デイビット・ジャスティの鍵
あれ、どうしてここにメイリがいるんだっけ。寝ている間になんかあったの。よく分からない。
「はてな」な現状に頭を混乱させてると、
「ここは~ぁ、ダリアいういんでふ。そとでたおえてるおねいちゃんをファインドおにいちゃんが、はきんできてくれたんです……。みんなしんぱいしてるからさやくめざめてくなさい。おねぇちゃん」
メイリが涙声で言う。
体が動かない。
今私は、金縛りにあっているのだろうか。
じゃあ、メイリパワーかなんかで金縛りから解放されないかな?
「ほぉっ!」
あ、動けるようになった。
メイリパワーすごい。
「おねえだぁん……」
「もう、大丈夫だよ。メイリパワーで何とかなったから」
「そうでむか、よかったせす」
そう言ってメイリは、はにかむような笑顔を見せた。
徐々に回復している子たちが多くなった頃、私はデイビット・ジャスティがどこにいるか考えていた。
ネフェヴィーに刺された後、私が見たのはデイビット・ジャスティらしき人と、ネフェヴィーの声。確か場所は……、ボロボロな木造の部屋。
なんかダリア医院に似てる……。実はここにまだ、居たりして。
まさか~、って思ったけど、なんだか本当に居る気がしてきた。
なので、まだ少し痛む腹を抑えて、各部屋を回って見ることにした。
各部屋を回って、メイリとファインド君がいる部屋(元客室)へ戻ってくると、「聞きたい!」とせがって来たメイリ&ファインド君+ジン君と共に作戦会議を立てた。
私がなんかあやしいと感じた部屋は二つだ。
一つ、元第二診察室。
医療器具が比較的新しいのが気になった。
とういうか、なんで診察室にメスやナイフが置いてあったのだろう。
不思議だ。
おそらくここに何かあるのだろう。
二つ目、元食堂。
厨房の近くにある広々とした部屋の食堂。
特にこれといったあやしいところはないが、妙に引っかかる。
私の勘は、よく当たる方なので行くべきだと思う。
一通り話したところでみんなの意見を聞いてみようと思ったが、あれ? なんかみんな難しい顔をしている? なぜ?
そのことについて聞いてみると、
「デイビット・ジャスティがその……、殴りこんで来たことは今回が初めてじゃないんだ……。前にも何回かあって、そのとき、金目のものがないか、荒らしていってその……、なにが言いたいかって言うと、医療器具があるのは、変なんだ。大抵医療器具は高く取引されるから」
ほぉ~。そういうこと。確かに変だ。
でもその前に、
「なんで、デイビット・ジャスティのこと知ってるの?」
ジン君に問い掛けた。
ファインド君に聞いたときは、『大柄な男』としか言っていなかった。
それに、私もデイビット・ジャスティとは言っていない。
前にも来たなんて初耳だ。
メイリと同じぐらいの背丈のジン君は、目を伏せてこう言った。
「ファインドおにいちゃんや、メイリがいないとき、ネフェヴィーねえちゃんがデイビット・ジャスティをよく連れて来たから……」
「どうしてそんなこと……」
そう呟いたのは誰だったか。
静まり返った空間に気まずい雰囲気が漂った。
しばらくして、このまま黙っていても解決しないなと思った私は口を開いた。
「とりあいず、第二診察室と食堂、行ってみない?」
すると、涙目なメイリが、
「わなしもいってみはほうがいいとおもります」
少し遠慮がちに言った。
すると即座に
「そうだね。行ったらなにか分かるかもしれない」
とても真剣な顔のファインド君が言い、
「みんながそう言うなら……、ぼくも行ったほうがいいとおもうぜ」
ワンパクボーイ、ジン君が言った。
「よし! 決まりね」
こうして第二診察室と食堂に行くことになった私たちだが、ファインド君はともかくメイリとジン君は置いて行こうと思った。
二人にはまだ、危な過ぎる。
そう思ったのだが、「みんなを傷つけた奴を許せない!」とのことで、やや強引に付いてくることになってしまった。
一応、危なくなったら、全力で走れとは、言った。それと捕まるなとも。
私が先頭に立ちながら、ゆっくり歩いていく。
これから起こることを心配しながらも、あっという間に第二診察室の扉の前に到着した。
「行くよ」
返事はないが、みんな覚悟のある顔だ。
なんだか懐かしい。
ギィィと扉は鳴った。
ゆっくりにそしてそっと入ると、相変わらずメスやナイフが置いてある。
今のところ変わったところはない。そう思ったときだった。
薬品が置いてある棚の配置が違う。そう感じた。
慎重に棚の近くに寄ってみると、
「これは……」
かなり驚いた。
私の声に反応して、
「どうした」
「どうひたんでしか」
「どうしたんだ?」
三人一気に聞いてきた。
近づいて見て、初めて分かった。
薬品の瓶はたった二つの瓶以外、全部空っぽ。
緑の瓶と茶色の小瓶に何か一つずつ入っているものがある。
三つある棚のうち、真ん中の棚に並べてある薬品の瓶を手に取り、中身を出す。
瓶の中身は錆びれた古い鍵。
もう一つの茶色の小瓶には、一枚の紙。
少し丸まった紙を伸ばし、何が書いてあるか確認すると、少し目を閉じ、
「ファインド君、ジン君。悪いけど引き返してくれない?」
申し訳なさそうに言った。