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ファンキー・ロンリー・ベイビーズ  作者: 清泪(せいな)


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114/120

第114話 グライムに教えられる 34

 若菜と今後の段取りを打ち合わせた千代田は、それじゃあ、と一言頭を下げて振り返った。

 野上が商売にと集めた銃器類の押収から、見知らぬ人(ストレンジャー)の残党への対応など、裏の世界の者たちとして助力が出来る部分への協力は惜しまなかった。

 見返りとして得れるものは、今回の騒動における暴力沙汰を見過ごしてもらうことだ。

 この建設現場以外でも、今回の騒動では街中で見知らぬ人(ストレンジャー)と思われるチンピラとの抗争は行われていた。

 これを機にと一斉取締りが行われたら、体を張った組員の労力が報われない。

 一介の刑事に頼むな、と若菜は苦笑していたが、今千代田組の逮捕に警察が動くことはないだろう、とも言っていた。

 借りがあるのは警察こっちもなんだ。

 若菜は頭の包帯を指差しながら、やはり苦笑していた。


 振り返った千代田は、そのまま床に倒れる勝のもとへと足を進める。

 勝のそばにいる八重が、じっと千代田のことを見つめていた。


「遅せぇんだよ、出て来んの。美味しいとこも何もねぇぞ、千代田組組長クソオヤジ


「そのクソ親父の尻拭いなんて、まだ母親のこと、納得出来ねぇか、勝」


 見下ろすように息子の前に立つ千代田と、睨みつけるように見上げる勝。


「納得なんてとっくにしてんだ。母さんは、アンタに惚れて、アンタの為に身を引いた。病気で死んじまうその最期まで、アンタに感謝してたよ。だから、アンタがどんな男か、それを知りたくて俺はこの街に来た」


 病弱だった母親の治療費や、それまでの佐山家の生活費、母親の葬式代だって全て千代田が出してくれていたことを勝は、母親が亡くなる半年前、十六になったばかりの頃に病室で母親から聞かされていた。

 それまで親戚の助けで生活出来ていると説明されていたので、死んだと教えられていた父親の存在共々受け入れ難い事実であった。


 母親を捨てた極道ヤクザの金で生かされている。


 勝はそうやって母親の言葉を真に受けれずに、歪曲させて理解して、羽音町にやってきた。

 女を捨てたクセに未練たらしく金で繋がろうとしてる情けない極道ヤクザを一目見て、罵倒して自分の人生から切り捨てようと思っていたのだ。

 キレられて逆に滅多打ちにあったって構わなかった、殺すなら殺せとヤケになっていた。

 恩を感じるべきだとも、頭の隅にはあったのだけれど、それを素直に受け入れられる程、母親は幸せな最期を迎えていたようには見えなかった。

 歳を重ねるほど病気にやつれていく顔、向けられる微笑みにはいつも何処か寂しさが漂っていた。


「恨みに思うなら刺されても構わねぇと思ってたが、テメェが撃たれてちゃあ話にならねぇじゃねぇか、勝」


「うるせぇよ、そういうとこが嫌いなんだよ、アンタの」


 勝の母親が千代田から身を引いたのは、千代田が若くして組を任されることになったからだった。

 千代田が当時所属していた組の組長から気に入られていて、まだ三十そこらで任されることになったのだが、そこには条件が一つあった。

 組長の娘との結婚、昔気質の極道にはよくある話ではあった。

 後の八重の母親となる女性だ。

 勝の母親は千代田の出世を喜び、まだ産まれたばかりの勝を連れて千代田のもとを去った。


「何度目かの質問になるが、いつまで続ける気だ、こんな事?」


「何度も答えてるが、俺の気が済むまでだよ」


 母親が願った千代田の極道としての生き様の全う。

 それがどんな形であるのか、勝は監視するつもりであった。

 見届けるなんて、甘いもんじゃない。

 気に食わなければ邪魔してやろうとも思ってる。

 ただ他人に邪魔させる気は無かった。

 正義だ悪だと分別するつもりも無かった。

 気に入る気に入らないの単純な判断だ。


 だから、この行動は、尻拭いなんて称してやってるこの行為は、誰かに自慢してやるような話じゃなかった。

 単なる、自己満足の趣味(・・)だ。

 気が済むまで、やり続けてやる。

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