6話
「なら、早く答えを出せよ。言っとくけど、断るなら…もう二度とお前を助けないから。お前が部長に何されたって俺には関係ないしな」
「や、だ…やだ…そんな酷い事言わないでよ…。南野楓の言う通りにするから…だから私のそばに居てよ…私を助けてっ…」
あの部長が私を狙っている…
その事実と南野楓の揺さぶるような冷たい言葉についに耐えられなくなった。
それに私にとって南野楓は好きな人。彼は私の体が目的なだけで他には何の感情も持っていないと思う。分かっていたけれど拒めなかった。
それからはもう急展開の連続。直ぐ様南野楓に手を引っ張られ、連れて行かれたのは高級なマンションの一室。
多分南野楓の部屋なんだろうけど…外観通り、中も広くてベッドも大きい。
そのベッドに押し倒された私は彼からキスの嵐を受けている。
強引な展開でこんな事になったのに、嫌悪感は一切無い。
やっぱり私はこの人が好きなんだ…
いっぱい酷い事を言う最低な男なのに…
それでもどうしてまだこんなに好きなの…?
それに南野楓…貴方は何でこんな事をするの…?
どれだけ自分で考えてみても、貴方の気持ちだけは分からないよっ…
「…お前、俺がこんな事する理由分かってる?」
「っ…どうせ…私なんて性欲処理の道具なんでしょ…?守ってくれる代わりに、貴方に体を捧げろって意味なんでしょ…?」
「……頭悪いな」
「なっ…」
「ああ、お前は俺の奴隷だ。俺がしたい時は有無を言わず抱かせろ」
「ふ…ひっく…ぅ…」
バッサリと切り捨てるように言葉をぶつけられて、悔しいけど涙が零れ落ちてきた。
やっぱり…私は彼の性欲処理の相手でしかないんだ…
…今分かった。プライベートでは大人しい私だから…この人は私を選んだんだ。社内で言いふらす心配が無いから。
しかも奴隷なんて…あんまりだ…
好きな気持ちを逆手に取って、体の関係を迫るような最低最悪な男を好きになった私もどうかしてる…
「いっ…たっ…」
「まさか…初めてか?」
「っ……」
「答えな」
「っ、そうだよ!こんなの全部初めて!だからもっと優しくしなさいよ!痛いのはやだっ」
「痛いのは嫌?お前はM気質だと思ってたが違うのか」
「さ、最低!そんなの知らないっ…」
今まで私は彼にどう思われていたんだろう。
もしかして…経験豊富だと思われてた…?
好きな人にそんな事思われてたなんて最悪だ…
そして段々と意識が遠のいていく…
「桜…俺の可愛い桜…お前はもう俺だけのものだ。
桜……っ…て…る…」
ねぇ…今何て言ったの…?
最後の言葉…何て言ったの…?
そう聞きたいのに…
私の意識はそこで途切れた。