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私の事が大嫌いな婚約者様~大好きでしたが前世を思い出したので解放して差し上げます。解放したはずの婚約者の様子が何だかおかしいです  作者: ロゼ


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初デート

 待ち合わせ場所は王都の中心にある時計台の下で、遅れないようにと早めに到着したダリアは、三十分も前から落ち着かない様子で待っていた。


 周囲には同じように待ち合わせをする者達が大勢おり、お互いに相手を見つけては嬉しそうに手を繋いで去っていく。


「あんなふうに手を繋いでみたいなぁ……」


 そんなことを考えてみたが、あのジェラスが手など繋いでくれるはずもないと自笑した。


 約束時間の五分前、ジェラスは姿を現したが、すでに先にきているダリアを見て一瞬だけ驚いた表情を浮かべたのをダリアは見逃さなかった。


「もうきていたのか、待たせてしまったか?」


「い、いえ、私が早く着いてしまっただけですので」


「そうか」


 ぎこちなさしか感じられない二人。


 傍から見たら初デートの初々しいカップルといった感じに見えているのだが、ダリアはすでに帰りたくなっていた。


 周囲からジェラスに相応しくないと思われていると思い込んでいる。


「では行こうか?」


 ジェラスに言われ、先を歩くジェラスの後ろを少しだけ早歩きで歩くダリア。


 ジェラス自身もデートなど初めてのことなので、相手をエスコートするという初歩的なことにも気づかず、いつもの自分のペースでズンズン歩いている。


 ジェラスから逃げる時のダリアの足は異常に早いのだが、普段はゆっくり歩くため、ジェラスについていくにはどうしても早歩きになる。


 カフェについた頃にはダリアの息はすっかり上がっていた。


「すまない、歩くのが早すぎたか?」


「い、いえ、大丈夫です」


 ジェラスは自分の失態に気づき、カフェのドアを押し開けると「どうぞ」とダリアを先に通した。


 愛らしい小物があちらこちらに飾られている店内は、カップル以外は女性客が多く、一瞬ジェラスは店内に入るのをためらったが、覚悟を決めて中に入った。


「いらっしゃいませ、二名様ですか? 空いている席にどうぞ」


 こういった店には不慣れな二人だったが、ダリアには前世の記憶があったため、「ではあの席にいたしましょう」と席を決めることができた。


「こういう店は客を席まで案内しないものなのだな」


「高級店ではありませんので、そこまでのサービスはしないのだと思います」


 店内は明るい話し声で満たされており、とても賑やかだ。


 ジェラスが普段いくレストランとは全く様相が違っており、物珍しさもあり、キョロキョロと辺りを見回す始末。


「ジェラス様、あまりそのように見るものではありません」


「す、すまない」


 ダリアに窘められ、ジェラスは素直に従った。


「なにになさいますか?」


 メニューを差し出してジェラスに尋ねるダリア。


「君は決まったのか?」


「私は、季節のタルトと紅茶にしようかと」


 メニューを開いて見たものの、飲み物以外は全くどんな物かわからなかったジェラスは、「これはどんなものなんだ?」とダリアに尋ね、ダリアはそれに答えていく。


「この中で一番甘くない物はどれになる?」


「うーん、どれも甘いと思いますけれど……ジェラス様が好みそうな物でしたら、柑橘を使ったこちらのタルトでしょうか?」


「ではそれを頼もう……どうやって頼むんだ?」


「では、私が。すみませーん!」


 大きな声を出し、手を上げながら店員を呼ぶダリアを見て、ジェラスは面食らっていた。


「君は、こういう店に慣れているのか?」


「前にこういう店にきたことがあるだけです」


 声に反応した店員が注文を取りにきて、テキパキとダリアは注文を済ませていく。


 そんな姿を見たことがなかったジェラスは少し意外に感じながらも、好ましく感じていた。


 注文した品はすぐに運ばれてきて、二人はタルトと紅茶に舌鼓を打った。


 ダリアが勧めてきたオレンジとレモンのタルトは、甘さはあるが爽やかな酸味も感じられ、ジェラスの口によく合った。


「美味いな」


「そうですか、それはよかった」


 ダリアが食べているのは黄緑色のぶどうがたっぷりと載ったタルトで、それを実に美味しそうに頬張っている。


「黄緑色のぶどうとは、珍しいな」


「これはマスカットという品種で、そう珍しいものでもありませんよ?」


 普段果物を口にすることが少ないジェラスが知らなかっただけで、マスカットは庶民ですら手を出すことができるポピュラーな物である。


 自分の知識不足に少し恥ずかしさを覚えたジェラスは、その後黙々とタルトを口に運んでいた。


「君は僕の好みも把握してくれていたんだな」


 ジェラスがそう言うと、ダリアはキョトンとした顔をした。


「好きな方の好みを把握する。これは普通のことではありませんか?」


 そう口にした後、ダリアは顔を真っ赤に染め「違うのです、そうではなくて」と弁解を始めた。


「確かに以前はジェラス様以外考えられないほどお慕いしておりましたが、嫌われていることはわかっていますので、今は」


 その言葉にジェラスの胸は小さく痛んだ。


「僕は婚約者なのに君の好みすら知らない。僕は最低だな」


 そう言われてもダリアにはなんと返せばいいのかわからなかった。


「あら?」


 不意に背後から声がして、ダリアはなんとなく振り返ってみた。


 心臓がドクンと嫌な音を立てている。


 振り返った先には、ダリアとよく似た顔立ちの少女がいて、ダリアを見て目を丸くしている。


『そんなはずがない、だってここはあの世界とは違う世界なのだから』


 そう自分に言い聞かせるのに、細胞の全てがその思考を否定してくる。


 少女の口が動き、唇の形から言葉が読み取れた。


「見つけた」


 少女の口は確かにそう読み取れるように動いた。

 




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