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5.試験開始

「あれ、ジオじゃん!」

「おー! エフィとベルキム!」


 次の日、試験会場である『宝石王』のギルド本部へ向かう途中、ジオたちは道でばったりと出会った。


「あ、お、お疲れ様ですジオさん」

「ベルキムもお疲れ。なんで二人は一緒なんだ?」

「さっきそこで会ったのよ! にしてもジオ、すごいデカい剣背負ってるわね……そんなの振れるの?」


 エフィはジオの背中にある、昨日は無かった大剣に目をやった。背が低いわけではないジオの背丈ほどもあるその剣は、常人なら持つのも一苦労しそうだ。


「余裕だよ余裕! 俺、筋肉には自信あるんだよね」

「そうは見えないけどね……」


 エフィは細身なジオに疑いの目を向けている。


「うるさいなー。てか、『宝石王』どこにあるか分かるか? ここらへんだと思うんだけど」

「んー……」

「みなさん、これじゃないですか?」


 ベルキムは、三人の横にある、大きな建物を指さした。ミーグルは土地が狭く、縦に長い建物が多い中で、横にも縦にも大きく広く、その上豪華絢爛な装飾の施されている、貴族の豪邸のようなその建物はまさに場違いであった。


「え、うわマジじゃんギルドの紋章入った旗飾ってるし」

「ちょっと大きすぎて気づかなかったわ……」

「なんでも、団員が貴族王族の出のエリートさんばかりらしくて、予算が潤沢なんだそうですよ」

「名は体を表す、って感じだな……」


 感じたことのない異様な雰囲気に気圧されながら三人が中に入ると、中にいた団員から試験会場に案内される。


「ここ……外?」

「中庭……みたいだな」


 各辺50m以上はある大きな空間には、試験の準備を整えたハンターたちが既に集まっていた。土地の中でありながら土や芝で構成された床の、広いこの空間は、やはりミーグルには似つかないものであった。


「すごいなこりゃ……」

「ここで団員さんたちは毎日訓練を積んでるって話ですよ……」

「しかも、受けるやつらみんなボンボンって感じだな……身なりから差をひしひし感じるぜ……」


 普通のハンターももちろんいるが、立派な鎧や武器を携えたハンターが高い割合を占めている。


「ハンター養成学校とかの出身が多いんだと思います。貴族王族が多いって、こういうことだったんですね」


 ハンター養成学校は、高い学費故、ハンター志望の貴族王族が実地で死亡するリスクを下げるための準備機関として扱われている。温室育ちの貴族王族たちでも、しっかりとした戦闘教育を受けているため、高い実力を持つものが多い。


「あーあ、なんかアウェイって感じ。緊張でお酒が呑みたくなってくるわ」

「あれ、そういやエフィ、今日は酔っぱらってないんだな」

「いつもなら呑んでくるんだけど、さすがにラストチャンスになるかもしれないから、シラフで来ようと思ったの」

「偉いな……偉いのか?」

「あれ、リュドさんはどこでしょう?」

「そういえば道では会わなかったわね。もう着いてるのかしら」


 三人が目の痛くなるような豪奢な装備の面々に耐えながら周りを見渡すと。


「あ、居た」


 壁に背をもたれ、足を組み目をつむっているリュドを発見した。


「おいリュド! もう着いてたんだな!」

「げっ、お前ら……」

「スカしてないで仲良くしましょうよ~」

「うるさいなお前らは……一応俺たちは競争相手だぞ? 協調性より個人の実力が問われる。仲良しごっこに得はない」

「ぶれないですねリュドさん……あれ、今日は剣を持ってるんですね」


 リュドも昨日は身につけていなかった剣を腰に携えていた。ジオとは違い、常識的な大きさの、一般的な剣だ。


「ああ。最近は素手で戦っているんだが、圧倒的な実力を見せつけるんであれば本職の剣がいいかと思ってな」

「おいおい、俺とキャラ被りしてるじゃんか~」

「キャラってなんだ……お前のドでかい剣とは話が違うだろ」


 などと言って四人が戯れていると、「注目!!」という声が中庭に響いた。

 声の方向を見ると、端に設置された台座に、宝石などの装飾を全身に散りばめ、葉巻を加えた小柄な男が立っていた。頭のてっぺんは禿げており、灰色の長髪を垂らしている。


「皆、良く集まってくれたな。わしがこのギルドのリーダー、ダゴジムじゃ」

「あれが……」


 リュドは少し意外な印象を受けた。自身の最高ランクに迫る831位の男がリーダーということでどんな男か気になっていたのだが、背丈は低く太り気味で、年のころも5、60といったところで、順位通りの実力とは到底思えない。


「皆、もうすでに準備万端のようじゃな。それでは早速、今日の試験内容を説明しよう」


 その言葉を合図にしたように、ダゴジムの後ろから四人の男が現れた。


「今日は、四人一組のチームに分かれてもらい、わしの『空間魔法』で作り出した仮想空間で戦闘を行ってもらう。その様子をギルドの筆頭人員であるこの四人に見てもらい、ふさわしい人員を選考するといった感じじゃ」

「……四人一組だと?」


 予想外の言葉にリュドの顔に焦りが浮かび始める。


「成績だけでなく、個人の実力もしっかり見定める。さて、まずはチームを組んでもらおうか」

「ちょ、ちょっと待て」


 リュドが焦って周りを見ると、周りはすでにそれを知っていたようで、すでに四人組が完成しているものばかりだった。


「ちょっと、チーム戦だなんて聞いてないわよ」

「俺もだよ……」

「わ、私はなんとなく前年の受験者さんが話してるの聞いてたのでしってましたが、みなさんと組めるだろうからいいって思ってました」

「そういえばそうね。昨日会っててよかったわねホント」

「そうだな、俺らで組むか! リュドもいいよな?」


 不本意ではあるが、ルールには従わなければならないし、一応顔見知りであるジオ達の誘いを断る理由はない。


「ああ……」


 リュドは渋々ジオ達と四人組を組むことにした。


「よし、揃ったようじゃな。これから仮想空間に飛ばすのはおぬし等の仮想体じゃ。向こうで死んでも実際に死ぬわけではないが、向こうで消費する魔力は実際のものを使用する。飛ばし過ぎんよう、存分に戦ってくれたまえ」

「なるほど、そういうことか。俺が受験者を皆殺しにしてしまうかもと懸念していたが、それなら安心だな」

「傲慢がすぎるわよリュドちゃん」

「ちゃんはやめろ」

「それでは、『転送』! 試験開始じゃ!」


 その言葉と共に、地面に大きな魔法陣が浮かび、強い光が辺りを包んだ。四人は思わず目を閉じてしまう。


「……転送されたのかしら?」


 光が消え、目を開けるとそこは、森の中だった。


「これが仮想空間……すごいな」

「空まで完全再現されてます!」


 現実と見分けのつかない精巧な空間に三人が舌を巻いていると、リュドはおもむろに駆け出した。


「え!? おいリュド! 何してんだ!?」

「先手必勝だ。成果は俺が挙げる」

「これチーム戦だぞ!?」


 リュドの自分勝手な行為に面食らいながら、三人はリュドの後を追った。


次回戦闘です。

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