経験値ゼロだったからあることをやめるとうなぎ登りに経験値が上昇した
私は今日、やっと気付きました。
自分が経験値ゼロだと言うことを。
私はやりたくないことはやったことがありません。
やりたいことだけをやっていました。
犬を飼えば最初は可愛いので散歩や餌をあげたり、いろんなお世話をしました。
しかし、犬が大きくなるといろんなお世話をやりたくなくなりました。
だからもう、犬は飼いません。
私は宿題をやりたいなんて思ったこともありませんでした。
だからやったことはありません。
私は先生に指示されるのが嫌でした。
だから学校へ行くのをやめました。
私は人の話に話を合わせるのが嫌でした。
だから友達も必要ありません。
私はにんじんが嫌いでした。
だから口に入れたこともありません。
私は私が嫌いでした。
だから人前に出ることをやめました。
私は好きなことだけをやっていました。
だから私は幸せだと思っていました。
そんな私を見ていた“私には必要な人”が言いました。
「私がいなくなったら、あなたはどうなるんだろうね」
その一言で私は気付きました。
私には何もないということが。
幸せだと思っていた私のやりたいことだけをする世界は空っぽだったのです。
つまりは自分で考えもせず過ごしてきた私は経験値ゼロなのです。
私は焦りました。
まずは何をすればいいのか考えました。
そしてまずは学校へ行きました。
人の目が怖かったけどこれを我慢すれば何か残るのだと思って頑張りました。
黒板を消したり、ゴミ捨てに自分から進んで行ったり、みんなが嫌がる先生のお手伝いをしました。
するとクラスメイト達が話しかけてくれるようになりました。
次に私は宿題をするようになりました。
すると宿題をするのが楽しくなりました。
クラスメイト達と一緒に宿題をしたり、たまには宿題プリントに落書きしたり、楽しくて仕方ありませんでした。
私の落書きはみんなに評判でした。
次に私は人の話に合わせるようにしました。
でも、ちゃんと自分の意見も言います。
すると友達ができました。
優しくて思いやりのある可愛い女の子です。
私にはもったいないくらいです。
次に私はにんじんを食べました。
ずっと噛んでいると甘くなり、美味しかったです。
私はいつの間にか経験値がうなぎ登りに上がっていきました。
いろんなことをやってみた結果です。
すると“私には必要な人”が
「これで大丈夫だね」
と、笑顔で言いました。
“私には必要な人”の笑顔を初めて見た気がします。
私も嬉しくて笑顔になりました。
そして最後は
「わんっ」
犬を飼いました。
大きな大きな成犬です。
私は子犬ではなくて保健所にいた処分されそうになった犬をもらいました。
大きな大きな犬は散歩をするときすごく目立ちます。
なので必然的に私も目立ちます。
子供が集まって触ったり、犬の散歩をしている人と挨拶したり、それはそれは楽しいです。
毎日忘れず散歩をして、餌をあげて、一緒に遊びました。
毎日が楽しくて毎日、笑顔でした。
そんな毎日を過ごしていると、私に恋の季節がやってきました。
彼は私に
「大きな犬だね」
と、話しかけてくれました。
大きな大きな犬のおかげです。
毎日、散歩に行くのが楽しみで仕方ありませんでした。
彼は毎日のように私を待ってくれていました。
私も彼がいるのを楽しみに彼の元へ向かっていました。
雨の日は傘をさして、風の強い日は私を見つけると心配して大きな大きな犬と一緒に支えてくれて、暑い日はかき氷を持って、寒い日は暖かいココアを持って毎日、彼は私を待っていました。
私も雨の日は大きな大きな犬にカッパを着せて私もカッパを着て、風の強い日は大きな大きな犬に支えてもらいながら歩き、暑い日は大きな大きな犬と一緒に水分補給をしながら、寒い日は大きな大きな犬に寄り添いながら彼の元へ向かっていました。
彼と大きな大きな犬は仲良しになりました。
そして私も彼と仲良くなりました。
彼のことをもっと知りたくなりました。
彼も同じ思いでした。
そして私と彼は恋人になりました。
「あなたと出会えたのは大きな大きな犬のおかげなの」
私がそう言うと彼が
「違うよ。君がキラキラして楽しそうに毎日散歩してたからだよ」
と、言いました。
私はその言葉を聞いて気付きました。
私の経験値はいつの間にかもっともっと上がり、私は気付かない間に自分に自信を持っていたのだと。
そして私は、自分自身を好きになっていたのだと気付きました。
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