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ファンキー・ロンリー・ベイビーズ  作者: 清泪(せいな)


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第4話 犬も歩けばファンクに当たる 3

 桐山は店長が事の次第を察知したのに気づき、店長が何かを言うより先に華澄へとミドルキックを繰り出した。


 桐山の鍛えぬかれた脚でのミドルキックは豪快だ、風を切る音が聞こえてきそうだ。

 一歩近づいたレフェリーが危険を察知して身を引いた。

 格闘技バーには似つかわしくない細長い体つきをしている店長の身体ならへし折ってしまいかねない。

 しかし、そのミドルキックはスピードを伴っていなかった。

 華澄は冷静にその蹴りを避けると、桐山の振り切られた足がマットに着くタイミングに合わせて真似する様にミドルキックを繰り出した。

 右中段回し蹴り。

 桐山のミドルキックとは違い腰の回転を入れた、中段の蹴り。

 桐山の身体を大木に見立てて、それに力一杯斧を振るイメージ。

 二手目の上段蹴りと同等かそれ以上の速さで蹴りは振られる。


 大木を強く打ちつけ、大きな音が鳴る。

 観客にまたどよめきが起こる。

 蹴りにいった華澄が焦りの表情を浮かべ、受けた桐山が口元に笑みを浮かべた。

 桐山は華澄の右足を受け止め抱き抱えるようにしていた。

 右手でふくらはぎを、左手で足首を掴んでいる。

 桐山は華澄の右足抱き抱えたまま内側、左側へと横転した。

 ドラゴンスクリュー、と呼ばれるプロレスの技で受け身を知らない素人相手には使用禁止と先輩に言われていた返し技である。

 その中段蹴りへの返しである技は、自身が横転すると共に相手も強制的に横転させその際に抱えた足首を捻り極める。

 横転した相手は固いマットに倒れさせらる事もあり投げ技としても効果を発揮する。


 観客のどよめきが歓声へと変わる。

 ドラゴンスクリューは攻め手受け手共に即座に横転する技で見た目に派手な技だ。

 派手な技な割に足首を極めるという渋い部分に、技へのファンも多い。

 華澄の蹴りで真剣勝負という重い空気に変わった事に対してプロレスとして女王はショーに徹したと浅い知識の観客達は喜んだ。

 華澄の挑戦にドラゴンスクリューという受け身を間違えれば足を折りかねない技で女王は応えたと、自称“通”の観客達は喜んだ。


 素人相手への使用禁止技な為、羽姫では初めて繰り出したドラゴンスクリューに対してしっかり受け身を取れた華澄に女王桐山は驚愕していた。

 足を掴まれた瞬間に華澄の背筋に冷たいものが走った。

 桐山が口元に笑みを浮かべているのを見て、それが恐怖だと確信した。

 何をされるかわからないが、一瞬でも気を抜けばヤバい。

 間違いなく足は持っていかれる。

 それから華澄は足を抱える桐山の動きに集中した。

 桐山が左側に倒れ込むのに合わせて、身体を支えていた左足でマットを踏み込み飛ぶ。

 回転速度を合わせる為の微調整も忘れない。

 横転中、足首を極められているのがわかったが無理な抵抗はより深いダメージに繋がるので諦めた。

 俯せにマットに倒れ込んだ。

 顔面と胸を強く打って痛い。

 が、直ぐ様両手でマットを叩き身体を起こした。

 このまま桐山に寝技に持っていかれれば負ける危険性がある。

 華澄は立ち上がり極められた右足首を動かす。

 痛みが走る。

 立ってはいられるが、踏み込みの支えになれるほどではない。

 つまり、左蹴りを封印されたといっていい。

 いや、左半身側での攻撃を封印されたといっていい。

 自分に真剣勝負を挑もうというのだから華澄はそれなりに研究はしてきているのだとは、桐山も思っていた。

 しかしそれはあくまで桐山自身の試合、羽姫で見せた試合ぐらいでプロレス自体の研究はしていないだろうと桐山は思う。

 仮にプロレスの研究をしていたとしても、数多い技の一つ一つの受け身の仕方を格闘技歴の浅い華澄が知っていたり覚えていたりするとはとても思えない。

 それに、先ほどの感触としては華澄にドラゴンスクリューへ対しての予備知識があったとは思えなかった。

 華澄は完全に勘で対応したのだ。

 ドラゴンスクリュー後に直ぐ様立ち上がったのも寝技を避けての事だろう。

 俯せに倒れる華澄の足を掴み、四の字固めにもっていけば試合はそのまま決着を迎えただろう。


「恐い娘だね、アンタは・・・・・・」


 目の前で相変わらず構えている華澄を見ていると、桐山は思わず言葉にしてしまった。

 右足首が痛いだろうに華澄は表情にそれを出さずに立っている。


「アタシも恐いですよ、邦子さん」


 恐いと言ってくれるくせにまた笑みを浮かべる桐山に華澄はそう答えた。

 自分も笑っているのだろうか?

 きっと笑っているのだろう。

 何故なら恐さと同じくらいに、楽しさが身体中を駆け巡っているからだ。

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