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私の事が大嫌いな婚約者様~大好きでしたが前世を思い出したので解放して差し上げます。解放したはずの婚約者の様子が何だかおかしいです  作者: ロゼ


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複雑な乙女心

 手紙がデートの誘いだったことで一気に浮き足立ったダリアだったが、時間が経つごとに落ち着きを取り戻し、現在は不安の中にいた。


 前世の記憶を取り戻してから、ダリアは前世の彼女の性格に引きずられることが多くなり、つい後ろ向きな思考に陥ってしまうのだ。


 デートだと浮かれているが、行ってみたら婚約解消の話し合いだったら……。


 改めて「やっぱりお前のことが嫌いだ」と言われてしまったら……。


 そんなことを考え始めると、浮かれていた自分がみっともなく思え、羞恥でどこか知らないところへ逃げてしまいたくなる。


「はぁ……」


 その日、何度目になるかわからないため息を吐きながらぼんやりしていると、ベリエルが声をかけてきた。


「どうかなさいまして? 先程からため息ばかりですけれど」


「実は……」


 ジェラスにデートに誘われたことを話すと、ベリエルは「まぁまぁまぁ!」と嬉しそうな声を上げた。


「せっかくのお誘いですのに、嬉しくありませんの?」


「嬉しかったんです……だけど……」


 芽生えた不安を吐露すると、ベリエルはクスクスと笑い始めた。


「恋する乙女ですわね。羨ましいですわ、私にはそういう経験はありませんから」


 関係が良好なアンドリューとベリエル。


 ベリエルが見た目を気にして婚約解消を申し出ていた時期はあったものの、それを除けば仲睦まじい二人。


 焦れったいとも思えるダリアとジェラスの関係が小説の中の恋愛物語のように思え、微笑ましいと感じていた。


「婚約解消のお話でしたら直接ご両親にされるのではないかしら? わざわざ人気のカフェに呼び出して婚約解消を告げるなんて、そんな非道なことをなさる方ですの、ジェラス様は?」


「それは、そうかもしれないけれど……」


「ダリア様は楽しみではありませんの? 初めてのデートでしょう?」


「楽しみ、ではあります。だけど……」


「もう、本当に! 猪突猛進に、とは申しませんけれど、もう少し前向きに考えてもよろしいのでは? そんなに考え込んで、ため息ばかり吐いていては、一気に老けてしまいますわよ? よろしいの? デートの日にすっかりヨボヨボのおばあちゃんになってしまっても?」


「おばあちゃんって」


 思わず顔を上げたダリアをクスクスと笑いながら見つめているベリエルを見て、自分がからかわれたのだと気づいたダリアだったが、それは自分を元気づけるためだとわかり、友達とはありがたいものだと感じていた。


 前世・今世を通してきちんと友達と呼べる相手がいなかったダリア。


 前世ではせっかくできた友達もいつの間にか姉の友達になっており、いつも一人だった。


 今世ではジェラスを追いかけることに夢中になりすぎた結果、ベリエルに声をかけてもらうまでやはり一人だったダリア。


「ありがとう」


 そう伝えると、ベリエルは満面の笑みを浮かべ「どういたしまして」と嬉しそうに言った。


「市井でのデートですのね。着ていく物は決まりましたの?」


「それは母と一緒に選ぶことになっています」


「素敵ですわねー」


「ベリエル様にはデートの経験はあるのですか?」


「私ですか?」


 アンドリューが王子という立場である故に、ベリエルは市井デートというものをしたことがない。


 デート自体は経験があったが、それは警備の行き届いた劇場やレストランに行くだけで、お忍びで市井に出て目的もなくただブラブラとしながら、時折商店に入ったり、屋台の食べ物を買って食べたり、カフェに入っておしゃべりしたりするようなデートに憧れてはいたが、それをしたいとは口に出せず、未だ未経験。


「市井デートというものはしたことがありません」


「でも、デートはなさってるのでしょう?」


「劇場に観劇に行ったり、レストランで食事をしたり、アンドリュー様の領地に避暑に行ったりは」


「羨ましい」


 これまで何度もダリアはジェラスをデートに誘っていた。


 あの花が見頃だとか、あそこに新しくレストランが建った、人気の劇がやっている、有名な歌手がきているなど、様々な理由をつけてはジェラスを誘っていたのだが、返ってくる返事はいつも「忙しい」。


 それでもめげずに何度も何度も手紙を書き続けては撃沈する日々。


 なぜあんなに一途にまっすぐぶつかり続けていられたのか、今のダリアには不思議でならない。


「せっかくのデートなのですから、オシャレをして楽しんでくるべきですわ! きっと悪いことは起きませんから」


 ベリエルにそう言われ、少しだけ前向きな気持ちになったダリア。



 明日はいよいよデートの日である。


「まだ決められないのかしら?」


 ダリアの部屋でアルスは呆れた声を上げていた。


「だって……」


「やっと三着まで絞ったのよ? あとはあなたの好みの問題でしょ? ジェラスくんが当日どんな格好をしてくるのかもわからないのだから、彼に合わせる必要もないのだし」


 ダリアの前には三着のシンプルな服が上下しっかりコーディネートされて並べてある。


「だけど、もしもジェラス様と真逆のコーディネートになっていたら、おかしな目で見られてしまうかもしれないでしょ?」


「あー、もう! だったらジェラスくんに直接『明日はどんな服で来ますか?』とでも尋ねてくればいいじゃないの」


「そんなことできないわ!」


「だったら自分でさっさと選びなさい」


 アルスにそう言われたものの、なかなか決められずにいるダリア。


 結局朝になっても服が決まらなかったため、アルスに「これを着ていきなさい!」と言われた服を身にまとった。


「おかしくない? 大丈夫?」


「何度言わせればいいのかしら? おかしいところなんてどこにもないわよ。ほら、もっと堂々としなさい。あなたはダリアなのでしょう? 猪娘が今更怖気付いてどうするの?」


「猪娘って……」


「シャキッとしなさい、シャキッと。そんなふうではジェラスくんに呆れられてしまうわよ」


 アルスに発破をかけられ、待ち合わせ場所へ向かうべく馬車に乗り込んだ。


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