【東方二次創作】水草
うちのわかさぎ姫はいつも通りです。詳しくは過去作を読んでもろて
「ねえあなた。何をしているの?」
「げ、風見幽香」
「なによ、ご挨拶ね」
水草
幻想郷最大規模の湖である霧の湖は、冬になるとその表面の9割が凍る。原因ははるか霊峰、妖怪の山から冷たい水が常に流れてきて、いつも寒いから。霧の湖が霧の湖たる由縁でもある。ともかく、ここは氷に閉ざされ魚以外の侵入を許さぬ私だけの楽園のはずだった。それが何故かよそ者に侵入されていた。緑髪赤目の大妖怪で、……私の恋敵でもある女。風見幽香に。
「なんでこんなところにいるのよ」
幽香は、水温6度の極寒世界の中にいるとは思えないほど悠然としている。まるでそこに水がなく、ただただ空に浮かんでいるかのよう。
「ホテイアオイを育てようと思って、下見に来たのよ。……咲いたら、あなたにもあげるわ。あなたには薄紫の花が似合うと思うの。紫といっても、石はダメね」
幽香は、いやこいつはそう言ってニヤリと笑い、私を見下す。私の気持ち、趣味、教養、強さ。そのすべてわかったその上で私にこんな言葉をかけたのだ。噂には聞いていたけど……
「すっっごくムカつく奴ね……」
「そうでしょうね。ふふふ。これがわかったなら、あなたには今月のは似合うかもね?」
「ふん。今にあなたをザクロにしてアクセサリーにしてあげるわ」
「実を結ぶといいわね。柘榴のように」
「……なかなかやるじゃない。……そこの岩場、よく私が座って歌うんだけど、毎年水雛罌粟が綺麗なの。見頃になったら出直しなさい」
手をはらい追い払うようにする。たったその動きだけで水中にいくつかの裂け目ができて、幽香に向かって流れていく。が、効果はないみたいだ。
「本当に歓迎されてないのね、私。まあいいわ。これだけ教えて頂戴。それは、何?」
湖底の洞窟の中に飾られた茶色い物を指差す。その部屋は湖面の一割分の氷が詰められていて、氷精の協力もあり年中を通して極低温を保てるようになっている。
「…………これは、影狼の肉体よ。破片だけど。大怪我とかの時に出たものを、とっておいてあるの」
その中にはたくさんの肉があった。ほとんどが指。たまに腕や足もある。
「私は彼女の味も好きなの。文句ある?」
「……まあ、少しは。でも約束は守るわ。ご機嫌よう。」
そうして奴は分厚い氷を通り抜けるように破壊して立ち去った。なんだったんだ、一体。