15話 野営と魔道具
ある日の朝、目が覚めると熱い男が立っていた。
叩き起こそうとした訳でもなく、ただそこに立っていた。
「……」
「おはようリョウヤ! 今日からゼルイドの森に行くぞ!」
朝から色々とキツイ。言いたいことはいっぱいあるけどお前なんで居んの? なんで起きるまで待ってんの? 声くらいかけろよ逆にこえーわ!
「……なんで?」
「世界は広い! だから行くのである!」
何言ってんだこいつ。……あれ? もしかして今日からって言った?
「今日からって?」
「その通り! 二泊三日で野営の練習である!」
ちょっとコンビニ行ってくるみたいな軽いノリでキャンプに誘うな。何が悲しくておっさんと一夜を共にしないといけないんだ。
でも確かに練習は必要だ。納得はできないけど納得してやる。
「もう準備はできている! さあ行くぞ!」
「そういえば帝都の外に出るのは初めてだったな!」
「あぁ」
「では迷子になるんじゃないぞ!」
「迷子?」
帝都の門をくぐって外に出た時にそんなことを言われた。
こいつの言ってることは正直よくわからん。いつも説明が短すぎる。そう思っていると――
いきなり走り出した。
「ちょ、待てよおっさん! って早すぎだろ!」
迷子ってこれかよ。
もうおっさんほっといて帰ろうかと思ったけど追いかけることにした。
「やっと着いたのである! リョウヤは足が遅いな!」
いやお前、さすがに休憩なしでこのペースはおかしいだろ。
「先に言っておくと吾輩は何もしない! リョウヤ一人の力でなんとかするのである!」
「は? 寝る時どうすんの? 木の上で寝るの?」
「この森にはイエティモンキーが生息しているのである! 木の上は安全ではないぞ!」
交代で見張って寝ないとおっさんもヤバいだろ! もしかして俺一人で野営するってことか?
「なのでこれを渡しておく! これは索敵珠といって周囲の魔力量の変化に反応して振動する魔道具である!」
つまりモンスターが近付いたら知らせてくれるのか。これで起きられるかは分からないけど便利だな。
俺はそれをズボンのポケットに忍ばせた。
森の中に入るとすぐに索敵珠が震えた。距離が近いと振動が強くなるみたいで、気配が近付くにつれて徐々に大きく震えだした。
索敵珠の振動が最高潮に達した時、それは現れた。
「イエティモンキーである!」
イエティとは似ても似つかないただの猿だった。ちょっと大きな猿。ほんと猿。
それでも十匹ほど居るみたいだし油断はできない。でもこれは――
「あっ、ちょっと待って! もう辛抱たまらん!」
俺は索敵珠をポケットから取り出した。




