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なぜかどうしてか

「ファインド君、ジン君。悪いけど引き返してくれない?」

 申し訳なさそうに私は言った。



 固まった三人のうち、いち早く理解した最年長ファインド君は、

「え? どうして」

 何が何だかわけが分からない、そう言った目で見つめている。

 急に引き返してと言ったら、驚くのは当然だろう。

 だけど、そうしなければならない理由が出来た。

 なのでもう一度、

「お願い、返って」

 さっきより、強く私は言った。



「分かった……。そうする。だけどメイリはどうするんだ?」

 まだ、納得は出来ていないという顔をしているが、とりあえず引き返してくれるようだ。

そのことにホッとすると、ファインド君の問いに答えた。

「メイリは私といっしょに付いて来てもらう」

「それはなんで?」

「メイリの持っている情報が必要だから」

「情報って何?」

「ごめん。ファインド君。今は答えられないや。そのうち、きっといつか答えるから」

 ああ。もう、時間が。

 ファインド君とジン君の背中を押すと、

「ごめんね」

 と言い、部屋の外に出した。



 ガチャンと鳴らした扉の音に、メイリはビクッと驚きながら

「あの~ぉ、じょうほうっへなんですか」

 と聞いてきた。

「あー、えっと嘘」

 素直に私がそう、答えると、

「へっ! うそなんでふか。なんでそいなうそを……」

 メイリは眉を下がらせ、そう言った。

「ちゃんと説明したいけど、今はそれよりしなきゃいけないことがあるんだ」

「あっ」

 メイリを私の方へ引き寄せると、辺りは深い霧に包まれた。



 霧が発生して何分か経ったころ、ようやく辺りが見えてきた。

 ボロボロな木造の部屋、小さな明かり、散らばっている医療器具。

 第二診察室と似ているが、違う場所。

 そこまで見て私は、茶色の小瓶に入っていた紙の内容を思い出した。



 赤いインクを使ったのか、それとも誰かの血か。

 鉄臭いにおいから、人間の血だろう。

 赤い文字で書かれていた内容は、

 

  人体実験場へようこそ。

  あなたを至福の時間へご案内します。

  血と叫びの絶望と言う名の至福の時間へ。

 霧と共にお迎え致します。

  どうぞ楽しんできて下さい。

                      ディン・アクナー


 思わず、ゾッとした。

 ここで何があったのかと。

 そして謎の人物? それとも人間以外の何か、ディン・アクナー。

 おそらくディン・アクナーは狂っている。

 狂っていなければ、当然、人体実験を至福の時間とは言わない(当然だが)。

 もしかしたら、デイビット・ジャスティとディン・アクナーは関係あるあるかもしれない。

 そう思ったのだが、どうも当たりのようだ。



「ご招きいただき、ありがとうございます。ディン・アクナー様、デイビット・ジャスティ様」

 こわばる足を震え立たせ、精一杯挨拶をした。



 白い肌に鋭い牙。人の姿をしているが、違和感を感じる姿。

 黒髪赤眼の美青年……おそらくディン・アクナーであろう吸血鬼は優雅に微笑んだ。



 いきなりだが、ここで吸血鬼について説明しよう。

 吸血鬼は普段、闇の大陸に住んでいる。

 だが、ごくまれに人間の世界に遊びに来る吸血鬼がいる。

 そういう者たちは、食料……血を飲まなくては生き長らえることが出来ない。

 とういうわけで、過去に吸血鬼が人間を襲う事件が多発していた。

 吸血鬼は人間より、身体能力、魔力量共に多いのでそう簡単に捕まえることは出来なかった。

 今は制約を結び少ないが、秘密裏に人間を襲っている者も多い。

 基本的に吸血鬼はプライドが高く、自分が下になるのを嫌う。

 なので出会ったら、位の高い人に挨拶をするように優雅にそして丁寧に挨拶をするのが、ポイントだ。

 


「初めまして、ディン・アクナーです。早速ですがこちらのベットにお座り下さい」

 吸血鬼の説明を終えたところでディン・アクナーはそう言った。

 だが、もちろん私の答えはNOだ。

 なんか嫌な予感がするし。絶対、ヤバいこと起きるに決まっている。

 なので、

「お断りいたします」

 出来るだけ丁寧に、を心がけた言葉で言った。

「そうですか……。では、力ずくでやるしかありませんね。デイビットやれ」

 優雅な微笑みから一転、冷酷で鬼のような顔になった。



 う~ん。死ぬかな~。いや、死なないな。なんかそんな感じするし。よし、じゃあ死なないな。

 そうお思っている間に、デイビット・ジャスティは近づいてくる。

 メイリが強くローブを引っ張って、

「おねえだぁんおねえだぁん、しんだうよ……」

と言った。

 だが私には、絶対に死なないという、自信がある。

 なので、デイビット・ジャスティが大きな斧を振り上げても、動かなかった。



 バキンッと鈍い音が響いた。

 デイビット・ジャスティの方を見ると、焦っているように見える。

 私とメイリの周りには、薄いベールのようなものが囲っていた。

 

 

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