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1.問題だらけの面接

「うん、面接はこんなものだね。二次試験の日程は2日後くらいにハンター協会を通して伝えるからね」

「はい! 失礼します!」


 元気よく挨拶をし、男は部屋を飛び出した。


「今回の求人は良いのが沢山来ていますね。今のもかなりやれそうですよ」

「だね。まあ、まだ一次面接。二次の実技が本番みたいなものだよ」


 面接官の二人はそんな会話をしている。

 ここは上位ハンターギルドの本部が集まる都市、ミーグル。そして今は半年に一度の各ギルドが新たな戦力を集める時期で、多くのギルドで入団試験が行われている。

 二人の所属する、ギルドランキング2位『紅蓮のたてがみ』でも、まさに入団試験の最中であった。


「しかし時期も時期ですし、連日実力者が山のように来ますね。優秀な人材は多いですが、こんなに沢山は入団させられませんよ。団長」


 眼鏡をかけ、黒い髪を七三に分けた面接官の一人は、一次試験の面接を突破したハンター達の履歴書をペラペラと捲りながら、はぁとため息をつく。


「うん。分かっているけど、このご時世、志願者はなるべく採用してあげたいんだよね」


 団長と呼ばれたライオンのたてがみのような赤い髪と髭を蓄えた男は、頬の大きな傷をポリポリと搔きながら言った。


「そこ!! 団長は優しすぎるのです! あえて厳しくしてこそ、当人たちの成長に繋がるというものですよ! そもそも、我々はランキング2位なのですから、人材の吟味は慎重に…」

「あ! グノー、そろそろ次の志願者を呼ばなきゃじゃないかな!?」

「……二次試験の基準については、後でゆっっっくりしっっっかり話しましょう。次の者! 入っていいぞ!」


 話を躱されたことに非難の目を送りながら、グノーと呼ばれた眼鏡の男は次の志願者に呼びかけた。


「失礼する」


 銀髪が特徴的な次の志願者は、礼もせず、その一言だけで部屋に入り、椅子に座った。ふてぶてしい態度に、二人は困惑している。


「……まずは自己紹介をしてくれ」


 困惑を隠すように眼鏡を人差し指でくいっと直し、グノーが呼びかけるが、それに対しても彼は「リュドだ」と一言で返す。


「えーと……、リュド君だね。僕は団長のヴァグス。こっちが副団長のグノーだよ」


 とりあえず進行しようと、団長のヴァグスが声を上げる。


「早速面接に入ろうか。まず、ソロハンターとしての最高ランクは……611位! かなり高いね!」


 ヴァグスは驚きの声を上げる。ハンターの人口は1000万を超えると言われるなか、611位はかなりのエリートだ。


「ここのグノーもこの間やっと1000位内に入ったんだよ! 君結構やるね!」

「ああ」

「……」


 場を和ませるための弄りだったが、リュドの相変わらずの雑な返事に場の空気は更に重くなる。


「……団長、被害者みたいな目をしてますけど、これ私が一番かわいそうですからね。……少し気になるのだが、魔導書グリモワールが強化魔法なのに希望は前衛なのだな」


 グノーが履歴書の一部に触れた。強化魔法は、様々な強化効果を付与するもので、バッファーの役割を担う者が多い。


「ああそれか。俺はソロの頃からずっと自強化を活かして接近戦をしてきたから前衛に慣れているんだ」

「貴重な強化魔法の持ち主だからそこは評価したいが、うちでは強化魔法の使い手にはできるだけ中、後衛に回ってもらう方針なんだ」

「そうか、だが前衛で頼む」

「い、いやしかし、既存メンバーとの兼ね合い上、前衛より中、後衛にいって貰った方が都合が良くてな……」

「そうか。だが俺は前衛にいたほうがいい。既存の前衛より圧倒的に優秀だろうしな」

「そ、そうか、譲らないな君は……」


 不遜な態度に青筋を立てながら、怒りを隠すようにグノーは眼鏡を直した。


「し、しかし、ランキングも高く、強化魔法の使い手、あまり逃したくない人材ですね。態度と人格に難ありですが……」

「そ、そうだね……。なんでうちを受けようと思ったの?」

「それはひとえに『紅蓮の鬣』がトップギルドの一つだからだ。俺の実力を考えて、この辺りに入るのが妥当だろう」

「うーん、自己分析は出来てるけど、その発揮の仕方が悪いな……」


 ハンターの職業柄、こんな性格のハンターも珍しくはない。しかし、ヴァグスはソロでも2位の実力者で、『紅蓮のたてがみ』自体トップギルドなので、そんな性格でも謙虚になるのが普通だ。


「ん? ちょ、ちょっと団長、この部分……」

「え? ……こ、これは……」


 と、グノーが履歴書のとある記述を見つけ、そのまま二人はひそひそと話し合いに入った。


「どうした? 何か変なところがあったか?」

「あ、あのさ……この備考の部分なんだけど……」

「ああそこか。書いてある通りだ」


 恐る恐る問いかけたヴァグスに対し、またも当然のような態度でリュドは答えた。


「ま、間違いじゃないんだね? この、【最低条件:ギルドリーダーでの採用】っていうのは……」


 そう、彼の履歴書には、ギルドリーダー以上での採用を最低条件にするという、二人でなくとも困惑するような一節が書かれていたのだ。


「間違いではないな。あーでも、ヴァグスさんのことは俺もハンターとして尊敬している。サブリーダーでの採用でも問題ないぞ」

「こ、こいつ、サブリーダーの俺がいる前で……」


 一人称が変化するレベルまで怒りが溜まっているグノーを見て、ヴァグスが慌てて「と、とりあえず!」と口を開いた。


「それ以外の採用は無理なんだね?」

「ああ、最低条件がそこだ」

「分かった。えーと、リュド君」

「なんだ」


 ヴァグスは深呼吸をし、一言放った。


「不採用で」


不定期ですが、頑張って書いていきます。失踪は絶対にしません。よろしくお願いします。

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