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ファンキー・ロンリー・ベイビーズ  作者: 清泪(せいな)


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第79話 聞いてガラージュ見てガラージュ 11

 羽音町五丁目。

 建設中の大型物流倉庫。

 延床面積は約六万平方メートルの大規模な工事は、七割程度の工程を終わらせて本日の作業を終えていた。

 通常なら複数業者が関わり二十四時間態勢で進む作業なのだが、倉庫主である大企業様が下請け業者の勤務時間にも厳しく言われる世の中に配慮して、暗くなり始める前には一斉に終わるというお行儀のいい現場となった。


 七階層と背も高い倉庫の三階。

 自立制御ロボットの導入を想定して実質四階部分も一緒くたにした巨大な構造は、実際まだ何も機材が搬入されていないのでだだっ広い空間となっていた。


「女、しかも子供を一人誘拐するのに大袈裟なことになったものだな」


 広い空間、剥き出しのコンクリートに反響する男の声。

 七三分けの白いスーツの男、米倉ビルのスナックにて勝を蹴り転がした男。


「ああ、次失敗したら頭弾いとくから、今回は大目に見てやってくれないか?」


 答えるのは、首もとまで伸びた茶髪を揺らす男──野上花康。

 赤いパーカーの上に、派手めな紺のジャケットを羽織っている。

 

「お前が立てた作戦だろ? 失敗は手下の責任か?」


「あぁ? 何? 焦ってんの、なーさん。ストレンジャー(アイツら)はさ、絆で結ばれたブラザーフッドじゃないんだよ。何処のどいつか知らねぇヤツらで行く末は商売敵? まぁ、対等なライバルってなれそうなヤツはいねぇから、邪魔者ってとこかな」


 野上は、自分となーさんと呼んだ男──ニアンを交互に指差し、俺達もそういうこと、と付け加える。


「だから駒扱いなのは当たり前で、オレの指示で失敗したらそいつは使えねぇってことで弾いちゃってさ、将来の小石も先に蹴飛ばしとく感じだよね。使えるヤツはもちろん、扱いは良くするつもりだよ。商売敵じゃなく今後も肩組んでやっていける可能性はあるしさ」


 野上は再び自分とニアンを交互に指差し、ね!、と強調し付け加える。


「誘拐沙汰が大袈裟になったのも、それでわかりやすくするためなんだよ。オレ達の敵がどんなヤツらか、撒き餌に引っ掛かって今集まって来てくれてるよ。英雄さんが宣言してるこの街ぶっ壊すって願望を叶えるなら、まぁ一網打尽が早い話じゃない? なーさんもさ、独立成功させるなら手柄の一つも上げた方がやり易いんじゃない?」


 野上は人差し指を立てて、一、とニアンに示す。

 一本でかいのを取れたならば、抜け出た組織も一目置いてくれるだろう。

 理由はなんであれ、はぐれものを独断専行許すまじ、ではあるものの価値を計るというのは組織ゆえの習性なのだろう。

 価値があれば排除対象から商売仲間としての格上げだってある。


「私に千代田組の若頭を仕留めろと、そう指示するつもりか?」


「いやいや、なーさん。流石にオレもそんな偉そうな発言は出来ないよ。オレがアンタの上にいるわけじゃねぇんだ、指示なんてしねぇ、提案するだけ。あの若頭モンスター首狩り(ハント)出来ればアンタの名前は一気に箔がつく。細けぇことを説明せずともわかるだろ、なーさん」


 遊川のいる千代田組は、東條会の一組織だ。

 しかし遊川という存在は東條会でも一目置かれていて、その戦闘力だけでも本来は東條会の中で幹部にのしあがれる程のものがある。


「幼稚なけしかけだが、乗るのが手か」


 日本の小さな街の極道の幹部を殺れば、母国からの使者から逃れられるのであるなら、賭けない理由はなかった。


「あのロシア人もやらせるのか?」


 昨日勝に倒されたティホンは、その汚名を受け入れられず今日は一日怪我の治療を兼ねてウォッカを浴びるように飲み、潰れていた。

 一階の出来上がった事務室予定の場所で、長いソファーに横わたっている。


「そうティホン君を馬鹿にしてやるなって、なーさん。彼はアレだよ、やるときはやる男なんだよ、多分。だから、ティホン君にもオレから指示するつもりなんか無いよ。時が来たら暴れてくれんでしょ」


「それに合わせて昼間誘拐を失敗したヤツらか」


 寄せ集めのデメリットがハッキリと見えてニアンは、眉をひそめた。


「誰しも失敗ってあるじゃない。なーさんもさ、何か失敗して組織抜け出したんでしょ?」


 軽口を叩く野上をニアンが睨む。

 しかし、野上はそれを気にも留めない。


「だからさ、一度の失敗は大目に見てやろうよ。チャンスをやろうよ。アイツらもいきり立ってるんだよ、次は必ずぶっ殺す、なんて物騒なことを素面で言っちゃってんだから」


 ははっ、と無邪気に笑う野上。


「失敗したヤツ、はぐれもの、総戦力で迎え撃とうぜ。商売始めるための地ならしをしようぜ」


 倉庫に響く笑い声。

 その声の主が本当は何を狙っているのか、ニアンにもまだ掴めずにいた。

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