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ファンキー・ロンリー・ベイビーズ  作者: 清泪(せいな)


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第109話 グライムに教えられる 29

 勝は邦子に離してくれと呟く。

 巻き込ませない為だと理解したが、邦子は渋々了承する。

 肩を貸していただけでもよくわかる、勝は本当は立ってることすらままならない身体だ。


「何処のどいつだか知らねぇが、赤いジャケットのお前(テメェ)もそこの若頭オッサンの影響受けてるクチか? あぁ、将来『遊川さんみたいにオレも千代田組で格好良い男になりてぇ』とか思ってたりする自殺志願者はぐれもんか? 止めとけ止めとけ、そこの若頭オッサンは頭のネジ一本二本ぶっ飛んでんだ。だから例え銃で撃たれても太刀打ち出来ると思ってやがる」


 ハハッ、と野上は笑うと勝に向けていた銃口を今度は横たわる遊川へと向ける。

 側に立っていた八重が庇う様に前へと出ようとするが、後ろに構える作業服のチンピラがそれを許さない。


「森川っ!」


「オイオイ、お嬢、止めとけよ。助けに来たヤツが助けられるってのは、一見美しく見えるけどよ、そらもう屈辱でしかないんだ。オレからしてみりゃ、そこの若頭オッサンへの痛ぶりがいのある話だが、そういうのを理解できないヤツ見るとイラつくとこもあんのよ。交渉どうこう無視して撃っちまうぞ、森川八重(お嬢さん)


 無茶をするなと八重を呼び制止する勝と、銃口を向け八重の動きを止める野上。


「まぁ、もうお嬢を撃とうなんてブラフでコイツらの視線逸らしをやったりしないから安心してな。ありゃ、そこの若頭バケモノ相手だから必要な手順であって、それ以外には要らねぇ段取りだ」


 そう言って再び野上は勝へと銃口を向ける。


「銃で一発撃たれた隙に反撃に出るなんて、漫画や映画の見過ぎなんだよ。オレが持ってんのは古臭いリボルバーじゃねぇんだ、人差し指動かしゃ簡単に連発出来る反動も抑えられた殺しに使える銃なんだ。若頭バケモノ以外がそんなヒーローじみた妄想実行出来るわきゃねぇんだよ、バンバンバンで終いな話なわけ」


 野上から前に立つ五人。

 二歩ほど下がって様子を窺ってる中年男性は数から省いても問題は無いだろう、つまり四人。

 四人を行動不能にする弾数は、銃に残ってる残弾数で充分だ。

 学も振りかざすなく、喧嘩もそこまで強くない。

 真っ当な道も極道としての生き方も中途半端にしか行う能力しか無いと思っていたそんな野上に、自身でも驚く程の射撃の才能があった。

 百発百中とはいかないが、残弾数で四人、多少外しても仕留め切れる。


「現実を見ろよ、アンタら。殴り合い好きなアンタらは、自分の身体で何でもこなせると思ってるだろうがよ。現実はそこ、死にかけてる若頭オッサンだ。オレみたいな喧嘩もそこそこなヤツが、銃弾一発で若頭モンスターを仕留めたんだ」


 そう言って野上は、ヘラヘラと笑うその表情のまま何事でも無いかのように、銃を持つ手の人差し指を動かした。

 バンッ、と鼓膜を揺るがす大きな破裂音。

 八重と愛衣、伊知郎は音の恐怖に身を怯ませて目を瞑った。

 邦子と文哉は覚悟して構えていたのに驚きを隠せず、勝の方に視線を向ける。

 平家は考えていた通り、野上が一発撃てば直ぐに動こうとしていたが、野上の宣言通りその隙は一切なく、銃口はすぐ平家に対して向けられる。


 威嚇射撃だった。

 頬の横を通り過ぎたであろう銃弾が、熱を持って勝の顔に一線の傷をつけた。

 長々と喋った上に、威嚇射撃。

 野上が自分達のことを舐めきっているのだと、勝は改めて理解した。

 しかしそれも無理もない事だ、勝の身体は野上の行動に対して微動だに出来なかった。

 ここまでの戦闘で受けた傷が、防衛反応すら許さない。

 怯ませることも構えることも反撃することも、満身創痍の身体は抵抗をすることを許さなかった。


「ハハッ、数百年言われてる事だろうが、改めて言ってやるよ。銃は偉大だ。そこそこしか喧嘩の出来ないオレが、こんな簡単にアンタらを圧倒できるんだ。だからよ、なぁ、聞いてくれよ平家さんよ。若頭カシラの立てた策略をかっ攫うことに成功したオレはよ、更にブラッシュアップする事にしたんだよ。この街を薬の販売所にするだけじゃ勿体ない、それじゃ英雄さんのぶっ壊し案に乗っかっただけ、禁止してた千代田組への単なる嫌がらせでしかない。オレはその先、銃器の売買も始めようと思ってんだよ。物流に乗っけてよ、国内でガンガン銃器を売りまくるのさ。壊すってならそのぐらいやらねぇとよ、大義だ何だとつまんねぇ事言われっからよぉ。文句言われねぇぐらいビッグビジネスにしてやるんだよ、ハハハッ」


 銃口を向けられ動けない平家は、クソが、とだけ呟き返した。


「まぁ、そんなわけで実のところもう千代田の組長オヤジとの交渉なんて必要性無いんだけどよ、ここまでアンタらを引き込んだのにはワケがあるんだよ。もちろん計画の邪魔者を排除しようって腹もあったんだが、素手で活躍する若頭カシラの縛りで徒手空拳の武闘派な千代田組を銃器で蹂躙するのが、今後の商売への宣伝になるかと思ってさ。若頭カシラが呼び込んだ外のチンピラ共から伝っていってよ、銃も弾も沢山仕入れてある。リーマンヤクザ様々だ、営業は上手くなったぜ、こんなオレも。兵隊もまだまだ駆けつけて来る予定だ。アンタら、良い試供品になってくれよ、撃たれる側としてな!」


 クライマックスのネタばらし、そういった昂りに野上は一気に捲し立てた。

 銃声の反響に、張り詰められる緊張感、静まっていく物流倉庫七階。

 その奥には、乱雑に詰められた銃器が入った段ボールが積まれていた。

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