17話 ラミレス家の闇
私の魔法は失敗した。
意識を取り戻した時、瞬時にそれを理解した。
私が入った器には、既に成熟した魂があったのだ。
どのような因果でこうなってしまったのか。原因の一つはすぐに理解した。
成熟した魂に意識を傾け、語り掛けようとした時だ。
「お初にお目にかかります。わたくしの名はクリスティア・フィル・ラミレス」
目の前の少女はそう答えた。
ラミレス。私の知るラミレスは、大公ロドレフ・フィル・ラミレス家の一族。皇帝に次いで絶大な権力を持つ家の名だ。
その中でもロドレフという男は、宮廷魔導士序列第二位の実力者。私に一位の座を奪われた者である。
狡猾で残忍なロドレフには、少なくない嫌がらせを受けてきた。
新たな皇帝が即位して完全実力主義となり、平民出身の私に思う所はあったのだろうが、それでもラミレス家には黒い噂が絶えない。
そんな男の血縁者が私の前に現れたのだ。
ラミレス家が関与していたとなれば、そこには必ず裏がある。今、私の存在が露見してしまうと、取り返しが付かなくなることだろう。
私は成熟した魂の影に隠れるようにして、ひっそりと様子を観察することにした。
暫くして、リョウヤの魂には枷があることに気付く。そしてそれは、クリスティア・フィル・ラミレスの魂へと繋がっていることにも。
クリスティアに対するリョウヤの言動には違和感を覚えていた。その正体を確かめるべく、私は注意深くその枷を観察した。
これは魅了の類であろう。
恐らく、召喚の魔法陣に何かしらの細工を施したのだろうが、魔法陣を見てみないことには詳細までは解らなかった。
リョウヤに助力を仰ぐことも考えたが、なかなか独りにならない。リョウヤは気付いていないだろうが、彼は常に監視されていた。
やはりラミレス家は油断ならない。
本来であれば、この私を召喚しようとしたのであろう。そして魅了で私の意思を奪い、自由に操るつもりであったと推察できる。
何の因果か、その枷は私ではなくリョウヤを縛り付けることになった。
私は機会を窺った。リョウヤが独りになるその時を――。
好機はすぐにやってきた。
アリストア大森林に、ダイアウルフの討伐へと赴くことになったのだ。
帝国と王国を分断するその大森林はとても深い。それでも監視が付くことも考えられるが、撒くことは容易であろう。
浮かれて走り出したリョウヤに私は補助魔法を掛ける。調子がいいと感じたであろうリョウヤは更に速度を上げた。
監視の目も届かなくなったところで、私はリョウヤに語り掛けた。




