14話 戦闘訓練
俺は今、必死だった。毎日毎日、戦闘訓練に魔法の練習。
でも不思議と充実していた。
理由はたぶん、毎日クリスが様子を見にきてくれるからだ。
夕食後にクリスと世間話をする。内容は色々だ。
好きな料理やお菓子の話だったり、今流行っているものだったり。
たまに戦況の話もしたりするけど、状況はあんまり良くないらしい。
特にドルグマン王国との戦いが激しくなってるらしいけど、帝都からは遠い場所にあるみたいだ。
帝都に一番近い国が、この大陸で一番大きなファンブル王国って所らしい。そのファンブル王国との間にはアリストア大森林が広がってるおかげで、攻め込まれる道は一つに絞られて守りやすいのが救いみたいだ。
戦況の話は聞きたいけど、話す時のクリスが少し悲しそうなのが辛い。早く強くなって、クリスの不安を取り除いてあげたい。そのために頑張っている。
剣術の腕はまだまだだけど、魔力操作は素質があるらしい。魔法はまだ使えないけど身体強化はかなり上達してるらしくて、レベルを上げてごり押し! みたいな事ができている。もうフェルツのおっさんには負ける気がしない。
午前は魔法、午後は戦闘の訓練。夕食後、クリスとの話が終わると風呂に入ってから泥のように眠る。これが俺の毎日だ。
クリスが居なければ、俺は投げ出していたと思う。クリスには笑顔でいて欲しかった。ただ、そのためだけに頑張った。それだけで頑張ることができた。
これからもずっと、クリスのためだけに頑張ろうと思っている。
翌日。
「不甲斐ないフェルツの代わりに、今日からお前の教官を務める帝国軍第三騎士団副長のダルカス・フォルマンである! これからよろしくな!」
凄く熱いおっさんが出てきた。しかもデカい。でも負けてらんねぇ。俺はこいつにも勝つんだ!
「こっちこそよろしく!」
握手を交わす。……ってこいつ力強すぎだろゴリラかよ。
「では訓練を始める!」
こ、こいつ……すました顔しやがって。こっちは右手の感覚なくなったぞ。
目に物見せてやる!
その夜もクリスは部屋にやってきた。
「なんて酷いお怪我……あまり無理をなさらないでください」
「これくらい大丈夫です! ツバ付けときゃ治るんで」
「そんな事はないでしょう! 少し、動かないでください――【ヒーリング】」
「これは……すごい」
痛みも腫れもすぐに引いていく。まるで初めから怪我なんてなかったみたいだ。
「わたくしは心配でなりません。どうしてそこまで――」
「意地……なんだと思います」
「わたくしにはその気持ちは解りません。ですが、どうかご自愛くださいませ」
手を強く握られ、俺の頭は真っ白になった。
その後のことはよく覚えてない。たぶんラブコメ展開があったと思う。そうに違いない。
ただその日はぐっすり眠れた気がする。




