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ファンキー・ロンリー・ベイビーズ  作者: 清泪(せいな)


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第87話 グライムに教えられる 7

 昨日米倉ビルのスナックで勝と戦った後、ティホンは負けた醜態に耐えれず見知らぬ人(ストレンジャー)から抜け出すつもりであった。

 勝が米倉ビルから抜け出した後に目を覚ましたティホンは、傷だらけの身体を引き摺るようにして勝の行った道をなぞる様に裏口から抜け出したのだが、すぐ後に訪れていた野上に見つかってしまう。

 意気消沈しているティホンを、煽りと脅しで捉える野上。

 直前に鳴らした二発の銃声のこともあって野上の言葉に渋々乗ることにしたティホンは、拠点となる建設現場のプレハブ小屋に帰ってきた。

 広大な土地となる建設現場には、関連会社ごとに休憩室の役割を持つ簡易のプレハブ小屋が建てられていて、簡易ゆえに別に看板が付けられているわけではなかった。

 現場で働く者達も何処のプレハブにどの会社が入っているのか全貌を把握してなく、まさかその一つがチンピラ達の寝床になってるとは思っていないだろう。

 全身打撲、傷だらけの大男はその寝床を独り占めし、小屋に持ち寄られていた酒を勝手に飲み漁り眠りについていた。

 それで傷は治るだろう、などと何の根拠も無い自信と共に。


 十何時間と取った睡眠の後、目覚めに口にするのも酒だ。

 寝ても醒めても、昨日の醜態が頭から離れず、怒りは治まらなかった。

 殴っても蹴っても、醜態は幻覚としてティホンの視界をジャックする。

 本来仲間であるはずのチンピラ達の姿に、勝の幻が重なりティホンはそれを払うために、その太い腕を振り、その大きな足を振る。


 見知らぬ人(ストレンジャー)という組織に置いて、大きな戦力として噂されていた大男のロシア人が錯乱しながら自分達を攻撃してくる。

 そんな状況下にチンピラ達の理解は追いつかず、判断が遅れ、好き放題殴られていった。

 酔っ払いが暴れてる、そんな単純なことを理解出来たチンピラも反撃に出るという判断ミスを起こし、返り討ちにあっていく。


「コロス、コロス、コロス、コロス……」


 暴れれば暴れるほど酔いが回っていくのか、ティホンの呟く単語はシンプルなものになっていく。


「どうすんだ、アレよぉ?」


 ティホンの暴れぶりを驚愕した目で見ている馬宮。

 相手は確かに烏合の衆という言葉が似合う程度のチンピラ集団だが、それをいとも簡単に吹っ飛ばしていく様は異様としか言いようが無い。

 戦う、という状態にすら持っていけない相手だ。

 反撃を叩き潰していく、一方的な暴力。


「アイツが他のチンピラを潰してくれるのはありがたい話だ。とりあえず、距離をとって数が減るのを待つのが得策だな」


 そう答えた平家は、少し前で戦闘態勢を崩さない邦子に手の平を向ける。

 今はまだ待て、という指示だ。

 邦子の手綱を握る役、など立候補したつもりは無いが邦子が頷いたので理解はしてくれたようだ。

 このまま好き勝手に暴れさせ続ける気は無いが、無謀に潰し合う気も勿論ない。


 平家の意図を組んだ邦子と馬宮は、周りを警戒しながら静かに後退りしていく。

 チンピラ達の注目は攻めてきた平家達から離れ、暴れるティホンに注がれている。

 迫り来る脅威度は確かに上なのだろう。


 そうやって平家達が冷静に次の対応に向けて行動してる最中にも、ティホンは次々とチンピラ集団を倒していった。

 危機を察して逃げ出そうとするチンピラが平家達の方に向かってきた時だけ、逃さないように対処していく。

 邦子は街に混乱を招く輩を誰一人許す気がない為、平家達は千代田組としての威信を植え付ける為、逃亡を成功させる気などなかった。


 時間にして五分足らずの一方的な狩りが行われ、ティホンの標的が次第に平家達に代わっていく。


「そろそろやろうってか」


 馬宮は大きく屈伸を一度行う。

 迫る脅威に僅かに緊張を感じてるのは、間違いない。

 しかし、やることは一つ。

 得意なのはがむしゃらなタックルだ。


「コロス、コロス、コロス、コロス!!」


 暴れ足りない、そう興奮するティホンは近くのチンピラの胸倉を掴むと、身体を持ち上げ豪快に振り回した。

 それが雑魚散らしの最後の一手となり、立っていた残りのチンピラ数人を巻き込み倒していく。

 凶器となった持ち上げられたチンピラは散々ぶつけられた後、ゴミのようにポイ捨てされた。


 それを見て、馬宮は駆け出す。

 ひと暴れ終わった後の隙を狙って、身を低く構えたタックル。

 まずはその酔ってふらつく足を狩りに動く。

 五歩。

 素早く大きく踏み込んでいく、五歩。

 あっという間に距離を詰め、馬宮はティホンの下半身を捉える。

 身体で押して、掴んだ腕で引く。

 そうすることで大男を倒そうと狙うのだが、ふらついていた身体はピクリとも動かない。

 まさに根を張る大木のように微動だにしないティホンに、馬宮はタックルとは別の手を打とうと動くのだが――。


 ドンッ!、と大きな音ともに馬宮の背中に強い衝撃が襲う。

 馬宮の背筋を打ちつけるハンマーブロウ。

 がっしりと組まれた両の手が、大きな塊となって馬宮の背中を打っていく。

 大男、千代田組内ならそう分類される平家と馬宮を遥かに上回る、大男。

 そのティホンのリーチの長さは、振り上げれる高さへと繋がり、振り下ろす威力へと変換される。

 ぶぉんっ!、と空を薙ぐ音を鳴らし、槌は何度と振り下ろされた。

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