表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/55

2話 天国?異世界?

 目が覚めるとそこは……とても柔らかな感触だった。

 何を言っているのか解らないと思うが、俺にも解らない。

 ならば考えるのは野暮というもの。今、この時、この瞬間を大切にしようと思う。




 産まれた当初は何がなんだか解らず、体が思うように動かない、声を出そうとしても奇声を上げる、頭もうまく回らないといった感じで大変だった。首が座ってないという意味ではなく。

 特に最悪なのは、下半身周りの気持ち悪い感触に耐える日々だった。

 いや、なんというか……大人の倫理観としてな? 下の世話くらい、しっかりとして欲しいもんだ。三分間も待てないぞ。


 それでも必死にこの状況を理解し、栄えある異世界生活のスタートダッシュを切るべく考える。

 まずは転生前のことを思い出すところから始める。が、どうも記憶があやふやだ。

 転生前の世界では魔法なんてなかったはずなんだが、確信が持てない。

 それくらい記憶が混濁していた。


 何はともあれ現代知識無双をするためにも、幼児期健忘に打ち勝たなければならない。

 思い出せる知識は全て思い出し、頭の中で何度も復唱する。

 それと並行して言語学習。

 結果的に、言語学習は思ったよりも苦戦しなかった。文法が日本語に似ているから、だろうか。



 幼児期健忘に対して勝利を確信した頃、俺は動き出す。まずは情報収集だ。この世界のことを知らなければならない。

 なので、この世界の両親に色々と疑問を投げかける。


「なんでおとうさんは、あんなにあしがはやいの?」

「なんでおかあさんは、まほうがつかえるの?」


 標準的な三歳児の誕生である。

 色んな事に興味を持ち、なんでなんでと親を困らせるあれだ。我ながら巧く擬態できていると自画自賛したい。

 そんな息子と真摯に向き合い、懇切丁寧に説明する父キースと、母アメリー。この優しい二人の息子で良かったと、心の底からそう思った。



 二人は元冒険者だったため、ファンタジー世界的なことを知りたかった俺にはとても参考になった。

 どういう系統の魔法があるのか。どんなモンスターがこの世界には居るのか。時には訊いてもいない冒険者はつらいよ的なものを、子守唄代わりに聞かされた。

 正直、呪詛かと思った。三歳児に言い聞かせる内容かこれ? 普通なら夜泣きしてるぞ。


 とまあ母との出会いから、冒険者生活での紆余曲折を経て俺を身籠りキースの産まれ故郷へと帰ってきた……という、冒険譚という名の惚気話まで聞かされた。

 親の生々しい話を子供に聞かせるのはNGって教わらなかったのか? キースよ……。


 ちなみにこの惚気話が完結する頃には、俺は四歳になっていた。



 そして知識を蓄えることに躍起になっていた俺は、水面下で進行する"ある事件"に気付くことができないでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ