、これは良い拾い物をしたものだと少女はほくそ笑んだ。
それからは毎日のように少年の部屋を訪ねた。魅了の効果が落ちていないかを確認するためだ。
しかしそれは杞憂であった。むしろ、より強くなっているように思えた。
魔法陣を使った魅了魔法は初めての試みであったが、予想よりも強力なものに仕上がった。
少女は満足しつつも、注意深く経過を観察した。
ダルカス・フォルマンの弁によれば、すぐにでも使い物になるという。
ならば試験と称して、ダイアウルフの処理を任せることにした。
あの企てには一定の成果があったと報告を受けている。であるならば、もうあれに用は無い。
天敵の居ない広大な森に放置しても、厄介事の種になるばかり。狩ってしまった方が良い。
もちろん少女は民衆の命などに興味はない。穀物の生産量が落ちるのを懸念してのことだ。
民衆はモンスターによる被害には許容的だ。しかし飢饉が起こったとなれば、なぜか国に責任を追及するのだ。
勝手で愚かなものであると、少女は考えている。
それに次の手はもう打ってある。
暗い窓の外に目をやりながら少女は呟く。
「うまく見付けてくれるといいのですが――」
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