10話 目覚め
私は夢の中に居た。そう、自分ではない、誰かの夢。
誰かの夢を、物語を。それを見続けることしかできない。
エリクの魔法は失敗に終わった。
私が入るはずだった器には、既に誰かの魂が根付いていた。
産まれたばかりの未成熟な魂と交わり、私が、私のままで覚醒するはずだった。
誰かの魂との繋がりは感じるものの、今の私には、何もできることがなかった。
フレッドと名付けられたその魂は、その後、すくすくと成長した。
暫くして抱いた違和感。いや、これは初めから気付いていたのかも知れない。
成長が早いのではない。既に育っていたのだ。
なぜ、この様な事態になったのか。エリクの理論は間違っていたのか。
それは、私には解らない。
苦悩の末、私はフレッドの魂を見守ることにした。
ある種の親心の様なものを持ち始めた時、それは起こった。
村にモンスターの大群が押し寄せたのだ。
フレッドは必死に妹を守ろうとした。
その結果、フレッドは意識を失ってしまった。
私には何もできないのか。これほど近くに居るのに、私には何も守れないのか。
まだ十二という若さで、これ程までに必死に抗おうとしたフレッドの想いを、無にしなければならないのか。
そんな事は――許されない。
私は願った。この夢から覚めることを。この悪夢を終わらせることを。私がフレッドの代わりに成し遂げなければならない。そう、強く願った。
その時、私の意識は覚醒した――
即座に剣を引き抜き、死体を貪る狼を一刀の元に切り伏せる。
次々と襲い来るモンスターを、一匹、また一匹と斬りつけていく。
そうして周囲のモンスターを狩り尽くすと、一つの躯の前で呟く。
「――すまない。私は……治癒魔法は苦手なんだ」
村へと向かう途中、死体に群がるモンスターを蹴散らし――駆け抜ける。
もう助からない。助けられない。
それでも、向かうしかなかった。
この程度のモンスターであれば、私一人で事足りる。
私が目覚めていれば、こんな悲劇は生まれなかった。
何もかもが遅すぎた。
後悔ばかりが募る。
私は悔やみきれないこの想いを、奴等にぶつけた――。
フレッド……。
この惨状を見た君は、何を想うだろうか。
私は君を、どう支えてやればいいのだろうか。
彼の事を想うと、私の胸は張り裂けそうになった。




